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勉強初心者に本居宣長が教えたこと8

以下の文章は『勉強初心者に本居宣長が教えたこと7』の続きです。
最初から読む場合はこちらから『勉強初心者に宣長先生が教えたこと

登場人物
先生:本居宣長(もとおり のりなが)〈享年71歳〉
生徒:春ひみの(はる ひみの)〈高1〉
原文を参照できるよう、本文内に「岩波文庫『うい山ふみ 鈴屋答問録』本居宣長著 2007年4月13日第39刷」のページ番号を記載しています。
※本作に登場する宣長先生は、あくまで実際の本居宣長をイメージしたキャラクターとお考え下さい。

六国史ってなに?

岩波文庫『うい山ふみ 鈴屋答問録』35~38ページを参照

ひみの
「先生、古事記以外に日本の歴史について書いている古典は無いんですか?」

宣長
「もちろんあります。有名な所だと六国史というのがありますね」

ひみの
「ろくこくし?」

宣長
「りっこくし! 神々の時代から清和天皇の時代、西暦で言うと887年までの日本の歴史が書いてある6冊の歴史書で『日本書紀』『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』があります。日本書紀はこれまでの話でよく出てきましたね。

ひみの
「なんでこの6冊だけ特別なんですか?」

宣長
「この6冊は国の事業として作られたからです。つまり、当時の政府が認めた正式な歴史書ということですね。そのため国史とも言います」

ひみの
「じゃあ、古事記より大切なんじゃないんですか?」

宣長
「たしかにそのように見えるかもしれませんが、重要なのは文章の書き方です。以前お話したように、古事記は万葉仮名、日本書紀は漢文で書かれています。そのため、日本書紀の内容には中国的な考え方が反映されている部分が多い。だから、まずは古事記で大和心をしっかり固めておく必要があります」

ひみの
「じゃあ、やっぱり古事記が一番内容が良いんですね」

宣長
「いや、実は古事記にも足りない所がある。それは神武天皇以降、つまり神々の時代より後の内容が少ないということです。その点については日本書紀の方がずっと詳しい。それに続日本紀の宣命にも注目してみて下さい」

ひみの
「せんみょうってなんですか?」

宣長
「宣命を一言で言うなら天皇の命令です。六国史の本文は漢文ですが、宣命は宣命体という独特な文章で書かれた日本的な文章です。特に続日本紀の宣命は日本の古い言葉を残しているのでよく読むと良いでしょう」

ひみの
「国が作った歴史書以外に、先生のおすすめはないんですか?」

宣長
「そうだね、水戸光圀公が編集された『大日本史』なんて良いと思います」

ひみの
「黄門様ですね」

宣長
「そうだね。先生は直接は知らないけど、この本は幕末の尊王思想に大きな影響を与えたらしいです」

ひみの
「よく、これまで見つかっていない古文書が見つかったとかニュースになりますけど、そういうのは先生知らないんですか?」

宣長
「今も昔も歴史に興味を持つ人は沢山います。これは良いことなのですが、反面、人の注目を集めたいのか嘘の歴史書を出す人もいます。こういう本はよく勉強している人にはすぐばれるけれど、初心者は騙されやすいので気をつけましょう」

ひみの
「はーい。もっと勉強しまーす」

あとがき

ひみの
「先生、日本の歴史を勉強するには沢山本を読まなきゃいけないんですね」

宣長
「そうだね。ただ、以前話したようにいきなり原文を読むのは無理なので、最初は人の書いた解説本から入るといいね」

ひみの
「なにかいい本ありますか?」

宣長
「古事記伝」

ひみの
「またかよ……」

おわり

参考図書
『うい山ふみ 鈴屋答問録』本居宣長著 岩波文庫 2007年4月13日第39刷
『日本の思想15本居宣長集』吉川幸次郎編 筑摩書房 1969年3月30日初版

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