カープダイアリー第8455話「Bプレミア参入戦の広島ドラゴンフライズを新井監督とカープが全面アシスト!12月新サッカースタジアム完成の広島、次は新アリーナ」
あす12月6日のBリーグ公式戦の会場に、再び新井監督が登場する。
Bリーグは主に水曜日と週末に開催されるが、平日開催では集客力が落ちる。広島市長や県知事より広島的な存在、新井監督のアシストがあれば、入場者数クラブ記録更新も夢じゃない。
新井監督は1年前のこの時期にも西区広島サンプラザホールで開催されたB1リーグの試合で始球式を務めた。監督就任からまだ2カ月というタイミングだった。アリーナ席にはファンが溢れて大変な盛り上がりとなった。
野球一筋の新井監督が自ら進んでバスケに興味を示している訳ではない。広島ではつい先日、もっと大きな出来事があった。
サンフレッチェ広島の本拠地、エディオンスタジアム広島でのJリーグ公式戦ラストマッチ。そこにカープの選手や監督が出向くようなことは過去も、そして今回も、とうとう一度もなかった。
Jリーグは今年、30周年を迎えた。Jリーグの歴史と、前オーナーの松田耕平氏から松田元オーナーが球団運営を任されるようになった期間とは完全に重なる。
今、Bリーグは大変な加熱ぶりを見せている。自力で来年のパリ五輪切符を引き寄せたことが大きい。
かつての国内バスケットボール界は漫画「スラムダンク」や2006年の世界選手権自国開催などにより、野球、サッカーを追随するような流れが生じかけた。
しかしブームは長く続かなかった。
国内バスケ界をまとめ上げる人材と機運に乏しく、ついには2つの男子リーグが別々に運営し始めて、国際バスケットボール連盟からダメ出しされた。日本は国際大会に出る資格なし、と…
結果、Jリーグ創設の中心人物だった川渕三郎氏をバスケ界の関係者が引っ張り込む形になり、そんな特殊な体制の下で大改革が進められた。
効果てきめん、川淵氏の日本バスケットボール協会会長就任から1年で男子トップリーグは統一され、新たに「Bリーグ」が発足した。 2016年には川淵氏の著書「独裁力」が幻冬舎新書から出されている。
なお、この大改革では笑えない話がゴロゴロある。一例を挙げると…
「ところで川淵さん、我々はどう動けば良いのでしょうか?」(バスケ関係者)
「いえいえ、あなた方はもう不要です」(川淵会長)
広島ではこの国内の動きに先んじて、県内関係者の中から「広島でもリーグ戦に参加できるチームを作りたい」の声が上がり、その準備が進められた。
2006年の世界選手権では広島グリーンアリーナも会場になった。関係者としては「今度こそ」の思いが強かった。
2014年10月、待望の広島ドラゴンフライズ運営会社が設立された。
時期を同じくして、広島では別の組織も活動しており広島サン・スターズ(のちに広島ライトニング)というチームも誕生した。しかしこちらは2016年春で解散となった。県バスケットボール協会にしてみれば、2つのクラブをともに後押しすることなどできないだろう。
広島バスケの未来にはその後も試練が待っていた。
当時の国内男子リーグ2つのうちのひとつ、NBL参入に成功した広島ドラゴンフライズは、2016年のBリーグスタート時に経営体力不でB2に振り分けされた。18クラブで構成されるB1から漏れたのである。
この時のクラブ関係者のショックの大きさは計り知れないものがあった。そこからチーム力向上とクラブ経営力向上を同時に進めようとするも、そうそううまく行くはずもない。
ヘッドコーチも次々に交代となり、ある時期にはチームの柱である朝山正悟がヘッドコーチ兼任となった。経営トップの交代も2度あった。
悲願のB1昇格を果たしたのは、コロナ禍に見舞われB1とB2の入れ替えもできないのでは、という声が上がった2019-20シーズンだった。正にギリギリ…B1昇格の夢の実現までに4シーズンを要した。
Bリーグは川淵氏の下でJリーグを手本として創設され、一方でクラブ数が増えることに歯止めをかけないJリーグとは別の道を模索するようになった。すでに2年ほど前からそうした動きが進められていたようでこの7月、ついに衝撃的な発表があった。
