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アートカフェフレンズへの感謝


Chère Musique


私の演奏のホームグラウンドだった恵比寿の“アートカフェフレンズ”が、先日2024年3月31日でその幕を下ろしました。



素晴らしいお店でした。
ここでは、私と相方ピアニスト村西則美さんの理想、「音楽を聴く」ということの基本の在り方を叶えることができていました。

それは、「くつろいで、美味しいものを食べながら飲みながら、大好きな友だちと語らいながら」、上質の空間で音楽を聴ける。

こういうお店は、日本にはそんなに多くありません。
ジャズやロックやポップス向けのライブハウスはたくさんあります。

でも、落ち着いた大人の雰囲気で、綺麗で上質感のある内装で、空間の音の響き方とピアノ自体が質が高いのでクラシック音楽ともとても相性が良く、レストランとしてもかなり上ランク、有名な画家の絵画の本物が壁一面に飾られている、これだけの条件を兼ね備えたお店は、とても少ないと思います。



オーナーの鈴木正勝さんは、ホリプロの敏腕プロデューサーだった方です。
多くの著名なミュージシャンを売り出してこられました。
退職後に、このアートカフェフレンズを開店しました。
オープン記念コンサートは、その活躍に正勝さんが一役も二役もかった森昌子さんでした。
他にも日本人では知らない人のいないような大物が、たくさん正勝さんのお世話になってきたそうです。
ご自身ではあまり多くを語りませんが、大人物なのです。

私が歌わせていただくようになった頃は、カウンターにどっしり座ってお客様にドリンクを作り、私たち演奏者にはいつも暖かくも厳しい導きをくださる存在。



オーナーとお店には、どんなに感謝してもしきれません。

私のどの分野の師匠も「歌のコンサートは声楽家出身の人がやるものだ」という方々で、私は音楽講師としては珍しく、何年かに一回ほんとうにたまにしかコンサートはしてきませんでした。

コロナで世界が大きく変わった時に私の中でも何か大きく変化するものがあり、「歌いたいなら歌う!」「後悔するのはイヤ!」と、エンジンがかかりました。
そのタイミングで、以前から仲良くさせていただいていた職場の先輩の則美さんと、今私たちがすべきことはとにかく皆さんに音楽を届け続けることだと思いが一致しました。
則美さんはそれまでのように伴奏ばかりではなく自分のソロも、私は自分の表現力を信じてたくさんのジャンルの歌を。

そして、そんな私たちにこの上ない上質な会場が用意されていたのです。
則美さんが長年アートカフェフレンズで弾き続けて来られた、その実績によるものでした。

「音大声楽科を出ました、コンクールに入賞しました、テレビに出ています、そんな歌い手しかコンサートをしてはいけない、などということは絶対にない。
何かを持っている音楽家なら、どんどん歌うべきだ。
いつでも使いなさい。」




これからもずっと、私の一生の故郷です。

閉店間際にお店にお別れをしに行って、オーナーとたくさん語らい、蚤の市と称して売られていたオーナーのコレクションのカップを(ゼロがひとつ少ない価格で)記念に買いました。

たくさんの名画とアンティーク食器のほとんどは、オーナーのご自宅へ、常連のお客様やお忍びで来られるアーティストさんたちの元へ。



まだまだ私たちの中でアートカフェフレンズ・ロスは続きそうです。
でも、悲しんでばかりもいられないし、アートカフェフレンズからもらったたくさんの形のない財産を糧にして、ここで学んだことを活かした活動をしなければ。
新しい会場をいくつか検討しています。


これからも“音の華”は続きます。
また近いうちに開催されるはずのコンサート、曲選びが始まっています。



Musique, Elle a des ailes.

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