ウジトモコ「簡単だけど、すごく良くなる77のルール デザイン力の基本」
デザインとは、ホームパーティだ。一読し終えた時にそんなことが浮かんだ。
まず何のパーティをするか。誰を呼ぶか。日にちは。出す料理は。飲み物は。何をするか。来るメンバーを考えて配慮しなければいけないことはあるか。お知らせをどうするか。
ポスターやチラシを作ろうとして、いきなり手を動かし始めるのは、ホームパーティをすることに決めて、いきなり料理を作り始めるのと同じことになるのだ。もちろん家族だけのパーティならそれもありだろうけれど。誰かを招くなら、順序だててものごとを進めなければいけない。この料理なら作れるからホームパーティを成功させられるというわけではないのだ。
というところまで理解して、いざ、今仕事で必要になるチラシを作ろうとした。一応、仕事上で、背景や課題は整理されているから、2章のデザインの方向性を決める段階からスタートすればいいかなと思った。ウジ氏は、「これは違うよ」をまず決めなければいけない、と言っている。まず「これは違うよ」を決めてから、「こうだったらいいな」を考える。それがポスターやチラシになるというわけだ。でも、既に最初からつまづいてしまった。「これは違うよ」って何だろう。
そうだ、デザイン力は読んでその通りにすれば、身につくものではない。考えた方の手順や、キャッチコピーの選び方、フォント、色など、料理のレシピやテーブルコーディネート的なことも書かれているけれど、事例として挙げられているのをそのままパクればうまいこというわけではない。自分が伝えたいことは何か、誰に伝えたいのか、どんな風に理解されればよいのかをしっかりと考えて、それに向けて、一つ一つを選んでいかなければいけないのだ。
ウジ氏は、デザインとは「プロジェクトの成功のカギを握る、創造のための知識・教養」と説明している。かっこよければ、目立てば伝わるというわけではない。それを見た人が共感し、心が動き、次のアクションを起こして初めて、デザインが効果があったことになるのだ。見る人の気持ちになって、丁寧に手段を選び取らなければいけない。その道のりは簡単ではないだろうけれど、もう一度、課題を整理するところから始めてみなければならない。最初はうまくいかなくても、この手順で、デザインを作る経験を積み重ねていこう。デザインの教養的な部分は、一朝一夕には身につかないだろうけれど、フォントの選び方や色など、知識的な部分は書かれている通りに試してみればよいだろうから、きっと「すごく良くなる」はずだ! そしてうまくいったデザインは「資産」になるとも言っている。同じような方向を目指したい時は、それをアレンジして使うこともできるというわけだ。
ホームパーティで、この前、このやり方でうまくいったら、また違うお客さんを呼ぶ時に、こんな風におもてなししよう、というのと同じかもしれない。