その職業があなたの価値を決めるのではなく、あなたのあり方が職業の価値を決める
タクシーの運転手さんというお仕事が本気でかっこいいと感じたエピソード
このお話は企業研修でもお話させていただいているのですが、タクシーの運転手さんというお仕事が本気でかっこいいと感じたエピソードをご紹介します。
このタクシーはなんか違う
東京に住んでいる時に、仕事で帰りが遅くなってしまって、オフィスを出たのが夜中0時を回っていたんですね。すごく疲れていて、オフィス近くでタクシーが通るのを待っていました。
そこに、一台のタクシーが来て、すぐに乗ることができたんですが、ドアが開いた瞬間に「こんばんは、ご利用ありがとうございます!」とニコニコとした優しい笑顔で運転手さんが迎えてくださいました。
あぁ、やっぱり人の笑顔っていいなぁと疲れていたからこそいつも以上に感じながら乗って、行き先を伝え、ほっと一息。
車内のBGMはジャズでした。
すぐに運転手さんが「BGMお邪魔でしたら止めますがいかがでしょうか?」と聴いてくださって
「いえ、ジャズ好きなので嬉しいです」
とお伝えしそのままかけていただきました。
うーん、何かこのタクシーは違うなぁと感じながら、今度はいろいろな種類が入っている飴の箱がでてきて、「もしよろしければどうぞ」とくださいました。
あぁ、なんか優しさが嬉しいな。
たくさんの種類から好きな飴を選んで口の中へ。
この居心地の良さはなんだろうと気になり、疲れてぐったりしていたのに思わず職業病?笑、話かけてみました。
「なんだかこのタクシーは違いますね!すごく居心地いいですし、今日はとても疲れて仕事を終えてタクシーですぐに寝ちゃいそうだったんですが、一気にリラックスできました。何かすごく意識されていらっしゃいますよね?」と伝えました。
「私はタクシーの仕事が大好きでしてね」
運転手さんは
「そんな風に言って下さってありがとうございます。私はタクシーの仕事が大好きでしてね、いろいろな事情の方々が乗られます。その時に、少しの時間でもほっとしていただきたい。こんな限られた狭い空間ですが、その中でできることはなんだろうといつも考えているんですよね。できることは本当にたいしたことはできないんですけどね。
飴も毎週末に買い出しに行って、
喉が痛い人がいるかもしれないからこの喉飴
疲れて甘いものを食べたい人がいるかもしれないからこの飴
すっきり目を覚ましたい人がいるかもしれないからこの飴
と、いろいろなお客様を思い浮かべると毎回20種類は越えてしまうんですよね」
と楽しそうに教えてくださいました。
「へー、それすごいですね。
だからこんなに種類がたくさんあるんですね。」
「そうなんですよね。あと、夏場になると、みなさん汗かくので冷たいおしぼりを用意してるんです。ちゃんといいタオルで、布のタオルを前日に娘と話ながら手伝ってもらって一本ずつ巻いて冷やしておいて、乗車されたお客様にサービスでお出ししてるんです。
これがみなさん喜んでくれるので、少しでもスッキリしてまた仕事も頑張って欲しいなぁと思いながらそんなこともしてます。」
と、また楽しそうに教えてくださいました。
「そんなタクシーわたし今まで乗ったことなかったです。すごいなぁ」と話していました。
「もうサービスをやめようかと思うこともありました」
「でもですね、こんなことがあったんです。」
とまた運転手さんがこんな話をしてくれました。
「ある夏の雨の日に、乗ってきた男性がいて、いつものようにおしぼりもお渡ししたんです。
そしてそのままドロドロになっている靴を拭き始めたんですよね。そして到着して、床におしぼりを投げ捨てるようにして降りていきました。
まぁ、どこに使ってもらってもたしかに自由なんですが、ドロドロになったおしぼりを投げ捨てていかれた時に、なんだかとてつもなく悲しくなりました。
