母88歳。図書館に再デビュ~♡ 人生の目標できました...。
88歳で図書館に再デビューした母は、本を通じて人生を見つめ直し、90歳になっても新しい情報を吸収し続けています。認知症がありますが、「今できることを大切にする」日々を重ね、新たに「人生を楽しんで生き切る」という目標が生まれました。
長かった・・・再デビューまでの道
母は今年で90歳になりました。三年前の87歳の夏に本格的な介護が始まって、荒れ果てていた室内を整理整頓し、落ち着いた暮らしを取り戻すことができたのがその年の秋でした。心機一転、介護サービスを利用しながら体と暮らしを整える生活が一年ほど続きました。
趣味のグラウンドゴルフに夢中
母はアルツハイマー型の認知症があって要介護1の状態。一人暮らしでしたが、趣味のグラウンドゴルフが大好きで、練習に参加するために一人で道具を担いでバスに乗り、なんの問題もなくグラウンドに通っていました。「ゴルフはせんでも(しなくても)みんなと会って話せたら楽しいんじゃ♡」と、同世代のお仲間との交流をそれはそれは楽しんでいました。
冬はコタツでテレビ三昧。。。
木枯らしが吹く季節になりました。練習がパタンとなくなってしまいました。メンバーの平均年齢は80代。身体への負担を考えたら休止になるのは当然なのでしょうが・・・社会とのつながりがなくなった母は、一日中コタツに入ってテレビと仲良くする生活になってしまいました。
図書館は 「…いかんでええ…」
「このままじゃあっか~ん!! 」と危機感を感じたので、なんとか外の空気を吸ってもらおうと、「図書館に行ってみない?」と誘ってみました。しかし、返事は・・・「…う~ん…いかんでええ…」と全く気乗りしていない様子でした。
や~っと乗り気に・・・
数日後・・・「庭にきれいな鳥が来てなぁ~♡なんて名前じゃろうか ? 」と電話で聞いてきたので、これはチャ~ンス !! とばかりに、「ねぇねぇ、図書館には野鳥の図鑑がきっとあるから、借りてきてよ」とお願いしたら・・・「…ほぉ~ん…そうじゃなぁ~…」と母。もう一押し・・・。
「お母さんが好きな『相田みつを』さんの本もたくさんあるよ。読みたくなぁい?」と聞いたら、「ふぅ~ん・・・ほ~んなら行ってみようかなぁ…」とよ~うやく行く気になってくれたのでした。
ドキドキの図書館再デビュー~準備編~
ヘルパーさんにサポートをおねがい
母は一人でバスに乗ることはできても・・・図書館に行くのはものすご~く久しぶりのはず…。貸し出し手続きもド~キドキするはず…。借りた本を持ち帰るのも一苦労のはず…。
お世話になっている小規模多機能のヘルパーさんに、送迎とつきそいをお願いしました。
本のセレクトは司書さん
図書館の司書さんに母の好みを伝えて、あらかじめ本を準備していただくことにしました。遠距離介護なので電話でのやりとりしかできなかったのですが、司書さんは快く応じてくださいました。「一日2冊の本に目を通すことができるとしたら、二週間の返却期限内に14冊は借りられるから、こちらで選んでおきましょう」と言ってくださいました。・・・ありがたかったです。
『相田みつを』♡らぶ
母が昔から好きな『相田みつを』さんの詩集をまずはセレクトしていただいて、その他は、季節の花や野菜、昔家にいた猫や犬を思い出してもらおうと写真集をメインに選んでいただくお願いをしました。
目でサラッと楽しめる本
「文字は少なく、簡単で分かりやすいもの、写真やイラストがたくさんあるもの」とコンセプトをお伝えしました。本格的な介護が始まる前後の母は、認知症があることで気分が凹みがちでした。本と向き合う心のゆとりがない暮らしが続いていました。図書館の再デビュー後に最初に借りる本は、「簡単で見て楽しめる」ものが良いと考えたのです。
本で好奇心がムクムク
二週間に一度とはいえ、『継続は力なり』。ともかく、母が興味の持てそうなジャンルを片っ端から借りて行きました。
「庭に来る野鳥がかわゆうて(可愛くて)」と言うと、「野鳥観察図鑑」。プチトマトを育てたと聞くと「夏の野菜、プランターで育てるコツ」のような本をオーダー。昔好きだった編み物を思い出してほしくて「簡単かぎ針編みニット」のような本も探していただきました。
母はいろんなジャンルの本を読み続けてきましたが、その間ずっと母が読みたがったのは「相田みつを」さんの詩集でした。「胸にしみるんじゃ♡」と言いながら借り続けて、図書館の蔵書を5周ぐらいは繰り返し借りたと思います。