東京都内で会見したBリーグの島田慎二チェアマンは2026年に始動するB.LEAGUEの構造改革「B.革新」の概要を明らかにした。新たなトップカテゴリーの名称は「Bリーグ・プレミア(Bプレミア)」で、以下Bリーグ・ワン(Bワン)、Bリーグ・ネクスト(Bネクスト)の3部制で構成となる、とした。
最上位のデビジョン「Bプレミア」に向けた条件はすでにこの会見以前に発表されており…
・入場者数平均4000人以上
・売上高12億円以上
・厳しい基準をクリアしたアリーナの確保
…の3条件を満たしていないと最上位デビジョン参入の資格なし。しかもBプレミアでは昇降格制を採用しない。入ったモン勝ち…
Bプレミアは18クラブでスタートするものとされているから、それ以上のクラブがこの条件をクリアしたならあとは互いに潰し合いになるかもしれない。現在、B1だけでも24クラブがひしめき合っている。コートでのBリーグ激戦とは比べ物にならない、やるか、やられるか、の話になる。
Bリーグ各クラブの経営陣は相当の覚悟を持って島田チェアマンの考えを傾聴しているはずだ。「Bプレミアと下層リーグでは天と地の差が生じて、やがて下部リーグは衰退の一途を辿るのではないか…」と…
カープ球団は、Bリーグ誕生前後からの動きや、奮闘続きの広島ドラゴンフライズに対して特別な関心を抱いていた跡は見られない。
初代ヘッドコーチの佐古賢一氏との個人的に繋がりで、菊池が試合観戦に訪れた程度だった。
しかしここ数年はマツダスタジアムコンコースで広島ドラゴンフライズの告知活動が行われるようになり、ついには今季、カープと広島ドラゴンフライズの間でパートナー契約が結ばれた。
西区横川地区を拠点に活動していた女子サッカーのアンジュヴィオレ広島(2022シーズン終了後に解散)には数千万円の寄付を続けていた松田元オーナーだが、他のクラブと契約するのは異例と言っていいだろう。
広島ドラゴンフライズのオフィシャルサイトには、クラブ親会社のNOVAを頂点(トップパートナー)として、以下、マツダやイズミなどのダイヤモンドパートナー、さらにはプラチナパートナー、ゴールドパートナーと続くことが紹介されている。
カープはそのどこにも属さない「屈しない魂をともに」というカテゴリーになっている。
松田元オーナーが「屈しない魂」に共感してのことか、それとも他に理由があるのか、それは誰にもわからない。
当然ながら地元企業トップの多くは「広島ドラゴンフライズさんはどうやってカープさんとあんなに仲良くなれたのか?」と首を捻る。ありえないことが起こっているから、だ。
だが実は広島ドラゴンフライズ関係者らもその答えを認識している訳ではない。
「(オーナーの下へは)ずっとご挨拶には行ってます。もう何年も行っていますので、我々が少しずつ、徐々に成長していく姿を見られて“ようがんばっとるな”と…、そういう感じかなとは思いますが、ほかには特に…」(浦 伸嘉代表取締役社長)
12月に入ってますます突貫工事の色合いを強めているエディオンピースウイング広島はこの28日には完成する。松田元オーナーが散々絡んできた新サッカースタジアム問題は、当初とはかなり違った形で決着を見る。
2026年スタートのBプレミアに参入するためには「新アリーナ」の有無がおそらく最重要視されることになる。
ところが広島ではその動きが緩慢で、広島ドラゴンフライズはエディオンピースウイング広島すぐ南側の広島グリーンアリーナ改装案で当面のBプレミアに向けた戦いを乗り切る構えでいる。他クラブでは続々と新アリーナ構想が動いており、後手に回った感は否めない。
松田元オーナーは新サッカースタジアムに続き新アリーナ構想でも何等かのアクションを起こそうとしている可能性がある。無論、それが広島市民・県民のためになり、地元経済活性化にプラスに働くのであれば、さすがは広島スポーツの先頭を行くカープ!という落ちになる。