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【壱岐新報2021.4.2】財政を監視する監査委員に疑問

 市長が発した、壱岐市の財源不足の問題は市長や市職員、市議会議員のみならず、市の財政などをチェックする監査委員のあり方にも疑問が生じた。市政に携わる各職務が機能していなかった可能性も高まる。市民は補助金削減や住民サービス低下などを受け、市政への反発の声もあがっている。

監査委員も財源不足を指摘せず

昨年9月の市議会で「市の財政は適正」と監査委員3人が判断
 市議会3月会議で、本市の財源が不足していることがわかり、住民サービスや高齢者福祉、市民団体への補助金減額などの予算削減が始まった。白川博一市長は令和3年度を「財政立て直し元年」として、市民に大きな痛みを伴う行財政改革を断行することを決めた。その流れの一環だ。先月12日の予算特別委員会で白川市長は、財政計画について勉強不足だったことを認め、自身の責任として釈明した。しかし、昨年9月に開かれた市議会9月会議で、市の財務や事業を監査すべき「監査委員」も、財政状況を見誤り、気が付かなかった可能性があることが分かった。

 市議会2月会議から同3月会議にかけて、本市の財政状況がひっ迫していることが発覚し、市民の間で市政に対して不安と不信感が募る事態が起きている。市議会3月会議で、白川市長は「財源不足のため、従来通りの住民サービスを維持していくことが困難になった」と述べた。
 町田正一議員は「なぜ、この時期になって今回のような補助金を削るなどの事態が起きたのか」と問い、白川市長は「中期財政計画の中身について、私の勉強不足であった」と答え、財源不足を招いた事態には責任があると自らも非を認めた。この発言は、今年に入り初めて市の財源が不足していることを認識したように受け止められる。

監査委員も財政の見誤り、見落としか
 同様の財政に関する事案は、昨年9月に開いた市議会9月会議の議案で、報告事項として挙がっていた。当時の議案では、「令和元年度市財政健全化判断比率及び資金不足比率の報告」として、市は監査委員に提出し、委員らが市の財政について内容を確認している。
 市が監査委員に対して提出した報告書は、令和元年度の健全化判断比率や資金不足比率の状況を示したもの。実質公債費比率では、早期健全化基準は25㌫以上が危機基準とされ、これに対して本市は6・4㌫、将来負担比率では、早期健全化基準は350㌫以上が危機基準とされ、これに対して本市は38・3㌫と記載される。
 昨年12月に市が公表した中期財政計画に同様の記載があり、先月12日の予算特別委員会で白川市長の釈明にもあった。この時、白川市長は「これらの指標を見て、財政はまだ大丈夫と錯覚した」と述べ、自らの勉強不足としていた。
 市が提出した報告書から市の財政健全化判断をした監査員らは、「算定基準となる書類は正確に作成され、健全化判断比率と資金不足比率はいずれも適正であると認め、健全化基準の範囲内である」とした。一方で「今後は、合併特例債などの償還により、実質公債費比率と将来負担比率の悪化が懸念される」として財政の不安要素を記載してはいるが、これ以上の監査は進められていなかった。
 しかし、結果として令和3年度当初予算で約18億円の基金の取り崩しによる予算編成を余儀なくされる形となった。基金取り崩しに頼らざるを得ないことから、住民サービスや補助金などを削減する事態も起きている。
 市中期財政計画では、現在は約10億円ある財政調整基金が令和6年にはわずか6千万円にまで減る見通しがある。現在、本市は基金の取り崩しによる財政運営に頼らざるを得ず、このままであれば5年後以降の財政はさらにひっ迫する事態となる。このことから、市は住民サービス低下や補助金などの減額により乗り切ろうとしている。

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