ラグジュアリーを目指した日本酒ブランド、2年間の軌跡
こんにちは、日本酒スタートアップClearの生駒です。
弊社は「日本酒の未来をつくる」をビジョンに掲げ、
日本酒メディアSAKETIMESと、日本酒ブランドSAKE100(サケハンドレッド)を運営しています。(この短い文章で日本酒って4回言ってる)
SAKE100は「100年誇れる1本を。」をテーマとし、
日本酒におけるラグジュアリーシーンの開拓を目指すブランドです。
2020年7月10日で2周年を迎えるにあたり、
これまでの軌跡を振り返ろうと思います。
日本酒に関わりのある方、またはD2Cビジネスをやられている方・スタートアップ界隈の方向けの内容になるかと思います。
なお、僕がなぜ日本酒事業やってるかはこちらをご参照ください。
はじめに
これまで僕はSAKETIMESを通じて、数百の酒蔵を訪れ、
数え切れないほどの素晴らしいお酒を飲んできました。
その経験の中で感じたことは、日本酒の底知れぬ可能性、
そして「高価格帯が不在な市場への違和感」です。
技術、伝統、熱意、想い、歴史。
全てが渾然一体となった魅力をもつ日本酒ですが、
高度経済成長期より続く「良いものをより安く」という考えのもと
コモディティ商品の流通が大勢を占め、付加価値に重きをおいたハイエンド商品はほとんどありませんでした。(最近は増えてきましたね)
日本酒の魅力は多様性にあり、種類という横幅には富んでいる一方で、
時計、鞄、ワインなどの嗜好品の特徴である価格という縦幅がありません。
コモディティもあり、プレミアムもあり、ラグジュアリーもある。
これが市場における健全性であり、嗜好品としての日本酒のあるべき姿だと強く感じるようになりました。
であれば、その市場を自分で開拓しよう。
そう決意して立ち上げたのが日本酒ブランドSAKE100です。
これまで培ってきた、私たち自身の知見や、酒蔵とのつながりをもとに、
商品のコンセプト、提供する体験、製造する日本酒のスペック、
クリエイティブ、販売チャネル、お客様とのコミュニケーションまですべてを自分たちが考え、100年誇れる1本という高いハードルを超えられた商品のみ世に送り出しています。(もちろん製造についてはパートナー酒蔵との議論・検討が前提です)
世界的なコンクールで二冠を達成
2018年7月に決めていたことは、
短期的な売上よりも定性的なブランド評価を優先することでした。
ブランドはお客様との信頼関係が全てです。
商品の品質が証明されていない状態で売上を高める施策を打っても中長期ではブランドが摩耗していくだけです。
まずは商品の圧倒的な価値を証明すること。
ここに力を入れました。
品質の評価を確認するため、
フラッグシップ商品である『百光』を2つのコンクールに出展しました。
イギリスで開催される世界的ワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2019」ではゴールドメダルを受賞しました。IWCは"世界でもっとも大きな影響力をもつ"といわれ、優れた品質のワイン・清酒を審査し、表彰するものです。
フランスで開催されるKura Masterは"フランス人によるフランス人のための日本酒コンクール"です。フランス全土より集まった約100名のフランス人ソムリエらによるブラインドテイスティングにて審査され、プラチナ賞を受賞しました。
権威あるIWC、そして世界の食文化を牽引するフランスのKuraMaster。
ここでの受賞から、「品質の証明」は加速していきます。
ちなみに、IWCの受賞を知ったのは息子と風呂に入ってるときだったのですが妻に息子を預けて半裸で関係各所に連絡しました。笑
近年で最もテンションがあがった瞬間でした。
G20カンファレンスでの選出
2019年7月には、
G20の開催に伴って開催されたカンファレンス「G20 Officials and Industry Round Table on Health and Productivity Management and Value Based Helthcare 」のレセプションパーティーにて、『百光 』が乾杯酒として選出されました。
世界各国の民間企業のグローバルリーダーや、関係政府機関の幹部の皆様に乾杯酒としてご賞味いただきました。SAKE100の展望についてもプレゼンテーションのお時間をいただき、全文英語にて案内をさせていただきました。
一流レストランとの出会い
発売時から品質には自信がありましたが、
コンクールでの受賞やカンファレンスでの選出によりレストランのシェフ・ソムリエの方々との出会いも増えていきました。
(写真は生駒の個人撮影)
アマン東京、34階に位置する「寿司 武蔵」。
武蔵さんが目の前で握ってくれるライブ感、
鮨に行き着くまでのツマミの多彩さ、そして鮨の芸術的な仕上がりと、百光が美しくシンクロしていました。
(写真は生駒の個人撮影)
