見出し画像

エッセイの研究(9)『小説以外』恩田陸

8冊目に紹介するのは、
小説家・恩田陸の
『小説以外』です。

恩田陸は私の
特にお気に入りの作家さんです。

有名な作品は、
吉川英治新人文学賞、
本屋大賞をW受賞した
『夜のピクニック』

本屋大賞、直木賞を
W受賞した『蜜蜂と遠雷』
あたりでしょうかね。

私が好きなのは、
男子高校生を主人公にした
『ネバーランド』

「二二六事件」と「タイムトラベル」を
題材にした SF 作品
『ねじの回転』

サブカルをテーマにした
学園 SF 作品
『ロミオとロミオは永遠に』

この辺りの作品が特に好きです。

『小説以外』という
タイトルからもわかるように、
基本は小説を書いている方で、

エッセイはそれほど多く発表されていません。

この本もどこかの雑誌で
集中的に連載されていた記事
だけでなく、

他の作者の単行本に寄稿した
解説も多く含まれています。

書かれている内容としては、
日常生活のこともあって、

特に恩田陸は、お酒が好きな
グルメな方なので、
食べ物の話も印象的でした。

(作中にも印象に残るような
 食べ物が出てくることが多い)

とにかく、本が好きな方なので、
一番多いのは、
本のことを書いたエッセイです。

特定の作品について綴ったものも、
たとえ、その作品が
読んだことがなくても、
興味をそそる内容になっています。

また、そういったタイプの文章で、
もっとも魅力を感じたのは、
特定のジャンルや作家について、
俯瞰した視点で捉えた記事です。

例えば、
「日本に乱歩がいてくれて本当によかった」
という記事があります。

この記事の中では、
欧米と日本における
ミステリーの違いについて、
語られているんです。

江戸川乱歩の作品では、
他人には見せられないような
人の後ろ暗い部分を克明に
描くことがあります。

こういう作品が
欧米にはなかったというのが、
著者の見解でした。

ゆえに欧米では、
そういった後ろ暗い部分に
蓋をするような文化になってしまい、

それがある種の
精神的な病にも発展しているのではないか、
という話です。

それに引き換え、
日本では「作品」として、
そういうものを表現していい
文化があります。

それは
「江戸川乱歩がいてくれたおかげだ」
と著者は言うんですね。

こういう広い視点で見た
分析というのは、

やはり、幅広いジャンルの本を
たくさん読んでいなければ、
できないことですから、

著者だからこそ、
できた分析という気がします。

何より、好きな作品について
語る著者の文は、

「本当に本が好きなんだなぁ」
というのが伝わってくる文で、

解説であっても、
何度も読み返したくなる
エッセイです。


恩田陸のエッセイから得た
「エッセイのおもしろさ」は
「好きなことを大いに語る」ことです。

いいなと思ったら応援しよう!

いっき82
サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。