ジュブナイル小説に見る明智小五郎と金田一耕助/好敵手の不在は大きい
江戸川乱歩のジュブナイル小説、少年探偵団シリーズは根強い人気を持っています。
日本三代探偵は、江戸川乱歩の「明智小五郎」、横溝正史の「金田一耕助」、高木彬光の「神津恭介」だとされています。
大人向けの本格ミステリーとジュブナイルの両方で活躍する明智小五郎は、異色の存在かもしれません。
神津恭介は圧倒的美青年という設定。どれだけ美化してもよいわけなので、アートワークを見るのも楽しいです。
金田一耕助のジュブナイル小説
明智小五郎モノの影に隠れがちですが、実は金田一耕助を探偵に据えたジュブナイル小説も発表されているのです。
こちらのnoteで詳しく紹介されています。
明智探偵の助手・小林少年に相当するのが、立花滋少年。
角川文庫の版では、一般向けの金田一耕助シリーズと共通したデザインになっているので、ジュブナイルものだと気づかれにくいかもしれません。
『大迷宮』事件で大活躍した結果、学校で大人気となり、立花少年を慕った冒険好きの少年たちが少年探偵団を結成する…という点も一緒。
しかし、世間的には“少年探偵団”といえば江戸川乱歩であり、人気と知名度の圧倒的な格差は否めません。
個人的には、少年少女向け小説としてはギリギリの陰惨さを見せる金田一耕助のジュブナイル小説も好きなのですが、それは大人のエゴでしょうか。
ワクワクさせる仕掛けについては、小林少年の少年探偵団の方が上手なのかなと思います。
物語を盛り上げる仕掛け
やはり、探偵七つ道具はロマンです。
現代の技術水準から考えると、“絹紐の縄梯子”や“伝書鳩のピッポちゃん”など、使い所の限定されるアイテムもありますが、ライバルである怪人二十面相には、全ての知恵と技術と勇気を動員しなければ打ち勝てません。
ジュブナイル小説探偵としての明智にあって金田一にない最大のものは、シリーズを通しての魅力的な悪役なのかと思います。
金田一が相手にする怪獣男爵や金色の魔術師も個性的な怪人ではあるのですが、
という黄金パターンのカタルシスは圧倒的。
もっとも、同じ展開が繰り返され続けるのにも難があって、後期の作品では怪人二十面相は少年探偵団に都合の良い舞台装置、子供たちを楽しませるためのボランティアに近いような存在になってしまっていたように思います。
作品の人気を高めるのもシリーズを通した好敵手の存在であり、作品をつまらなくするのもそのマンネリズムだと考えると、難しい問題です。
現代のエンターテイメントとしては金田一耕助の孫が圧倒的に人気なので、じっちゃん本人がジュブナイル小説で復権するのは難易度が高いかもしれません。