(27)特定市場での№1を実現する (プレIPO期)
スタートアップ「プレIPO期」の最初の記事です。
※プレIPO期:一般的には「レーター期」の後期に含まれます。私は本ステージを「IPO後の成長に向けて攻めと守りの投資を加速する段階」を定義しています。
今回の記事は、課題(27)「特定市場での№1を実現する」です。
①九段下オフィスへの移転
アルー株式会社は2016年2月に、創業前から数えて9番目のオフィスとなる「九段下オフィス」に本社を移転しました。
(神楽坂→本郷→湯島→銀座→西新橋→渋谷→市ヶ谷→有楽町→九段下)
2012年2月から4年間いた有楽町オフィスは、多くの大企業顧客に対して徒歩で営業活動ができるという素晴らしい立地でした。また定借契約であったことから都心一等地のわりに賃料が低く、非常にコストパフォーマンスが良い物件でした。
しかし定借であるがゆえに退去時期も決まっておりました。営業活動上の利便性を担保しつつ、賃料をなるべく押さえたい、という観点で選択をしたのが九段下オフィスでした。九段下交差点からすぐ近くの「ヒューリック九段ビル」の2階に入居することとなりました。古い建物ではありますが、外から見るとガラス張りの綺麗なビルです。
有楽町オフィス時代に比べれば営業活動には多少時間が掛かるようになりましたが、九段下は交通の便がよく東西南北に移動しやすい場所です。
周辺は落ち着いた雰囲気で、道幅が広く、画像のように晴れた日には近隣を散歩するのも気持ちいい環境です。
九段下からは皇居が近く、本社移転後、社内のランニングクラブが発足し、早朝や夕方に皆で「皇居ラン」を行ったりもしました。千鳥ヶ淵公園もすぐ近くですので、春は満開の桜を見に行くこともできるとても素敵なオフィスです。
2020年以降、当社は業務スタイルをリモートワークに一気に切り替えましたが、本社オフィスはオンライン講演・研修登壇用ブースやEラーニング動画の撮影ブースとしての活用もしており、2021年末現在も引き続き入居をしています。
②アルーの研修事業の経緯のおさらい
さてここから本記事の本題に入っていきたいと思います。
本記事のテーマである「特定市場での№1実現」を理解するために、
まずアルーの研修事業の過去の経緯をおさらいをさせていただきます。
(1)若手向けビジネススキル研修の会社としてスタート
アルーは研修業界の最後発の企業の1社でした。研修業界は100年程の歴史があり、様々な既存企業が存在する業界です。
その中で、当社は「ロジカルシンキング100本ノック」というプログラムで研修事業をスタートをさせました。創業初期はロジカルシンキング、プレゼンテーション、問題解決といった「ビジネススキル分野」が中心でした。
1990年代ではビジネススキルは、MBA等選抜教育の一環でしたが、少しずつスキルが普及浸透するにあたり企業において若手~中堅向けに採用されるようになってきました。
当社は、特にロジカルシンキングを新入社員にも使えるものとして打ち出していました。
(2)新入社員大量採用時代で、新入社員向けプログラムの開発し、強みを構築する
2006年頃の日本企業の新卒大量採用時代に、新入社員向け研修に特化した商品開発投資を行いました。当時開発した「プロフェッショナルスタンス100本ノック」はヒットして多くの企業に導入されるようになりました。
こうした経緯で、若手、特に新入社員分野を得意とする研修会社となっていきました。
(3)リーマンショックによる新入社員採用減から、グローバル人材育成分野への進出
2009年リーマンショック後、大手企業が新卒採用を減らしたことで、当社の得意とする新入社員研修市場も縮小をしてしまいました。
そこで当社は、新入社員研修分野だけでなく、別の分野への領域拡張に取り組みました。その試行錯誤の中から、第2の柱となる「グローバル人材育成分野」に進出していきました。
(4)脱新入社員研修・上位階層向け研修への拡張の取り組み
新卒採用の緊縮は2011年頃まで続きました。
当社はグローバル人材育成だけでなく他領域への拡張も試みていきました。
「脱新入社員研修。より上位階層へ」というスローガンを掲げて、サービス領域の拡張に取り組んでいました。
上位階層=管理職(課長、部長)、経営層等への研修サービスの拡張を目指していました。
当時上位階層を目指していたのは、営業活動から見えてきた課題感に基づいたためです。
●新入社員研修を得意とするベンダーと見られるため、顧客から上位階層の研修案件の相談を受けづらい
●課長と新入社員の研修を揃えるという理由で、課長研修を担当していた競合研修会社にコンペティションで負けてしまう
●上位階層向けの研修の方が、顧客の経営課題に与えるインパクトが大きく、当社としてもやりがいを感じやすい
このような営業活動上の課題から、上位階層を目指す方針を掲げたのです。
