いきものがかりが海老名に帰ってきた! 「2⼈体制で”STAR”トしまSHOW!!」ライブレポート
デビュー前から路上ライブを行っていたゆかりの地・海老名のビナウォークで開催されたフリーライブ「2人体制で“STAR” トしまSHOW!!」。2人体制になってからも「THE FIRST TAKE」や「ミュージックステーション」に出演したりとメディア越しに姿を見せてくれていた2人だが、ライブを行うのは2021年9月、「JFA100周年セレブレーション」にサプライズ出演して以来約1年半ぶりだった。
ライブの開催が発表されると、抽選制の優先観覧エリアには応募が殺到。さらにライブ数日前、水野の手書きチラシが海老名周辺で配布されたことが話題になるなど、当日を迎える前から盛り上がっていたのは、みんながいきものがかりのライブを待ち望んでいた証だろう。
晴天に恵まれた5月3日、久々のライブを見届けようとビナウォークには8000人が集まり、Amazon Music Japan Twitch channelで行われた生配信には約10万人が訪れた。
会場には、いきものがかりの名前が入った歴代ツアーグッズのタオルや、イッキーモンキーのぬいぐるみを持っているファンの姿も多い。開演に向けて期待が膨らむ中、定刻になると、観客の拍手と歓声に迎えられて吉岡、水野が登場した。
吉岡「みなさん、どうもこんにちは。お久しぶりです。いきものがかりです!」
水野「海老名・厚木のみなさん、そして全国各地から今日は来てくださっていると思います。本当にありがとうございます!」
と挨拶をしながら、近くにいる人はもちろん、奥の方や2階、3階、駐車場にいる観客にも手を振る2人。演奏の前にまず水野が、久しぶりのライブは地元で、ゆったりやれたらいいんじゃないかと思ったと説明。この日はバンドも入れず、シンプルな2人編成での演奏。地元ならではのリラックスしたトークとともに計5曲を届けた。
「ちょっと緊張してるね」と笑いながら水野がピアノを弾き始めると、客席から手拍子が起こり、軽やかなリズムに乗って吉岡が歌い始める。
1曲目に選ばれたのは「笑顔」。2013年のリリース以降、大切な場面で披露されることも多い楽曲で、例えば2020年春にリモートパフォーマンス映像が制作され、なかなか会えないコロナ禍にメンバーとファンの心を繋いだことも記憶に新しい。2022年にファンクラブ内で実施されたアンケートでは「この曲の歌詞が好き!」部門で1位を獲得するなど、ファンからも愛されている曲だ。時に観客に手を振りながら、時に一緒に手拍子をしながら、時に目をつむり風に吹かれながら、伸びやかな歌声を響かせる吉岡。青空の下でのびのびと歌う彼女とアイコンタクトを交わしながらピアノを奏でる水野が、わずかに口角を上げたのを配信のカメラが捉えた。吉岡が「みなさんの声聴かせてくれますか!」と呼びかけると、アウトロではラララの大合唱。客席の方にマイクを向けながら、吉岡は「すごい!」と嬉しそうだ。
「正直なことを言うと、ちょっと緊張しているんですよ。だけどこの固い感じをみなさんの声が柔らかくしてくれている感じがしまして。みなさんにすごく助けてもらった気がします。ありがとうございます」と顔をほころばせる水野。
ここで、この日が2人体制初の新曲「STAR」のリリース日だということを改めて報告するとともに、同曲を披露した。8分の12拍子の楽曲特有の弧を描くようなリズム感を共有しながら、息を合わせて演奏する2人。凛とした存在感の中に繊細さを孕んだ吉岡のボーカルが印象的で、他の曲ではあまり見られないファルセットの発声にハッとさせられる。ライブ初披露、かつ2人編成による特別アレンジということで、観客は、貴重な演奏をしっかり耳に留めようと集中して聴き入っている様子。観客のリアクションが楽しみだったからか、演奏後、吉岡がワクワクした表情で客席を見ていたのも印象的で、観客が拍手で応えていたのも含め、微笑ましい場面だった。
