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連弾にしかない工程
Chère Musique
イントロダクション
主宰する音楽アトリエの秋の演奏会では、連弾で出演する生徒さんの演目が二組あります。
一般的には連弾の方が、ピアノが一台あればできるわけですから、身近なものです。
環境という意味で機会が多い。
ですが、連弾には実はほかの演奏形態にはない苦労があります。
この連弾にしかない苦労ということが、その演奏形態をわざわざやる楽しみの大きな一つです。
一緒になると初めは弾けない
どんな苦労かというと、ソロピアノや二台ピアノやいろいろなアンサンブル演奏をする時に、 演奏を本番に向けて作り上げていく段階の工程が多いのです。
普通は、とても大雑把にいうと、譜読み、練習、仕上げという三段階。
その「練習」の段階がいくつかに分かれます。
まずそれぞれが自分のパートをレッスンを受けて練習します。
その後に、二人で一緒に演奏する練習をします。
この時に、自分だけの時は自分のパートは完全に弾けていたはずが、一緒になるとまず一旦最初は弾けなくなるものなのです。
なぜかというと、 体がくっついたり押し合ったり重なり合ったり、指が重なりあったり譲り合ったり、いろいろと普段にはないことが起こるからです。
例えば、レガートで弾いてた部分で、相方の指がその同じ鍵盤をすぐ次の瞬間に弾かなければならない作りになっていたら、短く切って退かなければならない。
ひとりで弾いていた時には、優雅なレガートでしっかり表現して弾けていたのに、と言ったようなことが起こるのです。
また、手や腕が重なり合わなければならないことに気がついて、その腕の高さを互いに調節するという作業もあります。
重なりのドキドキ
次にもう一つ多い工程が、その「重なり練習」で二人で体をくっつけ合って演奏してる時には、ほかの演奏形態には絶対にない独特のドキドキがあるので、それを乗り越えるというものです。
ソロでもアンサンブルでも二台ピアノでも、物理的な空間は自分ひとりで、音が一緒になってアンサンブルになります。
人とぶつかったり重なったりということは連弾にしかありません。
とてもドキドキして他の形態では絶対に味わえない変な緊張感があり、それを乗り越えなければいけない工程が一つ加わるわけです。
そういう普通ないような状態に置かれても自分の100パーセントの演奏ができる、というふうに持っていくのに、少し時間が必要なのですね。
重なり練習をしてみて初めて「こんなふうに自分の演奏を変えていかないと二人の演奏にならないのだ」ということを発見して、自分を変えてゆく段階と、次のその独特のドキドキ感を乗り越える段階。
この二つ増えた行程の後に、普通の演奏形態と同じように仕上げをしてゆきます。
オーケストレーション
私も何人かの方と連弾をしたことがたくさんあるので、そのドキドキの気持ちはとてもわかります。
音楽の先生ですらそうだし、プロのピアニストでもソロで弾く時とは全然違うというふうに思っているはずです。
ですが、この連弾という形態では、ソロよりも二台ピアノよりもずっとオーケストレーションのおもしろさが増えているはずです。
ピアノ音楽のオーケストレーションについてを書いた記事が、ご好評いただいていて嬉しいです。
ありがとうございます。
ピアノ音楽をオーケストレーションするというのはとても大切なことで、楽しいこと。
その楽しみがと喜びが、連弾の音楽には一番多いはずなのです。
エンディング
この今回の二組は、今の段階での進捗状況から「こんなスケジュールじゃなかったはずなんだけど」「今頃もう少し先の方に進んで来れているはずだったのに」「予定と違うぞ」と感じているかなというふうに、レッスンをしていて思います。
ですが、楽しいなと思ってほしいです。
楽しいと思えるように私がレッスンで引っ張っていってあげなければならないのですよね。
Musique, Elle a des ailes.