『認知症のある人と向き合う』 やさしい気持ちの循環がはじまるヒント ⑫~⑮回
認知症のある母の気持ちを理解することができたら、今までよりもずっと優しい気持ちで寄り添うことができるようになりました。このシリーズは認知症のことをもっと理解したいと思っているあなたにお届けしします。
精神科医の大石 智(さとる)さんの『認知症のある人と向き合う』という本をもとにご家族の気持ちを理解して「やさしい気持ち」で向き合えるヒントを探っていきます。
今までTwitterやstand.fmのアプリでシェアしてきたインタビューをまとめました。「困ったな…どうしよう!?」というときのヒントにしていただければうれしいです。
ラジオ感覚でお楽しみいただけるように制作しています。BGMが気になる方のために「ひかえめVer.」も準備しました。お好みでお選びください🎵ゆるりと、ゆったりとお楽しみください♪
_________________________________________________________________________________
⑫ 認知症のある人の得意なこと苦手なこと(アルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型)~誤解されない会話のコツ~
母には認知症があります。
イライラしている母との会話は難しいなぁ…と感じてしまいます。こちらはそんなつもりで言っていなくても誤解されて会話が中断されることがあるのです。
母がイライラしているときはどんな気持ちなのか、誤解されない会話をするにはどうしたらいいのか、スムーズに会話ができるコツを教えていただきました。
_________________________________________________________________________________
⑬ 認知症のある人の安心感UP~介護サービスの活用~
我が家の遠距離介護は介護サービスにガッツリ頼っています。今では絶大な信頼を寄せている母も、最初は「頼りたくない…」とものすごく抵抗していました。
どうして介護サービスに頼りたくないのか? 頼ったらどんなメリットがあるのでしょうか?
介護サービスの利用に抵抗がなくなるように、「ケアの社会化」がすすむといいな
介護が始まったばかりのときは介護保険のことも、介護サービスのこともチンプンカンプン。「なんだかいろいろ支えてくれるサービスがあるらしい」という程度しか知りませんでした。色々な制度を利用できると知り、パンパンに張り詰めていた心がゆるんだのを思い出します。
介護を家族だけで抱えるのには限界があります。一対一で向き合っていると心が苦しくなることもあります。母を一人で支えることは出来ませんし、遠距離介護は無理だと感じています。様々なサービスを利用することで、母の暮らしは落ち着いて体調管理も万全の体制を整えることができました。
いっぽうで、介護は家族がするものという思いから、介護が理由で仕事を辞めたり趣味を諦めた方もたくさん見てきました。介護は家族がするものという周囲からの無言のプレッシャーもそこかしこにあると感じています。
出産や子育てで公的な制度をを当たり前に利用できるように、介護も専門家に抵抗なく頼ることができるようになるために、「ケアの社会化」がもっともっと進むといいなと思います。
_________________________________________________________________________________
⑭ 認知症のある人の前で話すメリット~介護の認定調査・診療のとき~
母(89)の様子を専門家の方に伝えるときには、母を傷つけないようにと言う思いから、母の様子を伝える時にはコッソリ根回しの電話をしていました。実はこれ「逆効果だった…」と知りました。介護の認定調査や診療の時には認知症のある人の前で話す方がメリットがあるんだそうです。
母の笑顔が増えるケアプランで娘のわたしも幸せになれました
母抜きで専門家の方に相談していたら、「私の介護の困りごとを解決するためのプラン」になってしまいました。あと2年もすれば在宅介護は限界になるだろうと、周囲の専門家の方々から言われていました。
母に「どこで暮らしたいのか」「どこでどんな最期をむかえたいのか」と、膝を突き合わせて尋ねてみました。すると母は…「ずーっとお家で暮らしたい」とポツリ…。プランを見返してみたら、施設に行くまでのつなぎの支援で成り立っていると気がつきました。再度ケアマネージャーさんに相談して「母が望む暮らしの実現」のためのプランに変えていただきました。
認知症がある母にとって断捨離は混乱のもとになると心配されたりもしましたが、不要なものを母とタッグを組んでガッサリ処分し住宅改修をして、家具もコンパクトな母の暮らしに合ったサイズのものに買い替えました。母は「とっても幸せ…100歳まで生きられそう」と新たな暮らしを気に入ってくれました。
うれしいのは母の笑顔がぐんと増えたことです。母の心が安定すると私の遠距離介護の心配も減り、心にゆとりが生まれました。母の後ろ姿は私の未来の介護につながると感じています。子供たちの世代にできる限り軽やかな介護のバトンを渡せるように、母の介護で試行錯誤の毎日です。_________________________________________________________________________________
⑮ 認知症のある人のイライラと寂しさの深~いカンケイ
母(89)の元へ帰省したときのこと。どんなに楽しく過ごせても、私が帰ると母はプリプリイライラ。戸惑いましたが、しばらくして母の寂しさに気がつきました。素直な気持ちの表現って…難しいですよね…。こんなときどう寄り添えるのか、お話を伺いました。
伝え合うこと・理解し合うこと
さみしいな…くやしいな…こまったな…気弱になっているときこそ素直に気持ちを表現するのが難しなぁ…と思います。言葉に直して伝えたくても無理なときってあるのです。感情をもてあましてしまうこんなとき、イライラ…プリプリ…。わたしもよくあります。
母が怒りっぽくなったときは、何がなんだか理由が分からず戸惑ったり、下手なことを母に言って衝突して心がペシャンコになっていました。
大石さんに教えていただいた「気持ちを想像して寄り添う」ことをしてみたら、素直な気持ちを伝えてくれる母になりました。
私にとって、介護が始まっても母は母。気持ちは素直に伝えています。親娘で気持ちを伝え合い、理解しあえるようになれたら、やさしい気持ちで向き合える時間がぐんと増えました。今では、支えて支えられて…の肩の力が抜けたいい塩梅な親子関係で介護を続けています。
_________________________________________________________________________________
■ プロフィール 精神科医 大石 智 (おおいし さとる) さん
北里大学医学部精神科学講師 / 相模原市認知症疾患医療センター センター長
1999年 北里大学医学部卒業 北里大学東部病院精神神経科にて研修
2001年 駒木野病院精神科
2003年 北里大学医学部精神科学助教
2019年 北里大学医学部講師 相模原市認知症疾患医療センター長
日本精神神経学会専門医・指導医
日本老年精神医学会専門医・指導医
日本認知症学会専門医・指導医
著書 『認知症のある人と向き合う』 -診察室の対話から思いをひきだすヒント-
『認知症のある人と向き合う』
やさしい気持ちの循環がはじまるヒント
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?