コンサートの演目解説
Chère Musique
イントロダクション
最近はプロの演奏家は、演目解説をプログラムに書くかたがずいぶん増えてきました。
書かないかたももちろんたくさんいらっしゃいますが、書いてあると始まる前に客席でそれを読み、とても楽しみな気持ちになって良いことだなと思っています。
文章を書くのが苦手なパフォーマーは無理してまで書いたりはしないとは思いますが、書いてあると私はとっても楽しくなります。
ラフェットの場合
私の主催する二年に一度の秋の演奏会“ラフェット”では、たくさんの演目が演じられます。
どの曲もとても心のこもったもの、選曲に意味があるものなので、演目解説のページをプログラムの中に作っています。
ですが、演目数がとても多い長時間の演奏会なので、一曲につき三行くらいです。
あまり解説のページばかり多いと、読む気になれなかったりするといけないので。
その三行の中に書くことは、まず誰が出演するのか。
曲目と作曲者と演奏者だけが番号付きで書いてあるページが始めにあり、ソロ演目であればそこを見れば誰が演奏するかというのはわかります。
ですがアンサンブル演奏はそこには全員分の名前が書くことはできません。
それに私はアンサンブルにはそのグループに名前を付けるということが好きなのです。
ほとんど趣味と言ってもいいでしょう。
そのグループ名を書いてしまうので、そのグループには誰が出るのかということが、そのページだけだと判りません。
ですから、グループメンバーが誰なのかということをその演目解説の一行目に書き、それだけでも一行の半分以上使います。
そして、その生徒さんがどんなコンセプトで、どんな気持ちでその曲を演奏するのか。
なぜその曲を選んだのか。
その作曲家がどういう作曲家で、それはどんな作品で、聴きどころはどんなところなのか。
どんなふうにその曲を聴いてほしいなと、演奏する側は思っているのか。
これらを二行半くらいにまとめるので、とっても大変です。
聴く前に読む
この演目解説というものは、できれば演奏を聴く前に読むと良いのではないかと思っています。
どんな気持ちで、どんなところを聴けば良いのかが分かっていると、何も前情報なくただ聴くよりも楽しく聴けるはずです。
ラフェットの場合は、生徒さんはもちろん自分のところにどんなことを先生が書いたのかは知っています。
事前にこういうことを書きますからねと言っておいたり、または生徒さんご自身と相談してその文章を作ったりすることもあります。
ですが自分の出ない演目のところは知らないわけですから、それを読むことはお仲間の生徒さんたちを応援する意味もあります。
そしてご自分がお友達やご家族をお客様としてお呼びした時には、その方たちに「これとこれは私が出る演目だから読んでおいてね」と、お伝えしておくことをお勧めしています。
音楽にとっても興味のあるお客様でしたら、ご自分が出演しなくても、ご家族やお友達が出演する曲だけではなく他の演目も興味を持って読んでくださる方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方には始まる前に、またはその曲を聴く前に読んでおいた方が絶対楽しいと思う、とひと言お声がけをしてもいいかもしれません。
研究者は書き易い
私がお客さんとしてコンサートに行く時には、必ずプログラムはすべて目を通します。
何か事情があってギリギリの駆け込みになったとき以外は、なるべく早めに行ってしっかりと読むようにしています。
私が応援しているピアニストで、音楽を研究する立場でもあるかた。
ピアノの腕前は国際的なコンクールで入るくらい素晴らしいのですが、その書いてある文章の深さ、文章のうまさがとても素晴らしく、事前に読んでおくと本当に楽しめる文章を書いてくださいます。
ですからいつもしっかり読みますし、それを読んでから聴いたことによって生まれた感想をご本人に伝えて、楽しいディスカッションの交流を持てたりしています。
プロのコンサートは一曲が長めなことは多いですが、曲数がそんなに膨大ではありません。
ですから読むのもまったく大変ではなく、一曲について深い文章を書いてくださる場合もあります。
どちらかというと私はそのような、自分の演奏する作品、自分の演奏自体について、人を感動させるような文章を書いたり、喋れたりする演奏家が好みです。
もちろん文章などはあまり得意ではなくて、音で勝負!という音楽家もたくさんいらして、そういう方で私がファンである方ももちろんいらっしゃいますが。
エンディング
演目解説文というのは、あると本当に楽しいなと思えます。
ただ楽しいだけではなくて、聴き方が変わるはずです。
難しいことを書く人もいますが、そういう文章はそれを読んで楽しいなと思ったり、全部理解した上で聴いたりする方は、お客様の全員ではないかもしれません。
ラフェットは発表会的なもので生徒さんが演奏するわけですから、難しいことは私は書きません。
音楽にまったく無縁の方が読んでも「ふーん」と思ってくださるようなことを書くように心がけています。
Musique, Elle a des ailes.