カープダイアリー第8279話「交流戦最大の敵ソフトバンク相手に完全無欠の18番、覚醒する43番」(2023年6月3日)
30度近くまで気温が上昇する最高のデーゲーム日和のエンディング。お立ち台に上がったのは森下と龍馬だった。
「二週連続です」と振られた森下は「ありがとうございます」と答え、初回先制打など2打点の龍馬は「さすがにちょっと気持ち悪いですね」と返した。3万1178人のファンで膨れ上がったスタンドが何度も沸いた。
先週土曜日の森下は中日打線を7回105球3安打無失点に封じた。声出し応援可となった本拠地初登板で今季初勝利。
しかしこの日は中日より各段に手強いソフトバンク打線が相手。しかも一番から七番まで左打者…
初回に三番近藤、四番柳田に連続死四球を与えたものの栗原を空振り三振に仕留めると、二回にはファーストライアンのエラー絡みで一死一、二塁から強硬策の石川を併殺網に引っ掛けてピンチを脱した。以後、許した走者は四球、単打、バックのエラーによる3人だった。
打っても森下の存在は際立った。二回、四回と石川からヒットを放ち、七回には「うますぎました」と自画自賛のセーフティスクイズも決めた。
守っても当たり損ねの難しい打球をファーストに正確に送球したり、あるいはファーストベースカバーをスムースにこなすなど投げたあとも特筆すべきプレーが相次いだ。
右肘の不安が薄らいでいくとともに背番号18が「完全無欠」の存在になりつつある、ということか。
1年前の交流戦の“入り”は福岡PayPayドームで9失点、六回途中KOと散々で、けっきょくパ・リーグ勢相手に3戦全敗、2球団最低防御率、6・05(第30位)に沈んだ。
やられたら、やりかえす。それができるかどうかで価値が決まる。
しかしソフトバンク打線も簡単には引き下がらなかった。八回のターリーは何とか一死満塁のピンチを自力で封じたが、九回の矢崎は無死満塁から代打三森に適時打されて島内の救援を仰いだ。
なおも無死満塁。このシチュエーションでは同点にされないことだけが求められる。
打席には前夜4安打の中村晃。いきなり3ボールになったが島内の表情に大きな変化はなく、まっすぐでフルカウントに戻してセンターへの犠飛でひとつ目のアウトが取れた。曾澤のリードは全6球ストレートだった。
続く牧原には6球目のチェンジアップを巧く合わされてまた満塁…
まだアウトカウントはひとつ、迎える打者は近藤、そして柳田…
近藤にはまた全球ストレート。3球目で浅い左飛に打ち取った。
柳田は八回の一死満塁でターリーの前に浅い左飛。最高においしい場面が九回にも用意された。
しかし勝ったのは島内。ボールカウント3-1からのインハイ152キロでショートフライ。2日連続の「カープ男子」ヒーロー誕生を阻止した。
ゆえにこの日のお立ち台には島内も上がるべきだっただろう…
試合後、新井監督も「あそこはほんとに難しい場面。向こうに勢いが完全に行っている中で、あの打順で、ああいう展開でよく抑えてくれたなと思います」とコメントした。
森下の「完全無欠」はそのタフな精神力によって支えられている。島内もまた今シーズンを迎えるにあたり自己変革を進めてきた。
「去年までは技術的にもメンタル的にも不安定だったのでマウンドでの考え方を変えてみようと…」
黒田アドバイザーからも太鼓判を押されている剛速球を生かすも殺すも自分しだい。
「打たれたくない」と思って投げる真っすぐと「ソーンに自分のボールを投げることにだけ集中する」のとではまったく違う結果が待っている。そのことに目覚めつつあるからこそ、無死満塁からの救援にも耐えることができたし、パ・リーグ3位、28打点の柳田のバットもねじ伏せることができた。
それでも交流戦通算で対ソフトバンク戦勝率・311(19勝42敗6分け)は12球団中、最大のワンサイド。オリックス戦連敗記録(13)に続いてこのカードの連敗記録も5で止めはしたが、コイの行く手を阻もうとする最大の難敵が鷹であることに変わりはない。