音楽レビュー『Somethin' Else』Cannonball Adderley(1958)隠せぬマイルスの存在感、職人肌のアダレイ
'50年代にマイルスと競演した
アルト・サックス奏者
個人的に「秋にはジャズが合う」
と思っています。
ジャズの音色に漂う哀愁が
暮れ行く秋の空気に
なんとなく馴染むんですね。
そんなことを漠然と思っていたら、
秋にピッタリな曲がありました。
その名も『Autumn Leaves』、
本盤の1曲目に収録された曲です。
(邦題『枯れ葉』)
原曲はシャンソンの曲で、
このカバーで有名となり、
今ではジャズの
スタンダードになっています。
本盤のリーダーである
キャノンボール・アダレイは、
アルト・サックス奏者です。
'50年代には、
マイルス・デイヴィスの
グループに参加し、
のちに発表されたジャズの
大名盤『Kind of Blue』('59)
にも参加しています。
本盤にもマイルス・デイヴィスが
参加しており、
実質的にはマイルスが
仕切っていたと言われています。
ただ、この頃のマイルスは、
麻薬中毒でレコーディングを
仕切れるほど
しっかりしておらず、
また、レコード会社を
本盤の発売元である
ブルーノートから
コロムビアに移籍したことから、
キャノンボール・アダレイ名義
となったようです。
聴き込むほどにいい音が聴こえる
実は、このアルバムは、
ずいぶん前に職場の先輩に
貸していただき、
パソコンに取り込んだまま、
寝かせていたものです。
借りたので、聴いてみたものの、
当時は、あまりハマらなかったんですね。
ふと、思い出して
聴き直してみても、
なんだかあまり馴染みませんでした。
今では大好きな1曲目の
『Autumn Leaves』ですが、
最初は、イントロのメロディーが
あまり好きではありませんでした。
「ドゥンドゥドゥ、ドゥードゥ♪
ドゥンドゥドゥ、ドゥードゥ♪」
(ピアノで奏でられる
無骨なイントロ)
今は聴き込んだあとなので、
はっきりと思い出せますが、
はじめて聴いた時は、
パッとしない印象でした。
土着性の強い
野暮ったいメロディーに
感じたんですよね。
でも、聴き込んでみると、
「いいじゃないか!」
となりました。
特に、イントロ直後に
ゆっくり入ってくる
サックス、トランペットが
抜群にいいです。
そして、いかにも
マイルスっぽい、
猛々しいトランペット、
その後、マイルスの
ソロパートに入るんですが、
その哀愁のかっこよさといったら、
筆舌に尽くしがたいものがあります。
なぜ、数年前に聴いた時に、
ここに気がつかなかったのだろう、
というくらい、いいです。
いや、いろいろと
聴いてきたからこそ、
また、このアルバムを
何度も聴いたからこそ、
真の良さが
わかったのかもしれません。
隠せぬマイルスの存在感、
職人肌のアダレイ
1曲目の『Autumn Leaves』が
いいのはもちろんのこと、
2曲目以降も名曲揃いです。
②『Love For Sale』も
カバー曲です。
(コール・ポーター作曲)
ハンク・ジョーンズによる
優雅なピアノからはじまり、
ドラムとベースが入ってくると、
ゆったりとしたテンポから
速めのテンポに切り替わります。
テンポが変わったところで、
マイルスの軽快なトランペットが
舞うようにメロディーを奏でます。
表題曲③『Somethin' Else』は、
マイルスの作曲で、
モードジャズ前夜の
マイルス流バップという感じです。
④『One for Daddy-O』の作曲は、
キャノンボール・アダレイの弟、
ナット・アダレイと
ベース奏者の
サム・ジョーンズによる共作です。
ここまでマイルスのことばかり
書いてきましたが、
(実際、マイルスの音が目立つ)
ここでは序盤から
キャノンボール・アダレイの
サックスの音色が
目立っています。
マイルスのトランペットとも
また一味違った迫力のある演奏で、
リズム感とコード感が絶妙です。
⑤『Dancing in the Dark』の作曲は、
ハワード・ディーツ、
アーサー・シュワルツによる共作で、
こちらもカバー曲ですね。
こちらの曲はドラムが控えめで、
ゆったりとしたバラードです。
ほっこりさせるエンディングが
なんとも心地よいですね。
【作品情報】
リリース:1958年
アーティスト:キャノンボール・アダレイ
レーベル:ブルーノート
【アーティストについて】
1928~1975。
アメリカのアルト・サックス奏者。
’55年に活動を開始。
'50年代にはマイルス・デイヴィスの
グループでも活躍した。
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