星のや東京ダイニングは「Nipponキュイジーヌ」と銘打ったレストラン。
日本の四季に育まれた森のミネラルが作り出す食材の素晴らしさを世界に発信することを目指しており、濃醇で優雅な甘みをもつ『天彩』と素晴らしいペアリングを表現してくれました。
現在では上記の店舗のほかに、
ミシュラン二つ星、一つ星、複数の個性溢れる素晴らしいレストラン、10店舗ほどとお付き合いさせていただいています。
たとえどんなに美味しいお酒でも提供の仕方や合わせる料理次第で上にも下にも振れるものです。品質管理、商品知識、提供料理、空間、サービス。自信をもってお客様をご案内できるレストランとお付き合いができていることはブランドとして、大変ありがたいことです。
ペアリングディナーの開催
リアルな体験としてお客様との接点づくりも行ってきました。
それが「SAKE100ペアリングディナー」です。
三越前のモダンフレンチ「ラ・ボンヌターブル」。
5つ星ホテルであるパレスホテルの「グランドキッチン」。
ミシュラン一つ星、広尾「Ode」。
それぞれが個性を活かした料理やお酒の提供をしていただき、
3万円という参加費ですが30席ほどが毎回埋まりイベントは毎回大盛況。
満足度の高いディナーイベントとなっています。
お客様との交流の場として開催したペアリングディナーですが、
それとは別の大きな発見がありました。
それはペアリングごとに表情を変える商品の魅力です。
全ての商品にどんな料理が合うか、何℃で提供するのがベストかなど、
検討・検証をしていましたが、一流のシェフ・ソムリエの方たちとの共演によって全く想定していなかった魅力に出会うことができました。
このペアリングディナーによって、
日本酒は世界の料理と積極的に交わっていくべきだと強く感じました。
外商用展示会での快挙
2020年の2月には、
とある高級百貨店の外商用展示会にお誘いいただきました。
日頃、ラグジュアリーブランドや高級ワイン、ウイスキーとの接点の多いお客様へ僕らが直接商品の案内をさせていただき、直売をするという大変貴重な機会をいただきました。
光栄なことに、これまでの日本酒部門売上の最高記録を達成し、
お客様だけでなく、お誘いいただいた百貨店にも恩返しをすることができました。
新たな挑戦と、強い確信
ここまで書いてきた実績は、
スルスルと獲得したものではなく試行錯誤の連続によって生まれてきたものです。
自分たちとしては一歩一歩、地道ながらも確実に登ってきた山。
少し振り返って後ろを見てみると、2年前に比べると少し景色が変わっていることに気づきました。
『百光』は連日、100人以上のお客様からご注文をいただき、
『深豊』『天彩』も追加製造分も半年と経たず完売をしていきました。
ヴィンテージ日本酒『現外』も数ヶ月に一回の注文から、一ヶ月に数回、一週間に数回とご縁をいただくことが増えてきました。
そして、2020年6月23日に発売した、
百光、初のシリーズ化商品『百光 2020 Fomula』。
16,800円という金額ながら、約5000人のお客様からご予約をいただき、僅か3日間で完売となりました。品質の証明を優先した結果、短時間で数千万円のご購入をいただけたことで、これまでの活動が正しかったのだと感じました。
なにか決定的なアクションや施策があったわけではありません。
日々の積み重ね、小さな一歩を繰り返し、お客様の価値とは何かを考え続けた結果でしかありません。
美談ではなく、むしろ残酷なまでにブランドを育てるということは時間がかかるものだと、振り返った今、強く感じます。
余談ではありますが、SAKE100の商品開発を担当してくれているパートナー酒蔵さんたちから、SAKE100との取引金額が1~5位程度まで上がってきていると教えてもらったことも素直に嬉しかったです。
今より無名のころからリスクを背負って商品を造ってくれた酒蔵にも、
これからもっと恩返しをしていきたいですし、もっと良い商品を共に造っていきたいですね。
なにを大切にしてきたか
ここで対外的な活動や実績とは別に、
ブランドとして「大切にしてきたこと」を具体的に3つ紹介します。
品質変化の検証
商品の品質については、環境ごとの変化を定点観測しています。
1週間〜3ヶ月の期間、
5℃、15℃、25℃の温度、
開封、未開封。
それぞれの変数を掛け合わせて品質にどんな変化が起こるか、複数人で定点チェックを行います。どんな環境でどんな味わいになるかを把握しておくことで、お客様からの問い合わせにも柔軟な対応ができるようになることが目的です。
ベストな保存環境で美味しいのは当たり前。
お客様のご自宅で「常温で2ヶ月放置してしまった」などのお問い合わせをいただいたときに、「◯◯な変化が起こっているので◯◯な温度で◯◯な料理と合わせると良いですよ」とご案内できることが大事です。
全社体制でお客様とコミュニケーションをとる
現在、お客様からのお問い合わせについては、
