見出し画像

11月という気持ち

    たたみかけるなあ、と思う。11月になると。
    ハロウィーンが終わり、次はクリスマスで、それから間もなく大晦日、お正月。私は学生なので、お正月が明けたらまた少し大学へ行って、それもすぐ終わって、梅の花が咲いて、チューリップが咲く。
    7月8月あたりの、いつまでこの暑いのは続くんだという停滞感とは真逆に、秋や冬には飽きることなく春が訪れる。だから本当に丁寧に、この寒いのを味わいたいと思う。
    さむ、さむ、と着込んで、あたたかい飲み物を両手で持ってフーッとやるのが好き。こたつに脚だけじゃなくて両手を入れるのも。宇宙を生きてるんだって感じがする。寒くて、何もなくて、でもそれが全てというイメージがある、宇宙。何かあるってなんだろう。何があったら、あることになるんだろう。いつかはなくなる文明に住んでいる。
    宇宙から見たここってミクロの世界だし、私が普段は微生物のことなんか忘れて生きているように、宇宙全てを視野に入れたら、地球の文明なんてないみたいなものなんじゃないか。ちっぽけとかだから悩みがなくなるとかそういう頭からっぽな話じゃなくて、宇宙の取るに足らない一構成物に過ぎないという事実がとても心地よいし、自分をそういうものと認識したまま、人間として生きる上では無駄なことばっか考えて生きていきたい。
    最近、サン・テグジュペリの『人間の土地』を少しずつ読んでいる。サン・テグジュペリ、本当に文才がありすぎる。『星の王子さま』を読んだだけではわからなかった。サン・テグジュペリから見た地球が、人生が、美しい。航空士として生きて、多くの同僚が命を落としていてもなお、悲しみよりも世界への期待を胸に抱いて飛行を続け、没後も私達にこの世の美しい景色を教えてくれるのだ。彼の見た美しい景色というのは、安全な旅行で見に行くウユニ塩湖やサンセットビーチとは全く違う。生きて帰ることができるかもわからない、今ここで死ぬかもしれない、そういう状況でただひとつの救いになる美しい景色。日に日に技術が進歩し減っていくそれを言葉で、後世に遺してくれたサン・テグジュペリには頭が上がらない。
    これが美です、とされたものを、そうですか確かに美しいですね、と受け取るのは好きじゃない。ありのままの道を歩いていく途中、一瞬キラッと光を反射した何かの前で一々足を止めて、(これは美しいな)とぽーっとしてしまうような日々を、外側がどんなに忙しくなったって、続けていけたらいいなと思う。

いいなと思ったら応援しよう!