「水野さん、初・披露!ですよ!」と吉岡が切り出したのをきっかけに、「初・披露!」と声を合わせて笑う2人。地元の海老名で新曲を初披露する機会はこれまでにも何度もあったと前置きしながら、水野が「それをまたやれたってのは嬉しいね、本当に」と噛み締めると、客席からは「おかえりー!」という声が飛んでいた。
「心置きなく手を叩いてください」(水野)と3曲目に披露したのは、「THE FIRST TAKE」でも披露した新アレンジも話題を呼んだ「気まぐれロマンティック」。吉岡の歌と水野のピアノによる二重奏に、観客の手拍子も加わり、今だからこその三重奏が生まれていった。そんななか、Aメロに入ると観客の手拍子が自然と「パン・パパン!」というリズムに変わり、サビでは多くの人がMVでおなじみの振り付けで踊り始める。ライブ定番曲だけに、この曲が身体に染みついているというファンも多いのだろう。吉岡も「(サビの振り付けを行いながら)久しぶりのこれ、いいですね! 私、家で一人でやってた!」と笑顔だ。
楽しい時間はあっという間。水野が「実は新曲もたくさん用意しているし、今日を皮切りに、今年は動きますので!」と宣言するとともに「また必ず地元に帰ってきますので、その時はよろしくお願いします!」と挨拶、さらに次が最後の曲だと伝えると、ライブの終わりを惜しむ声が広がった。吉岡が「地元のこの景色の中で歌いたいなと思ったこの曲を、最後にお届けしたいと思います」と紹介したのは「帰りたくなったよ」。みんなそれぞれに大切な人の存在を思い浮かべながら、音楽に心を委ねていたことだろう。吉岡の歌と水野のピアノは“ただ、そこにある”といった具合にあくまで自然に存在しているが、同時に、たとえ雑踏の中でもこの音楽を必要としている人を見つけ、心にタッチし、自身の内面に向き合う時間を個々に与えていく腕力の強さも持っている気がする。路上ライブから始まったこのグループならではのナチュラルな凄みだ。
こうして2人は一度ライブを終えたが、アンコールを求める手拍子に呼ばれて再び登場。「いきものがかりとしてみなさんの前にまた立つことができて僕らも嬉しいです。ずーっと(緊張で)あがってるけど、この感じ、久しぶりだね」(水野)、「もしかしたらリーダーよりも落ち着いているかも」(吉岡)、「今日は確実に聖恵の方が落ち着いてる」(水野)といったやりとりでライブを振り返ったあと、地元の風景を歌ったデビュー曲「SAKURA」を水野のアコースティックギターに乗せて届けたのだった。海老名・厚木で聴く「SAKURA」にはやはり特別な響きが宿る。
「こうやって海老名で、またみなさんの前に戻ってこれて、いろいろな方の協力と気持ちを受け取りながらやらせてもらってます。これからも元気に歌っていきたいと思いますので、みなさんに届けていきたいと思いますので受け取ってください。今日は本当にどうもありがとう!」と吉岡。最後には、「ビナウォーク大好き!」「海老名厚木大好き!」といった掛け声とともにお客さんと一緒に記念撮影。「ありがとう!」「大好きー!」といった観客の声が飛び交う中、「また海老名・厚木に帰ってきます! これからもよろしくお願いします! いきものがかりでした!」という挨拶でライブは締め括られた。
本ライブの模様全編をおさめたアーカイブ映像が、Amazon Music Japan Twitch channelで期間限定(2023年6月11日(日)23:59まで)公開中。ぜひこちらもあわせてご覧いただきたい。
取材日 : 2023年05月03日
取材/文 : 蜂須賀ちなみ
企画/編集 : MOAI inc.