③№1戦略の選択
2013年に、改めて今後の成長戦略を考えるにあたり、「脱新入社員研修、上位階層へ」という戦略で本当に行くべきなのかについて経営メンバーで議論になりました。
上位階層の研修案件は、当社にとって確かに魅力的でした。
課長・部長といった管理職研修は研修業界で最も市場規模が大きく、前述のとおり、他階層への影響を与えることもありました。
しかし、当社にとって魅力的であるマーケットは、競合企業にとっても魅力的なマーケットです。
魅力的な市場の開拓にチャレンジすることは必要ですが、重要なのは
「勝てるのか?=業界№1になれるのか?」という観点です。
残念ながら2013年当時の当社では、管理職研修分野で「勝てる」とは言い切れませんでした。
では、既に強い分野である新入社員研修では「勝てるのか?」
研修サービスは、参入障壁が低く、新入社員研修は多くのベンダーが提供しています。その中で新入社員研修市場において、強みはあり、上位にはあったかもしれませんが、2013年時点では№1とは言えない状況でした。
この時の議論の転換点としては・・・
「競合は新入社員研修市場で勝とうとしているのか?」という議論をしたことです。
私達の見立てでは、競合企業も新入社員研修に本格的に力を入れておらず、当社の「脱新入社員」と同じく管理職研修やより上位研修を得意とする企業や、これから狙っていこうとする企業がほとんどではないかということでした。
また新入社員研修は、管理職研修に続く研修市場で2番目に大きなマーケットです。魅力という意味でも十分にあるとは言えます。
仮にそうなのであれば、新入社員研修という市場で「№1」を実現し、勝ちきってから次の市場に進むのがよい、という結論となりました。
またグローバル人材育成分野については、新入社員研修・管理職研修と比較して市場は小さいながらも伸びることが期待できました。かつ当社が優位性を持ち取り組める可能性が高いと考え、同様に№1戦略の対象としました。
④№1戦略の重要性
時計の針を2016年頃に進めます。
上記の意思決定から3年程の時間を経て、当社では業界主要企業の新入社員研修の受講人数について調査を行いました。
「あくまで当社調べ」という前提ですが、当社は2016年時点で年間1万数千人の新入社員研修を実施しており競合他社と比較して、「従業員1000名以上の大手企業における新入社員研修業界№1」と言える水準であることを認識しました。
2019年度には、年間2万数千人になりました。単年度で従業員数1000名以上の大企業に就職をする大卒社員は年間18万人~20万人とのことです。シェアとしては11~13%に及ぶものと考えております。
この成果は、全て当社メンバーやご協力いただいているパートナー講師の皆様の努力の賜物であると考えています。
私自身は、2014年~2015年にかけて研修事業から完全に離れて、新規事業開発に取り組んでいたため一切の貢献が出来ておりません。その意味も込めて、当社の仲間たちの成果を心より尊いものだと私は考えています。
No.1の実現は成長のエンジンとなりました。
【No.1のメリット】
(1)BToBの場合、お客様から声をかけられる率・受注率が増加する
→顧客の意思決定ロジックにおいて、その領域でNo.1のベンダーを「採用しないこと」について社内での説明が必要になるという力学が発生します。
(2)働く営業メンバーにとってもアイデンティティ・自信になる
→自社が強い分野と認識できると、自信をもって顧客への提案活動が行えるようになります。特に研修サービス業界の独特の点かもしれませんが、営業メンバー自身が信じるものは売れます。
No.1になることで好循環が回るのです。
資源が限られたスタートアップベンチャーでは市場をセグメンテーションし、小さくとも特定の市場で一番を取ることが極めて重要です。そこで勝ち切り、収益力を高め、更なる成長に向けた投資をするエンジンとなるためです。
本記事のまとめ
◆魅力的な市場はライバルも多い。競争に勝てなければ進出をしても意味がない
◆勝てるのか?=業界№1になれるのか?
◆強みがある市場で勝ち切ってから、事業領域を広げる
◆No.1のメリット
(1)BToBの場合、お客様から声をかけられる率・受注率が増加する
(2)働く営業メンバーにとってもアイデンティティ・自信になる
次回の記事は・・・・
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本noteでは別途アルーの「研修プログラム開発のストーリーとノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。
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