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オチを説明するという行為/儒烏風亭らでんのホロぐらデビューを見る

伝統と革新! 儒烏風亭らでん


ホロライブプロダクション所属のバーチャルYouTuberである儒烏風亭らでんさん。

文化や芸能に造詣が深く、特に美術に関して博識! 最近では、“まいたけダンス”がバズったことでも有名です。
バーチャルアイドルでありながら、文化人としての才能をいかんなく発揮されており、こっそり応援しています。

らでんさんは落語にも明るくて、自称“前座見習い”
春風亭昇也師匠がお好きということで、苗字にもそのリスペクトがあらわれているのでしょうか。

“前座見習い”は師匠に入門を許可されて、鞄持ちや雑用をして修行をしている段階。
前座に昇進すると楽屋入りをして舞台に立つことができますが、前座見習いは“落語家の仕事を覚える”ことが仕事であるため、高座で落語を語ることはできません。

それだけはちょっと残念…。
らでんさんもいつか、前座から真打ちへと昇進するのかな?楽しみです。

祝 ホロぐらデビュー


らでんさんの所属するReGLOSSの3Dライブが9月に開催され、ついに3Dデビュー!
続けて、ホロライブ所属タレントが出演するアニメ「ホロのグラフィティ」にも登場しました。


全体的にシュール。
破天荒さを演出したいらでんさんが、先輩のアドバイスを受けながら改名を考える…というストーリー。パブロ・ピカソ+寿限無の合わせ技で、長い名前が飛び交います。

これを飲んで破天荒になろう! と憧れのアキ・ローゼンタール先輩にお酒を勧められますが、理性を見せて踏み止まる。何故なら、

「また夢になるといけねえ」


芝浜のサゲでオチになるパターンです。
本当に夢オチでしたが

何故「また夢になると」いけないのかというと…

と語りたくなるのが、今回の記事のジレンマなのです。

落語のサゲと面白さ

人気の若手噺家さんもたくさんいらっしゃいますが、落語は現代では比較的マイナーな芸能。

落語は「噺」を演じて、「サゲ」でオチをつける話芸です。
伝統的な古典落語の場合、落語ファンはストーリーからオチまですべて知っていて、この落語家さんはどんな風に演じるんだろう? という楽しみ方をします。

なので、落語ファンからすれば、
らでんさんのホロぐらが芝浜オチだった!
というだけですでに面白いのですが、これはあくまでストーリーを知っていれば、の話。
知らない人のために、何が面白いのか説明したくなるのですが…。

オチを説明するという行為


ギャグやシャレがどうして面白いのか解説するのは基本的に禁忌でしょう。
芝浜が古典落語だからって、解説するのは野暮なのでは?

でもお約束の面白さを共有しないと、面白さも伝わらない。落語家さんによって随時アップデートされているとは言え、100年前からの話芸・演目ですから。

そもそも芝浜は人情話で、"うまいこと洒落たね!”というサゲ。分かりやすい大オチがラストに来る寿限無のようなストーリーでもないので、オチを説明する難易度は結構高いのでは…?

また夢になるといけねぇ


芝浜を辞書で調べると、

なまけ者の魚屋が、芝浜で大金入りの革財布を拾うが、女房はそれをこっそり役所に届け、酔って夢でも見たのだろうと言う。魚屋は改心して働き者となり、後年真相を知る。

デジタル大辞泉より


せっかく心を入れ替えたのに、また酒を飲んで眠りこけたら、今の幸せも夢になってしまうかもしれない…。
そんなのやめとこう、これも夢オチになったらいけないから。
という結末なのですね。

でも、この説明を読んでも全く面白くない、というのが答えです。
落語家が演じるから噺は面白いのであり、エッセンスとしてらでんさんが取り入れるから、芝浜のオチが利いてくるのです。
筋を知っているだけでは完結しないのが、演芸の魅力ですね。

解説している野暮天がいたということは忘れて、芝浜のエッセンスだけ頭の片隅に残して、作品を見ていただくのが一番だと思います。

語りたがりなオタクのジレンマでした。

個人的には、らでんさんがこどもの口調を真似すると、初天神風になるのが好きです。

新しい本が読めたらうれしいです。