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価値観の違いでまとめて良いものか,,,悩むこともある

この国で有名になることは嬉しいことだが、その分様々な意見も耳に入ってくる。

「IKTTの布は綺麗じゃない」

と、購入した布の動画を撮影し、わざわざご丁寧にTikTokにUPしていた人がいたそうだ。その動画には普通に綺麗なIKTTの布が写っていた。しかし彼女にとっては手引きの糸特有の質感が気に入らなかったらしい。もちろんご返品。カンボジア人がショップに来て実際に布を見てから購入する率は比較的少なく、約半数がSNSや写真のやりとりで購入を決める。この人物もその一人。

IKTTではタテ糸、ヨコ糸共に100%手引きの糸を使っている。

IKTTでは、これはとても自然な事。しかし機械引きの一般的なシルクの布に慣れている人々にとっては、彼女が言ったような感想を持つ者も少なくないだろうし、これが正直な意見だったのだと思う。今まではそれが少数派だったのが、有名になればなるほど、IKTTの布だから欲しいという人も増えてくるだろうし、実際に増えてきているし、これからもこのような意見は出てくる可能性は大いにある。

これはIKTTが「ブランド」として確立し始めている証拠でもあり、それは素直に嬉しい。

ある一定の質感の古布、おそらく1970年よりも前に製作された布だと推測するが、その布の表面にはタテ糸の太さの違いからくるスジのようなものが見える。人間が手で作った道具で、人間が手で繭から糸をひくということは、ある程度の不均一さは出てくるものだ。

Morimoto collection より
クメール絣の古布

2007年森本さんはプノンペンで開かれたカンボジアシルクについての会議に出席している。そこでの議論は、カンボジアシルクを一般的なシルクの国際価格や、生産性と比較するという会議だったそうだ。その場で、森本さんは一つの提案をした

「カンボジアのシルクへの誇り、それがまずカンボジアのシルクにかかわる関係者のあいだで、再認識されなければならない。国際市場にあふれる生産性を優先させたシルクと、シルク本来の良さを保持したカンボジアの黄色いシルクは、その品質においてまったく異なるもの。そこには異なる市場が存在する。それを同じ土俵に乗せて議論する必要はない」と。

どちらが良い悪いではなく、それぞれに異なる市場があり、比べるものではない。

もちろん現場では常に糸の太さには気を使っている。糸の責任者であるMOM。タテ糸、ヨコ糸、絣のヨコ糸、Kromaのヨコ糸、という風に布の種類別に出来る限り糸を選別しなるべく均一になるよう努力をしている。

糸の責任者MOM
タテ糸についての打ち合わせにて

IKTTの布の質感が徐々に変化している事にお気付きの方はどれだけいるだろうか。「手引きの糸だから仕方がない」と諦めるのではなく、布の仕上がりを確認し少しでも改善の余地があるのなら、糸のチームが一丸となって努力をしている。今までも何度も糸について話し合い、改善してきた。織りや括りといった花形ではないので普段は目立たないが、布のクオリティーを決めるとても重要な仕事だ。

IKTT伝統の森の工房にて
糸のチーム

「いい布は、織り機に座る織り手だけではできない。糸を紡ぐ人や織り機を作る人、そんなみんなの気持ちが重なってできるもの。」

これは内戦のなかのカンボジアの古布を、何千枚単位でタイに持ち出したタイの仲介人が森本さんに言った言葉。彼は布と一緒に、美しい彫りが施された道具類もタイに持ち出していたそうだ。多くの布や道具に触れてきた彼から発せられたこの言葉に、嘘偽りは無いのだろう。

「素直さを失ったとき、逆境は卑屈を生み、順境はうぬぼれを生む」

お客様からの率直なご意見をまずは素直に受け取り、卑屈にならないよう、うぬぼれないよう、2025年も日々精進いたします by IKTT

と、いうわけで、今年もIKTTを宜しくお願いいたします!!!

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