封印
封印というタイトルで文章を書こうと思っていたのに、肝心の封印したものがなんだったのか忘れている。下書きはタイトルだけで本文はない。
書いていたら思い出せるかな。
実家や親にまつわることだったのは覚えているのに。
8月に3年ぶりに帰省して、年老いた両親と実家近くに住んで親の世話をしている、自身も障がいを抱える次兄に会った。
家の中はほんとにすごいことになっていて、介護度はかなり高そうだが本人が嫌がるから介護サービスを利用していない母を中心に、色々改善したらもっと快適に暮らせるだろうに…と言いたいことは山ほどあったが、相変わらず何も言えずできずに終わったのだった。
なぜあんなに不衛生な状態で暮らしているのだろう?ホ・オポノポノでは原因はすべて自分の中にあるっていう……と私の中を見ていったら、自分の生い立ちに恨みがあるから両親や兄は幸せになってはいけないのだという黒い感情が見えた。私を不幸にしたのだから関わった人は当然の報いだと思う自分。一種の呪いのようなものだ。
そしてその呪いを他者にかけ続ける限り、私自身が自由になれないし幸せにもなれないのだということに気づいた。ただ自分を苦しめてるのと同じことだと。
だからもう過去の感情を手放して次に進もうと思った。
過去は変えられないから、ほんとうはどう生きたかったのかに焦点を当てることに決めた。いまの私でできないと決めつけることはないのだから。
劣悪な環境下にいる親たちを助けてあげられない自分にイラ立ちと無力さを感じるが、人を救えるのはその人自身だから私と息子の幸福を追求していこうと思った。もう進むスピードも歩む道も何もかもちがうのだ。
あくまでも外から見たらこう見えるというだけで、本人たちは昔からの生活を変わらずしているだけだったりする。そこには幸も不幸もない。
いったん自分の真っ黒い感情に気づいたら、不思議とその後はかつて親からしてもらったいいことが思い出されるようになった。
まだ元気だった二人が冬になるとせっせと雪かきをしていたことや、毎日のゴミ出しのときの真剣な様子や、母が庭のお花をよく生けていたことなど……
なんだ、悪いことばかりではなかったと気づいたら足どりは軽くなった。
封印がなんだったのかまだわからないけど、当初書きたかったことからはズレてない気がする。
きっと怒りとか悲しみの感情を封印していたと書きたかったんだと思う。それらが解かれたら、感謝や喜びの感情も少し動き出した。あまのじゃくな私にもまだ素直さが残っていたのだ。