その日、自宅に帰って娘にその話をして、悲しさのあまり、もうおしぼりのサービスはやめようかと思うと娘に伝えました。
そうしたら、娘が、パパがやっていることって素敵だと思うし、そういう人もいるかもしれないけど、でもほとんどの人は感動したり、スッキリ気持ちよくなって喜んでくれてる人がほとんどでしょ。喜んでくれてる人がたくさんいるんだから、絶対続けた方がいいよ!って言ってくれたんです。
あぁ、そうだな、喜んでくれてる人がいるなら続けてみようと思って、今も夏には前日から準備して冷えたおしぼりをお出ししてるんですよね」
というお話を聞かせてくださいました。
自分ができることってなんだろうと考えてできたサービスたち
この限られた空間で自分ができることってなんだろうってたくさんたくさん考えて、できたサービスたち。
しかも、BGMにしても押しつけは一才なく、お話も私から聴いたのでいろいろと教えてくれましたが、基本的には余計なことを話さない、お客様がそっとしておいて欲しい人なのか、どうかもよく感じるようにしているそうです。
そんなお話を聞かせてもらいながら、私の心も温かくなって、疲れていたはずなのに着いた頃にはすっかり疲れも飛んでいました。
そして、
お支払いをする時に、お釣りをジッパーのミニのビニール袋に入れて下さり、そしてその中にレシートも入れてしっかりふたもしてくれて返してくださいました。
「こんな風にお釣りをもらったことがないんですけど、これはどんな意味があるんですか?」とまた聞いてしまったのです。笑
「タクシーは忘れ物がすごく多くて、特に夜だと飲んで帰ってきている方とか、しょっちゅうとにかく忘れ物が多いんですよね。
家に帰って、「あれ、ない!と気づいて、あのタクシーに忘れてきたかも!」と思ってもどんなタクシーに乗っていたかなんて思い出せない。
タクシー会社さえわからない、しかも、だいたい夜で酔っていたりすると、レシートも降りてすぐ、くしゃくしゃと丸めて道に捨てていく人が多い。だからどのタクシーかを追うのはなかなか難しい。
降りる時に忘れ物に気をつけてと、伝えるようにしていても、座席の下に潜ってしまっていたりで気づけないことがあって、何かいい方法はないかなと考えた時に、そうだ!レシートは捨ててしまう人が多いけど、お釣りを捨てる人はいないから、お釣りとレシートを一緒にまとめておけば、あとで、「あっ!」と思った時にそこに電話してもらえるかなと思ってこの形になったんです」
と、また楽しそうに幸せそうに笑いながら教えてくださる運転手さんを見て、本当に感動しましたし、尊敬しました。
『とにかくタクシーの運転手という仕事が大好きで、この疲れた大人が多い世の中で、この限られた空間で少しでも癒されてほしい』
その思いだけでやっていらっしゃる姿は私の学びにもなりました。
あなたの在り方がその職業の価値を決める
タクシーの運転手というお仕事に誇りを持っていて楽しそうに仕事をしている人がいれば、
逆に、どうせ自分はタクシーの運転手なんで・・・となにかこの仕事に誇りを持ててないようなお話をされる運転手さんもいて、その思いでお仕事していたらそれは辛いでしょうし、笑顔なんてでないと思います。
私はその運転手さんと出逢って
タクシーの運転手というお仕事ってなんて素敵なお仕事なんだろう!と心から尊敬したんです。
企業研修でも、『その職業があなたの価値を決めるのではなくて、あなたの在り方がその職業の価値を決める』というお話をする時にこのタクシーエピソードを紹介しています。
この職業だから自分はたいした人間ではないとか、この職業だから自分はすごい、ではなくて、自分の在り方がその職業の価値を決める。
本当にそうだなぁと感じたエピソードでしたので
今日はご紹介させて頂きました。
お読みいただきまして
本当にありがとうございました。