母90歳。なつかしの出会いに胸キュン♡
母は地方でひとり暮らしをしています。週一回、ヘルパーさんに連れていってもらうスーパーで、買い物するのをとても楽しみにしています。
なつかしの味につながる幸せな記憶
味につながる幸せな記憶
『小梅』 ちゃん、みーつけた !
母とFaceTimeをしていたら、「こんなん見つけたんよぉ~♡」と嬉しそうにアメの袋を見せてくれました。なつかしの『小梅』ちゃんではあ~りませんか !?
そういえば、幼稚園のころによく食べさせてもらっていました。幼稚園の送迎バスの順番待ちで、園の体育館に体操座りして、小梅ちゃんのアメを一つほおばって、先生の読み聞かせに耳をかたむけていました。
きっと当時の「流行の味」だったのかもしれません。園から帰っても、無性に食べたくなって、母に「もっと、もっと、たくさん食べたいな…」とせがんで買ってもらった記憶があります。
小梅ちゃんのアメには「初恋の味」ってキャッチフレーズがあったような・・・。甘酸っぱいピンク色のアメは乙女心を刺激します。母の心にもキュンキュン響いていたのかな…。
『栗わらび』 にズキュ~ン ♡
次の週のお買い物では、母は『栗わらび』に出会えました。「プルプルで美味しそう♡」と食べるのを楽しみにしていたと、スーパーに連れて行ってくださったヘルパーさんが教えてくれました。
後日FaceTimeで母に確認したら、「こんな小さなもんじゃったんよ。あっという間じゃったわ」と親指と人差し指で3センチほどの大きさを作って見せてくれました。れ れ れ ? ? ? ・・・ヘルパーさんが送ってくれた写真は倍以上のサイズ…なんだけどな…。あまりに美味しくて、ぺろっと食べたから、サイズなんて記憶に残っていなかったのかな…。
昔の思い出がギュッ
それもそのはず、わらび餅と、アンコと、栗は、母の好きなものトップ 3 。そして、私の幼い頃の定番のおやつでもありました。
夏になると冷蔵庫にはわらび餅が気がつくと入っていましたし、あんこ餅を「三つも食べてしもうた」と後悔するのが年末年始の母の恒例行事でした。甘栗は皮をむくのに時間がかかりますが、指先を茶色の渋に染めながら皮をむき、夢中になってパクパク食べ、母とどっちが早くたくさん食べられるか競争したこともありました。
オカ~サ~ン、アリガト~
母はきっと「あぁ…美味し~い♡」と感じたものを、私にもたくさん食べさせてくれたのですね。なんだかジワワ~ンと心がゆるみました。
人まかせって、味気ない
介護が始まってからの母の買い物は、ヘルパーさんに「ゴミ袋を買ってきてもろうた」とか「お米がなくなってお願いしたんじゃ」などの、日常生活で必要最低限の品ばかりになりました。
自転車との別れ
母はもともと出歩くのが好きな人でした。近所に住む叔母と、自転車に乗ってスーパーに買い物によく出かけていました。ところが、本格的な介護が始まってから、一人で買い物に出かけることがほとんどなくなりました。3年ほど前からのことです。
自転車に乗って転倒したことがあり、無傷でしたが、周囲からは「もう乗らないで」と散々止められたそうです。でも、自分で荷物を持って家まで運ぶのは、筋力が衰えた母には重労働で、「途中でな、休み休みして、ゆっくり帰るんじゃ」と聞くと、そばにいてやれないもどかしさが込み上げてきました。
認知症のこと
認知症があることで、お金のカウントが難しくなってきたのことも、母の買い物に行きたくない気持ちが高まった要因だと思います。
レジの支払いで「間違えたらどうしよう」とか、「時間がかかって混乱してモゴモゴしたらどうしよう」などと、不安を感じていたのでしょう。
遠距離介護なので母のお財布の中に十分なお金があるか心配で、「いくらあるのか数えて教えて」と頼んだことがありました。母はものすごく焦っている様子で、今までの3倍以上の時間をかけて数えていました。「千円札が・・枚で、五千円札が・・枚。一万円札は・・・枚、百円玉は、えーと・・・枚」と電話越しに聞こえてきたときは、とても切ない気持ちになりました。