SAKE100メンバー全員でお応えしています。
高い商品を買ってくださっているお客様にとってベストな接客とはなにかを考えたとき、カスタマーサポートのプロへ外注をすることではなく、
ブランド・商品への愛情と理解のある人間が窓口となることが必要だと考えました。
マーケターもセールスも関係なく、
全社体制でいつでもお客様とのコミュニケーションに臨んでいます。
これにより、迅速でいながらきめの細かいやりとりが実現しています。
今後、ブランドの成長に伴って専任は用意していきますが、
現時点では最適なお客様とのコミュニケーション体制だと考えています。
商品づくりに妥協しない
当たり前すぎることですが。
ラグジュアリーシーンの開拓を目指す以上、
商品には絶対の自信を持てなくてはなりません。
一点の曇りもなく、心の底からお客様にご案内できる商品しか世に出さない。それがSAKE100の根幹にある考え方です。
事業が伸びれば在庫の問題も出てきますし、
短期的に商品を増やしてしまえば楽なのでしょう。
けれど、そうやって自分の心を偽って、妥協のある商品を出すことは許されない。
それはお客様との約束、
そして自分たちの哲学に反することだからです。
短期的には非合理だと捉われるかもしれませんが、100年以上のブランドにしていくためには商品づくりには全身全霊をもって臨んでいます。(そのため途中まで進んでいた商品開発を途中で辞めることもしばしば...数十の企画が商品化まで至らず中止となっています)
これからのSAKE100はどうするか
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ここでは語ることのない、ハードなできごとももちろんありましたが、
それはまた別の機会で話そうと思います。
2年を経て、ようやくスタートラインに立ったなと感じています。
D2Cスタートアップとして見れば成長曲線にのったという意味で順調。
けれどSAKE100は「心を満たし、人生を彩る」というブランドパーパスを掲げています。純粋に、お客様の人生を豊かにするブランドでありたい。
そう考えると、まだまだまだまだ先は長く、
理想と現実のギャップに歯ぎしりをしながら奮闘する毎日です。
自分たちの表現の先に、お客様の人生の豊かさがあり、その延長線上に、人類の幸福がある。綺麗事でも妄想でもなく、僕らはそう確信しています。
僕はこのブランドにとって初代オーナーであれば良い。数十年先に二代目三代目と続いていき、敬愛するHERMESのような世界的なブランドになっていきたいと、そうなるんだと決意しています。(世界的なブランドという意味では5〜10年で一定のレベルまではいきたい)
日本酒は難しいし、ブランド造りも同じように難しい。
けど自分たちは何者かを追求し続け、その主張をお客様への価値につなげていく。シンプルにこれの繰り返し、積み重ねでしかありません。
3年目を迎えるSAKE100、ぜひご期待ください。
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SAKE100は、機能的価値ではなく、
お客様に情緒的価値を提供するブランドを目指しています。
美味しいだけでもダメ、オシャレなだけでもダメ、
売れているだけでもダメ、独りよがりでもダメ。
360度、あらゆる顧客接点で自分たちの哲学を表現していかなくてはなりません。このブランドづくりを、一緒にやっていける仲間を募集しています。
・日本酒に関心をもつ経営幹部候補
現在Clearは取締役は生駒のみ。
今後のブランド成長と、数年後のIPOを見据えて経営幹部を積極採用しています。我こそは未来のCOOである!CFOである!という方、一緒に日本酒の未来をつくっていきましょう。
僕自身がビジョンだけで生きている人間なので、
知的で落ち着きがあり、数字が大好きな人、特に歓迎します。笑
・日本を代表する日本酒を開発するメンバー
SAKE100の商品を一緒に創り上げていける人材を募集しています。既存の概念に囚われず、世界で広く、そして長く愛される商品とは何かを考え、生産計画を立て、パートナー酒蔵との協議も含めて進行をしていける方を歓迎します。
興味のある方は「recruit@clear-inc.net」までご連絡ください。
2020年は日本酒にとっても苦難の年となっていますが、
その中でもClearは大きく成長しています。
僕らの成長はそのまま日本酒産業にも還元されていきますし、
これからは海外展開も積極的に行っていきます。
Clearの歩む道のりが、そのまま歴史になる。
僕は創業当初からそう確信しています。
一緒に明るい未来を創造していきましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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