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エッセイの研究(10・終)まとめ~何をどう書くか~
1か月ほどかけて
8冊のエッセイを紹介してきました。
(A)『延長戦に入りました』奥田英朗
(B)『テレビ消灯時間』ナンシー関
(C)『文・堺雅人』堺雅人
(D)『ないものねだり』中谷美紀
(E)『マンガホニャララ』ブルボン小林
(F)『しりとりえっせい』中島らも
(G)『オイドル絵っせい』やなせたかし
(H)『小説以外』恩田陸
最後にこの8冊を
以前、私が書いた
「おもしろい文章」の三要素に
照らし合わせて見ていきます。
私が定義した「おもしろい文章」
①興味のあること :興
②知らなかったこと:知
③発想が独創的 :独
※それぞれの要素を★で
5段階の評価
(A)『延長戦に入りました』奥田英朗
①興 ★★
②知 ★★★★★
③独 ★★★★★
私はスポーツにあまり興味がないので、
①は低めの設定にさせてもらいました。
とはいえ、好きな作家さんが
書いた本なので、★2つになっています。
たぶん、まったく知らない人が
スポーツのことを書いた本だったら、
もっと興味を持てなかったでしょう。
しかし、私の知らなかったことが
たくさん書いてあり、
内容も著者ならではの感性が
おもしろかったので、
魅力的なエッセイに感じました。
(B)『テレビ消灯時間』ナンシー関
①興 ★★★★★
②知 ★★★★
③独 ★★★★
’90年代のテレビ番組について
書かれた本なので、
私にとって興味のある内容でした。
著者は各局のテレビ番組を
隅々まで観ている方だったようなので、
知らない話も多かったですが、
今となっては有名な話も多い気がします。
独創性も高いですが、
「独創性」よりも「共感」の方が
強い気がしたので、③は★4つです。
(C)『文・堺雅人』堺雅人
①興 ★★★★
②知 ★★★★
③独 ★★★
好きな俳優が自分のことを
語ったエッセイなので、
興味深かったですが、
作品の裏話は、
観たことのない作品も多かったので、
①は★4つとしました。
舞台裏や個人的な体験がメインなので、
もちろん、知らない話が多かったです。
雑学的な部分はそれほど多くなかったので、
②は★4つです。
独創性というよりは、
穏やかな語り口と、
丁寧な文章で読ませるという感じなので、
③は★3つとします。
(D)『ないものねだり』中谷美紀
①興 ★★★
②知 ★★★★
③独 ★★★
こちらも好きな俳優が書いたものなので、
興味があって手に取りました。
作品の舞台裏よりも、
健康やグルメに関する話が多めなので、
私にとっては①は★3つくらいですね。
これも個人の経験を綴ったものなので、
知らない話が多いです。
旅行好きな方なので、そういった情報を
雑学的な部分に含めると、
②は★4つくらいでしょうか。
こちらも独創性というよりは、
何げない話を落ち着いた文体で
読ませるタイプなので、
③は★3つです。
(E)『マンガホニャララ』ブルボン小林
①興 ★★★★★
②知 ★★★★★
③独 ★★★★★
マンガのことを書いたエッセイで、
私はマンガに興味があるので、
①は★5つです。
知らない話がたくさんあって、
それらの分析にも
著者ならではの独創性が
強く感じられます。
よって、②③ともに★5つです。
(F)『しりとりえっせい』中島らも
①興 ★★★
②知 ★★★★★
③独 ★★★★
お題をしりとりで
つなぐエッセイなので、
書くテーマは統一されていません。
なので、興味のある話もあれば、
それほど興味のない話もあるので、
①は★3つです。
ただ、雑学の情報量が
非常に充実しており、
②に関しては★5つですね。
それらの情報の編み方も
著者ならではの独創性があるので、
③は★4つとしました。
(G)『オイドル絵っせい』やなせたかし
①興 ★★★★
②知 ★★★★
③独 ★★★
『アンパンマン』は子どもの頃に
親しんだ作品でした。
書かれている内容そのものも含め、
著者に興味があって、手に取った本です。
やはり、長生きした方には、
他の人には書けない話が
多く出てくるような気がします。
どんな体験もいずれも自分が
経験する話かもしれないと思うと、
他人事には思えませんでした。
そんなわけで、①は★4つです。
業界の裏話は
それほど多くないですし、
雑学的なものは少ないです。
ところが、昔の話は
知らない話が多く、
ためになります。
その経験がひしひしと
伝わってくるという意味でも
②は★4つにしました。
こちらのエッセイも
独創性というよりは、
多くの方が共感できる
語り口に感じられたので、
③は★3つです。
(H)『小説以外』恩田陸
①興 ★★★★
②知 ★★★★★
③独 ★★★★★
好きな作家さんが書いたエッセイで、
私の好きな本の話が多く書かれているので、
①は★4つです。
知っている作品や作家の話でも、
知らなかったような情報や
著者ならではの考察が発揮されています。
よって、②③ともに★5つです。
* * *
こうして見てみると、
興味のない話でも
書き方によっては
おもしろく読めるのがわかります。
そういう点では、
何を書くか、よりもどう書くのかが、
もっとも重要とも言えますね。
最後に、これらのエッセイから
得た要素をおさらいし、
自分なりの今後のエッセイの
書き方を考えてみます。
それぞれのエッセイから得たもの
『延長戦に入りました』奥田英朗
人とは違うところを見る
『テレビ消灯時間』ナンシー関
ツッコミを入れる
『文・堺雅人』堺雅人
素直に書く
『ないものねだり』中谷美紀
新しいことに挑戦する
『マンガホニャララ』ブルボン小林
異分野を組み合わせる
『しりとりえっせい』中島らも
知識を自分のものにする
『オイドル絵っせい』やなせたかし
明るく朗らかに語る
『小説以外』恩田陸
好きなことを大いに語る
それぞれを分類すると、
「何を書くか」
「どう書くか」に
大別することができますね。
・人とは違うところを見る
・ツッコミを入れる
・好きなことを大いに語る
これらは「何を書くか」の
部分にあたります。
・素直に書く
・異分野を組み合わせる
・明るく朗らかに語る
これらは「どう書くか」の
部分にあたりますね。
そして、このような観点や
手法を駆使しても
行き詰まった時は、
・新しいことに挑戦する
・知識を自分のものにする
この二つが必要になりそうですね。
これが本連載記事の総まとめです。
今後はこれらのことを念頭において、
エッセイも書いていけたらいいなぁ
と思っています。
想定より長い連載記事に
なってしまいました(^^;
最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
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