棚にあふれる葛根湯【ドラスト漢方】
ドラッグストアで販売している”かぜ”の漢方薬の代表格は、葛根湯。
葛根湯だけでも何SKUあるのだ??というぐらいに葛根湯が溢れています。
剤形も様々で、錠剤、顆粒剤、ドリンク剤。
お店の棚3段分は、葛根湯でしょう。
ここまで葛根湯があふれる理由は、日本の歴史や風土に関係しています。
四方を海に囲まれ、多湿傾向にある日本。漢方薬が生まれた中国に比べると「湿気」によって不調が起こるケースが多かったことでしょう。
また、漢方薬が盛んに使われていた江戸時代は、小氷期を経ているので、「寒さ」によって不調が起こることが今よりも多かったと考えられます。
体質的に見ると、湿気が多いために、胃腸の状態は世界基準で考えると悪い方。
それでいながら、湿気とともに暮らしてきた遺伝子を持っているので、体内にある程度の湿気がないと不調をきたす。
人間の体温を維持できないほどの気温は、体調を崩す原因になります。「寒さ」が原因で何らかの不調が引き起こるというのは、経験的にも確かです。
そこで葛根湯の登場です。
葛根湯
葛根:発汗を促しつつも”湿潤”をキープする
麻黄・桂枝:温めて発汗
芍薬:湿潤をキープする
生姜・大棗・甘草:胃腸を調節する
葛根湯は、「辛温解表薬」に分類されています。
つまり、体温を上げて、解表=汗をかかせて、体内のいらない病邪を外に出す。ということです。
ミソなのは、胃腸に気遣い、体の水分(汗)を出させ過ぎないという点。
寒さによって引き起こる不調の数々を温めることで改善し、ある程度の湿気のキープと元々の胃腸の弱さに考慮した処方となっています。
だから、日本人にはパチっとハマったと推測されます。
麻黄湯との比較
麻黄・桂枝:温めて発汗
麻黄・杏仁:肺の働きを活性化させる
甘草:水分を保持/麻黄・桂枝の発汗作用を抑える
同じ辛温解表薬に分類される「麻黄湯」。
中医学ベースでお薬を提供されている先生方は、「中国じゃ風邪に葛根湯はあんまり使わないないんだよ」と言われます。風土が違うので、葛根湯だと効きが甘いのだと思います。しかも私達の遺伝子は、その風土によっても形成されていきますから、基本的な体質も違うでしょう。
麻黄湯を言うならば、
「四の五の言わずに、出す。」「攻めて攻めて攻め尽くせ」
生薬数が少ないほど、効きがシャープになります。つまり、「温めて発汗」の作用が葛根湯に比べるとシャープになります。麻黄は、胃腸に負担をかけますので、胃腸丈夫な方向けの処方になります。
麻黄が胃腸に負担をかける理由
現代医学的な見解からみると、その理由が見えてきます。
麻黄の成分はエフェドリンです。
エフェドリンは、アドレナリン作動薬に分類される成分です。
アドレナリン作動薬は自律神経の交感神経を活性化させます。
交感神経が優位になるということは、交感神経を拮抗する副交換神経を抑えます。
副交感神経が優位のときに働く胃腸の働きが抑えられるため、胃腸の不調が出やすくなります。
おわりに
「風邪には葛根湯」と言われていますが、
正確にいうと「寒気してかぜかな?と思った瞬間に葛根湯」です。
自分の身体の細かな声を聞ける方だと「葛根湯」は功を奏すと思います。
ドラストで相談を受ける段階では、わりと皆様、風邪をひききった状態の方が多いです。
「まぁ、そこまできたらな、症状緩和してやり過ごすしかないですかね・・・」という状態です。
自分の身体の声を聴く。
それができるライフスタイルになるのが漢方薬を選択するということ。
まず信じるものは、自分です。
自分の精神を信じられないなら、まず、自分の身体を信じてみよう。
自分の身体は、間違いなく歴史を辿っています。
そして、そこに存在し、触ることができます。
迷ったら、自分の身体に聴いてみてください。
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