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伝えたいことを今、伝えよう
あなたは、理不尽な恐怖に襲われたことがあるだろうか。
今日、久しぶりに強烈なパニック発作が起こった。
自分では制御できないレベルのものだったので、母さんに電話をした。
2〜3時間くらいいろいろなことを話して、落ち着くことができた。
僕におけるパニック発作とは、ありもしないことに対して不安になったり恐怖を感じる状態。
小学生の頃、習い事の林間学校で知らない森に泊まった。親元を離れ、習い事の先生と生徒のみでの宿泊だ。
夜眠る時、巨大なテントを敷いて、みんな雑魚寝で消灯した。目を瞑った。
ところがいきなり、「母さんに会いたい」となぜか強く思った。
話したいが、母さんはここにはいない。僕は今、どこにいるかわからない。携帯電話は持っていない。辺りも暗い。もう2度と明るくなることがない気がした。もう2度と母さんには会えない気がした。
僕はいてもたってもいられなくなってしまった。先生と外を歩き回り、その日は落ち着いて眠ることができた。
これが、僕が初めて経験したパニック発作だった。
その後も、人生で度々この発作を経験した。
最初は「母さんに会えない」恐怖だったが、次第に様々な不安や恐怖を体感した。体感したことない方にも擬似体験してもらうために例を出すと、下記のような事柄がいきなり頭を支配する。
・目が見えなくなったらどうしよう
・耳が聞こえなくなったらどうしよう
・声が出なくなったらどうしよう
・体が動かなくなったらどうしよう
・記憶がなくなったらどうしよう
・2度と朝が来ず、停電して何も見えなくなったらどうしよう
・もう小学校の楽しかった頃には戻れない
・この乗り物から出られなくなるかもしれない
・外の空気が吸えなくて窒息するかもしれない
・うつ病になってしまったかもしれない
・今目に映っている世界は自分の目に映っているだけで、本当に世界は存在しているのか。その実態をつかめないふわふわした状態が怖い。
・愛も夢も欲も何も意味はなく、僕も他の人間もいずれ死ぬただの生物でしかないこと。そう思うと、僕の心の拠り所がどこかわからなくなる。
これらの事象が実際に起こるわけなんてほぼないことは頭ではわかっている。でも、パニック発作になったときは理不尽に不安や恐怖が襲いかかり、必ず精神が不安定な状況が訪れる。
度々経験したので、ほとんどの軽度なものであれば自分で抑えることができるようになった。
自分を俯瞰して、「いや、僕は死なないから大丈夫。」とシンプルに言い聞かせるだけ。1分で元の状態に戻る。
しかし、今日のパニック発作は強烈だった。理由はたぶん3つ。
・父さんの寿命が近く、存在を失ってしまうかもしれない
・目の整形のダウンタイムで異物感を感じ、もう元の感覚には戻れないかもしれない
・次の仕事に向けた勉強(毎日9時間)によるストレス
理由はほぼわかっている。
また、僕は毎日、ストレスに対処する策を打っている(散歩と瞑想とジャーナル、筋トレ)。
そして、不安を感じた瞬間に、不安な要素と理由、今できることを全て紙に書き出し、それらをできるだけその場で全て実行する。
今回も全く同じことだ。でも、度合いによっては発作を抑えることができない。
パニック発作は、ストレスによって引き起こされることが多い。しかし、僕の場合は強いストレスを感じた瞬間というよりは、ある時いきなり発作になる。ストレスから身を守るために脳が誤作動しているらしい。
今朝は、僕が感じている恐怖を全て母さんに話した。今まで、父さんがいなくなることに対する恐怖はあえて伝えなかった。僕の弱い姿、苦しんでいる姿を家族に見せたくなかった。話すと涙が出るのも恥ずかしい。でも、今日は全てを話した。案の定、涙は止まらなかったが、父さんに対する全ての気持ちを初めて本気で、母さんに話した。
母さんは、母さんの父(僕から見たおじいちゃん)が亡くなった時のことを話してくれた。今まで話してくれていなかった、家族の関係だったり、後悔したことなど。僕が今まで聞きたかったけど、聞けてなかったことだ。
母さんも、僕と全く同じ気持ちをおじいちゃんに対して持っていた。
いろいろなことを話しているうちに、母さんに対する気持ちも伝えたいと思い、これまで話せていなかった感謝などを伝えた。
「自分は今幸せである」と。
「明日死ぬことになっても後悔をしない毎日を今生きているから、たくさん愛情を受け取って幸せだと思っているから、もし万が一僕が先に死んでも母さんは元気で長く生きていてほしい」と。
ある友人がいつも帰省した時に伝えているという、この言葉。本当に素敵だと思いつつも、僕にはこれまで伝える勇気がなかった。
でも、これからは伝えると約束した。
「いつ離れることになっても後悔しないように、会えた時はもっと知りたかったことをたくさん話そう、嫌だと思ったことも伝え会おう」
そう母さんと約束した。
僕は今回、安心したいという気持ちでの電話だったが、母さんといろいろな話をすることができた。親子が1人の人間としてお互いを認め、フラットな関係で話せる状態になるというのは、お互いにとっての人としての成長だと、僕は考えている。
パニック発作がなければこの機会はきっと遅れていた、もしくはどちらかが死ぬ瞬間まで訪れなかったかもしれない。
パニック発作はこのように新しい成長をさせてくれることもある。
大学生の時、「どんなにオシャレをしてモテてたとしても、歌が上手くなってチヤホヤされたとしても、その先には何があるんだろう」と思ったことがあった。全てには意味がないと思い、生きている意味がわからなくなった。
そういったふとした感情が積み重なるうちに、僕は人生で何かを成し遂げたいと思った。意味がないと思える自分の人生を、意味があるものにしたいと強く思った。これはきっと、パニック発作が起こっていなければこの時には経験できなかった感情だと思う。
正直、今も少し不安があったり、少し怖い。
父さんや母さんがもし亡くなってしまったら僕は耐えられるのか。また、今後に同レベルのストレスを感じた時に僕は耐えられるのか
でも、僕は強く生きていたい。
苦しいこともあるけど、自分にいろいろな経験をさせてくれるこの発作を乗り越えて。