便利は不自由
人におまかせの買い物
「買い物はもうええ、頼んだらええ」と切なそうに言っていた母の顔を思い出します。小規模多機能で暮らしを支えていただくようになり、ヘルパーさんに買い物を頼んだり、私がネットで注文して必要なものを届けるようになりました。
普段のちょっとした買い物から、ちょっと大がかりな収納家具まで、全て周囲に委ねることが可能な暮らしになりました。一見、いいじゃん、便利じゃん、安心じゃん、と思える暮らしの変化ですが、これは母にはものすごくダメージが深かったようです。「お人形さんのように大人しゅう(大人しく)言うことを聞いておったらええんじゃろ・・・」と切なげに言うようになりました。
手にとって自分で選びたい
母が困らないようにと先回りしてあれこれ注文して届けることは、良かれと思ってしたことでしたが、母は心の底で ”渇き” を感じていました。自分で手にとって品さだめをして、「これっ! 」と思えたものを買い物かごに入れて、レジで支払いをする…「あのころ」の買い物をまた復活させたかったのです。
『 KAERU 』 のプリペイドカード
そんな時に出会えたのが、KAERUというプリペイドカードです。
認知症のある母が安心して買い物を楽しめる工夫がたくさん詰め込まれていました。事前にお金をチャージしておけば、その範囲内で買い物を楽しめます。マスターカードと連携しているので、ほぼどの店でも利用可能です。しかも、1日の利用限度額をあらかじめ決めておけるので、使い過ぎを防ぐことができますし、急に「美容院に行きたい」なんて気分になっても、私がネットで利用限度額をアップすることも即座に可能な仕組みです。万が一失くしたとしても、すぐに私がネット上で利用をストップすることができるので、不正利用の心配もありません。
問題なく使えました
母がKAERUカードを使いこなせるのか心配でしたが、もともと新しいものは「楽しい・便利」と好奇心旺盛にチャレンジする性格だったので、すぐに「こりゃええ♡」と気に入ってくれました。
スーパーの買い物が楽しみに
自分で「あぁ、これ食べたいなぁ~♡」とスーパーの棚で見つけて手を伸ばし、レジに運んで買い物して、食卓で味わう・・・この工程を踏んでからの一口って、本当に何倍も何十倍も美味しく感じるはずです。
買い物には幸せがつまってる
買い物って、元気なうちは当たり前のことのように感じていますが、母のように高齢になったり、一人暮らしをしていたり、認知症があって難しいことが増えてきたりすると、「お買い物に行ってこよ~っとっ !! 」と気軽に出かけられなくなります。すると、それまで当たり前に自由にできていた買い物が、とてつもなく幸せな行為だったと気づくようになります。
社会資源をフル活用
我が家は遠距離介護をしています。しかも、私は一人っ子です。それでも、母は普段の暮らしの中で買い物を楽しむことができるようになりました。小規模多機能のヘルパーさんに買い物に連れて行ってもらい、支払いはKAERUカードを使うので現金を扱わなくてすむようになったことで、不安や心配から解放されて、安心して買い物を楽しむことができるようになったのです。
買い物で社会とつながる
「今日は小さい子どもさんとおしゃべりしていました」、「昔のお友達にばったり再会してうれしそうでした」・・・ヘルパーさんが買い物のたびに、母の様子を教えてくれます。
スーパーは地域の社交場のようなもの。特に夕方に近い時間は「今夜のおかずは何にしよう・・・」とたくさんの方が訪れます。母にとって買い物は社会とつながれる大切なチャンスです。買い物帰りの母は、いつも声がシャンとしているのです。
認知症があっても、歳を重ねても、気が向いたらスーパーでチャチャっとお買い物ができる喜びは、ず~っと味わってもらいたいものです。母が懐かしの味や人との遭遇に、私もいっしょに胸キュン♡しています。次はどんな出会いがあるのかな~~~?! 楽しみです。
今までの母の介護に関するnoteと、自己紹介をまとめています⇩