僕が日本酒に人生を賭けるわけ
はじめまして、生駒です。
僕が代表を務めるClear Incは日本酒に特化したスタートアップ企業です。
日本酒メディアSAKETIMESと、
日本酒ブランドSAKE100を運営しています。
僕個人としては、
Forbes Japan「Sake Innovator」に選出いいただいたり、
国税庁の「日本酒のグローバルなブランド戦略に関する検討会」の委員になったりと、社会人になってからのほとんどの時間を日本酒事業に費やしてきました。
2012年に日本酒の事業を始めてから今日まで、数多くの投資家、酒蔵、消費者の方から数え切れないほど頂いた質問があります。
「生駒くん、どうして日本酒の事業をやっているの?」
酒蔵や酒屋の血筋でもなく、酒にもめっぽう弱い僕が、
なぜスタートアップというリスクをとっているのか、確かに気になりますよね。
今日は初noteということで、その回答を書きたいと思います。
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なぜ僕らは日本酒を広めようとしているのか。
これに対する回答は極めて重要。
Clearは家業ではなく、起業する上での事業領域として日本酒を選びました。SNSでもアプリでもWEBサービスでもなく、なぜ日本酒を?起業というリスクをとってまで?本当によく聴かれます。
身体に良いから?
なんてよく言われますが「酒は百薬の長」という言葉は残念ながら現代の医学では否定的な見解をとられることが多いです。心筋梗塞などの病気に対しては、適量を飲んでいる人の発症リスクが下がるのではないか言われている反面、脳卒中や肝臓・膵臓の病気などについては、リスクが上がることがわかっています。
日本の伝統文化だから?國酒と言われているから?
それも違います。大切にすべき文化であることは十分に尊重、理解していますが、それでは手段と目的が逆です。
なぜ國酒・伝統となりえたのか、その要因にこそ答えがあります。
日本酒は人と人を繋げるからです。
ひとの生活に寄り添い、生きることに彩りを与えてくれるからです。人が人として、ひととの繋がりを求める限り、この産業はなくなりません。
日本酒は飲用温度帯が世界に類を見ないほど広く、
陶器・磁気・ガラスなど使用する酒器によって驚くほど表情を変え、料理とのペアリングにはまだまだ秘められたポテンシャルがあります。
つまりどんなシチュエーションでもフィットするということ。暑い日にはスパークリング日本酒を飲めば良いし、寒ければ熱燗を飲めば良い。嬉しいとき、悲しいとき、どんなときでも日本酒は寄り添います。
僕らはそうした、日本酒の懐の深さによって人生が豊かになってきた集団なんです。だからそれを人に伝えたい、ただそれだけのシンプルな理由です。
一方で、飲酒に関わる様々な社会・健康課題にどう向き合うのか。ここも大事なポイントです。
WHOはアルコールの有害な使用を低減するための世界戦略を2010年に採択し、国内でも2014年にアルコール健康障害対策基本法が制定されています。
タバコに対する風当たりがここ数年で強くなるのと同様に、アルコールに対しても社会の目は厳しく向けられることは世の流れであり、それを否定することはできません。
SAKETIMESはそうしたことも踏まえ、日本酒と健康問題についても記事を掲載し、適切な飲酒に関する啓発を行っています。
また、SAKE100(サケハンドレッド)は、フラッグシップアイテムである百光は16,800円、1995ヴィンテージの現外は150,000円と一般の日本酒に比べると高額ですが、これも上記の世の流れに対する一つの回答です。
飲酒量が下がっていくのであれば、産業としては品質を高め、単価を上げていく方向にシフトしていくべきです。最高の体験ができるんだ、人生の質そのものにコミットできるんだ、日本酒にはそのポテンシャルがあります。
事実、ここ数年でパック酒に代表されるような普通酒は消費量が減退する一方で、純米酒や吟醸酒などの高品質商品の出荷量は伸びています。海外も同様に、輸出量よりも金額の上昇が著しく、「高付加価値な嗜好品」としての日本酒には大きな可能性があります。
ドンペリニョンの醸造責任者であったリシャール・ジェフロワ氏が富山で日本酒造りを始めたり、海外のラグジュアリー企業が酒蔵の買収を進めるなどの動きも増えてきています。
この、ハイエンドマーケットを開拓するのがSAKE100です。
日本酒の魅力は「多様性」にあり、とよく言います。
そこには味幅や地域性だけでなく、価格も含まれて良いはずです。安くて美味しい日本酒も良い。同時に、高付加価値で高価な日本酒もあって良い。
ワインが価格幅と種類幅で大きなピラミッド構造になっているように、日本酒にとってもハイエンドマーケットは必要なはずです。
世界の産業で最も伸びているものはなにか。
それはエンターテインメントでしょう。
日本酒も人の生活を豊かにするという点では同じです。
VRやARのようなバーチャルでの体験が広がれば広がるほど、リアルなエンターテインメントの価値も相対的に上がっていきます。日本酒輸出の堅調な伸びをみれば、それが国内に留まった話ではないことは明白です。
もう1973年をピークに清酒の出荷量は三分の一まで落ち込み、という言葉を使うのは辞めて良いんじゃないでしょうか。世界のエンターテインメントの多様化に、日本酒が最適化をしている過渡期なだけです。このパラダイムシフトをどう乗り越え、これを好機ととらえ発展のためのアクションを起こせるか、議論すべきはここです。
日本酒はひとの生活を豊かにする。
それは今も昔も未来もかわらない。
フォーマットは変わるかもしれないけど、それは普遍です。最適化した事業展開ができれば、日本を代表する大きな産業になることは間違いありません。僕らはそう確信してます。
それが、僕らが日本酒事業を行なう理由です。
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僕らは日本酒じゃなきゃダメなんです。
日本酒、美味しいし、面白いし、楽しいですからね。
ここまでのめり込める事業と出会えたことは起業家として幸運なことだなぁと思った、というところで今回は終わりにしようと思います。
主にポエムになると思いますが、
日本酒産業についてのことを今後書いていきますので、
どうぞよろしくお願いします。
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