村田智明「バグトリデザイン 事例で学ぶ『行為のデザイン』思考」
初めて手にする道具なのに、自然にやり方が分かって、スムーズに使いこなせることがある。あれ、っと思った瞬間に何か目印なり、表示なりがあり、目的を達成できる。多分、ものすごくユーザーに寄り添って考えられているのだろう。逆に説明書を読んでもよく分からないようなものもある。何度も体験しても、どこか手順を間違えてしまい、うまくいかない。そういうのをバグという。
それは、商品だけにとどまらなくて、サービスや制度においても同じなのだろう。利用したい人が、やり方がよく分からないからもういいや、と購入をやめてしまったり、問い合わせてその対応に時間がかかってしまうのは、サービス提供者にとって損失である。そういう課題はよく認識しておいて、何か解決策を見出さなければいけない。制度もせっかく作っても利用されなければ意味がないから、利用されるようにするにはどうしたらよいか、ということをよく考えなければいけない。
さらに、「啓発」のように、届けたい人に届きにくいものは、より工夫を凝らさなければいけない。「健康のための料理教室」をやろうとしても、多分集まるのは、比較的健康的な食事に気を付けている人であって、生活習慣病予備軍みたいな人が参加するということはあまり想定しにくい。予備軍たちの行動や思考を考えて、どこから興味を持ってもらえるかを考えなければいけないと思う。
この本の前半は「バグ」についての様々な例示があった。著者はバグを「非効率のバグ」や「誤認のバグ」など6つに分類している。なんとなく「バグ」をとることが、スムーズに使えて消費者に受け入れられる商品となるのだということを理解できたところで、ワークショップで解決策を導き出した事例を紹介。そしてどんな風にワークショップを行えばいいのだろうと考えたところで、ワークショップのやり方が提示される。親切なことに、ワークショップで使える表やツールなどのダウンロードサイトも教えてくれている。これをダウンロードして本に書かれたやり方を参考にしながら、ワークショップをやってみると、色々と発見があり、でも最後は、著者の会社のワークショップを受けてみたくなるのかもしれない。よくデザインされてる本ということになりそう。