【本の紹介】『オカシナ記念病院』(久坂部羊著)
高齢者医療系が続きます。
今回は、久坂部 羊氏の小説。
「オカシナ」て、笑かしてんのか🤣
漢字で書くと「岡品」です。
昔、通勤途中に「岡歯科」という歯医者さんがあって、
「オカシカ て笑かしてんのか」とひとりで吹き出しながら歩いていたのを思い出します。(ちょっと気持ち悪いですね)
さて、久坂部 羊氏の著作、これまでに2作ご紹介しました。
どちらもわかりやすくて考えさせられる著書でした。
今回は初めて読む小説です。
あらすじ
研修医の新見一良は、離島の医療を学ぼうと、意気込んで「岡品記念病院」にやってきます。
ところが「岡品記念病院」では、医師も看護師もどこかやる気がないように見えます。
薬の処方は患者の言いなり、患者が求めなければ重症でも治療をしません。
反発心を抱いた一良は、在宅医療やがん検診、認知症外来など積極的な医療を取り入れようとしますが、その過程で様々な問題が浮き彫りになっていきます。
感想
「そうか、そう考えればいいのか」というのが私の一番の感想でした。
「望ましい医療とは、医者が経営のことを考えず、純粋に医学的な判断で行う医療なのか」ということについて、岡品病院の院長が、新見に語る部分です。
新見は「つまり、患者の我がままに従えということですか」と反論します。
岡品院長は、次のように言います。
私は薬も検査も入院も好きです。
いや、好きではありませんが、
薬を飲んで良くなるなら飲みたいですし、
検査で病気が早期発見できるなら、するのが当たり前だと思っていますし、
入院は、…はっきりいって好きです。(これはちょっと変かも…)
それに比べて私の母は、薬も検査も入院も大嫌いです。
病院自体嫌いです。(お見舞いも嫌がるぐらい)
私は母が「痛い」とか「しんどい」とか訴えると、
「病院で検査してもらわなアカン」と詰め寄ります。
それが当たり前だと思っているからです。
けれども岡品院長なら「本人が嫌なことはする必要ない」というでしょう。
うちの母のような人には、「大丈夫ですよ」の一言さえあれば健康寿命が伸びるのかもしれません。もし病変があったとしても治ってしまうかもしれません。
「検診」については、こんなやりとりもあります。
確かに。
自分が後悔しないのならば、どんな医療を受けても良いし、受けなくても良い。
医療も含めて、「自分はどう生きたいのか、どう死にたいのか」をはっきりさせて、できれば周りの人にも伝えておけたら幸せだなぁと思いました。