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短編小説 足切り

秋風が冷たく頬を撫でる夕暮れ、ポストの中に一通の封筒が入っていた。その冷たい感触に、何か不吉な予感が胸に広がる。

封筒の表には『審査結果在中』と、無機質な文字が並んでいる。何度も挑戦し、何度も打ち砕かれてきた記憶が頭をかすめるが、どこかでまだ望みを捨てられない自分がいた。


家に戻り、息を整えながら封を切ると、一枚の紙が出てきた。


審査の結果、今回は残念ながら落選となりました

                  〇〇芸大


その冷たい文字が、胸の奥に突き刺さる。何度も目にしてきた言葉なのに、今回はやけに重く感じられる。「落選」の二文字が心にじんわりと染み入り、自分の存在が無に帰していくような感覚が襲ってくる。机の上に広げられた原稿に視線を向けると、そこには何度も書き直した跡が残り、私の魂が刻まれている。しかし今、それはただの紙とインクにしか見えない。

ふいに、これまでの努力が報われる日は来るのだろうかと考えてしまう。幾度も打ちのめされ、立ち上がってきたけれど、繰り返される挫折に心が疲れ果てているのを感じる。ずっと夢見てきた未来が、こんなにも遠い。

「もう、無理なのかもしれない…」

無意識に口をついて出た言葉が、静まり返った部屋に染み渡る。自分が無力であることが、これほどまでにつらいとは思わなかった。この原稿を、もう何度目かの未完成の夢を抱えたままゴミ箱に放り投げる。私の書いたものは、誰の心にも届かなかったのかもしれない____そう思うと、ただただ虚しさが込み上げてくる。


椅子に腰掛け、目を閉じると、過去に感じた希望が消えていくのを感じる。私の書く言葉は、ただ無力でしかないのか。この手が、どんなに想いを綴ろうと、届かないのだろうかと自問してしまう。締め付けられるような孤独感が、部屋の中に静かに広がっていく。

でも、それでも、何かが私を止めさせようとしない。胸の奥でまだ微かに灯るものが、手放したくないという思いが、かすかな残像のように心に留まる。たとえ無駄だとしても、書き続けることが私の生きる証であるなら、それを拒むことさえできない気がした。

私は机の上で一枚の紙を手に取り、ただ、目を伏せる。この孤独の中で書き続ける自分が、果たしていつまで耐えられるだろうかと、心の中で問いかけながら。

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