本で人生を見つめなおす
母・・・初のセレクト♡
年明けのバタバタで、司書さんにセレクトをお願いするのをうっかり忘れたことがありました。「今日は自分で選んで借りてきてくれない?」と聞いてみたら、母は「そうじゃな…」とす~んなり応じてくれました。自分で選ばないといけないのなら、「今週は借りんでええ(借りなくていい)」と言われると思っていたので、うれし~いビックリでした。
司書さんや同行してくださったヘルパーさんと館内を歩いて探しまわり、母自ら手に取って選んだのは、文字がビ~ッシリの本ばかり。テーマは一貫して「人生ふりかえり本」。「ちゃんと読みたいから」と冊数はぐんと絞って、二週間で4冊ほど借りるようなりました。
『100歳まで生きてみたい』…母がひきつけられた一冊
母は今90歳。100歳まで生きたいと願っています。最近、母が図書館で借りてきたのは『100歳の100の知恵』という本です。『101歳の生活評論家が伝え残したい、古くて新しい暮らしの知恵100』という内容の本です。『旬の料理のレシピから、時短家事の方法、クヨクヨしない考え方』などが書かれています。
とても面白かったようで、「まだ半分しか読めていないから、もう二週間借りることにしたんじゃ」と言うので、「どんな内容か教えて」とタイトルを読み上げてもらいました。
母といっしょに楽しみました
『時々恋しくなる「あの店のあれ」』・・・お母さんが今でも食べたくなるお店ってどこかしら・・・。『見直したい さらし木綿』・・・うんうん、90歳、100歳ともなるとやっぱり木綿が一番よね・・・。
『夏の「駆けつけ一杯」はレモンミント水で』ありゃりゃ~、なんともハイカラなドリンク・・・。お母さんは麦茶よね・・・。
『自分を癒すためにプチ家出をしてみた』・・・ん?ん?ん?・・・。あまりに予想外のタイトルに頭がぐるぐるしている間に、母は「あぁ、これなぁ・・・♡」と言ってグフフと笑います。母にも一人になりたい時があったのかな・・・。それってどんな時だった???・・・と聞きたくなったけど・・・ドキドキしてきたので黙ってうなずいていた私でした。
私の中にあった、認知症がある人への誤解と偏見
まぁ、ともかく・・・こ~んなに丁寧に本を読む母に戻れるとは、思ってもいませんでした。母には認知症があって、短期記憶がとても苦手になってきています。私の中に「認知症があると、難しい本は読めなくなる」、「すぐに忘れてしまうのかも…」などと、認知症がある人への誤解と偏見があることに気がつきました。
『相田みつを』さんの本を母は何度も借り直していましたが、繰り返し読んで『みつを』さんの愛の言葉を心のヒダにポトリポトリと落として貯めていたんじゃないかしら・・・。ふりかえってみると、母は『みつを』さんの本を読むたびに、「いろいろ気づくことが多てなぁ~」と感動のため息混じりに話していたのを思い出しています。
俳句を詠みはじめるかも・・・
昨日母とFaceTimeで話していたら、「俳句の本を読んどるんじゃ」と言うので、「詠んでみてよぅ~」とお願いしたら、「そんなにすぐにはできんのじゃ」と言われました。以前は好きでよく句を詠んでいたと聞いていたのをふと思い出してオファーしたのですが、もう少し時間が必要のようです。
時間をかけて、ゆ~ったりま~ったり、いろんに本の中のいろんな言葉と戯れたら、ポッと新たな句が生まれるかもしれません。そのときを楽しみに…の~んびり待とうと思います。
「100歳まで楽しんで生き切りたい」
認知症があっても、「今興味あること」を本から吸収し続けて、母の心はふんわり瑞々しく若返りました。100歳まで母はどんな進化を遂げるのでしょうか。
介護が始まったばかりの頃にはサナギに戻っていた母の心は、図書館の本でホップステップジャンプして、「100歳の最期まで人生楽しんで生き切る」という目標ができた蝶に生まれ変わりました。
人生、いつからでも、何度でもやり直せる。人は最期まで心を耕し続けられるし、心豊かな暮らしを取り戻せる・・・母の背中をみて感じました。私も人生う~んと楽しまなくっちゃ!!
今までのnoteはこちらのページにまとめています。自己紹介もしています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?