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学生リーダーについて(吉川夕葉編)
(2020年3月28日土曜日)
以前に「リーダーの資質」という記事で私はこれまでのAAEE日本の学生リーダーが備えていた共通の特徴を4つ挙げた。
①何かしらフラストレーションを持つ
②潜在能力がある
③異文化交流や国際協力に興味がある
④自己と真剣に向き合える
(詳細は→https://19b0304.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html)
今回の記事では具体例として2016年ネパールプログラムリーダー、翌2017年ベトナムプログラム副リーダー、2016年~2019年AAEE学生リーダーを務めた吉川夕葉さん(以下夕葉)について紹介する。
なお、今回の記事は夕葉の大学卒業を祝してインスタグラムでコメントした内容を引用してある。
①何かしらフラストレーションを持つ
夕葉と出会ったのは2015年まで遡る。
2015年秋、その年の春にネパールを襲った大地震の復興支援について都内の高校で講演させていただいた。この講演に向けてはAAEEに所属する多くの上智大生に手伝ってもらったので、いただいた講演料を使って学生たちと我が家で盛大なパーティーをした。ほとんどは夏のネパール・スタディツアーに参加してよく知っている学生だったが、一人だけ見知らぬ女子学生がいた。それが夕葉。お人形のように身じろぎもせず、話しかけても声が小さすぎて会話すらうまく成り立たない。威勢のいい元気な学生たちに囲まれて存在感がなさすぎて、逆にそれが印象に残った。彼女がその後AAEEの大黒柱として大活躍することなど全く予想だにしなかった。
「AAEEリーダーの特徴」①何かしらフラストレーションを持つ
「自分の実力を発揮するチャンスを与えられずにモヤモヤとしている人。その時点で周囲からあまり注目されていない人」(「リーダーの資質」2020,3,19)
夕葉と出会ったとき彼女はとても寡黙な少女だったが、心の中では「自分を何とかしたい」という思いでいっぱいであるということを後に聞かされた。「こんなんじゃ、社会人になって通用しないことはわかっているんです。自分がダメすぎるんです」親しくなってくると、彼女は自分自身に対する強いフラストレーションを打ち明けてくれた。
②潜在能力がある
「雨降って地固まる」というが、2016年2月のネパールのMero Sathi ProjectはAAEEにとってはただの「雨」ではなく「雷雨」に近かった。
ネパール・インド間国境封鎖による物資不足やそれに伴う政治不安、ストライキの頻発に悩まされたがそれは想定内。しかし加えて想定外の珍アクシデントに見舞われ、プログラム全体が謎めいていた。
例えば、教育問題を観察するために標高3000メートルの村までようやくたどり着いたのになぜか学校はお休み、代わりに待っていたのは謎の「フクロウ祭り」。学生たちは全員フクロウのお面をかぶり踊らされた。その模様がなぜか中国の新華社通信の記者を通じて詳細に報道された。あれは何だったのか笑。聞かされていないスポーツ大会にも参加させられ、今年東大の卒論最優秀賞を受賞した当時一年生の学生は砲丸投げで、みるも無残に村人に敗れた笑。極めつけは日本学生リーダー吉川夕葉(当時大学1年生)。彼女の珍リーダーシップにも度肝を抜かれた。「リーダーを体験したことがない」と聞いていたがここまでとは・・・。今振り返っても大爆笑の珍リーダーシップの数々。ただし夕葉にとってもAAEEにとってもこの経験が次への大きなステップになったことは間違いない。忘れてはいけないのは私は教育者でありAAEEの活動は私にとっては人材育成活動である。ここでの活動を通じて成長してくれればいいのだ。
1年次から珍リーダーながらAAEEフルコミット宣言をして周囲をアッと言わせた夕葉。さらに「私、関先生の下でとにかく何でもやりますから」と小さな声で弟子入り宣言!目が点、思わずのけぞってしまった。
「それならば」と、あえて夕葉の苦手分野を狙い撃ち(通常のアプローチとは真逆)。司会、発表、人前での踊り、初顔合わせの人々と仲良くなれ指令などなど。予想通りに見事にこけまくったが、彼女のすごいところは、打たれ続けても倒れそうで倒れないところ。というか、打たれていることに気がつかないのかもしれない。
しかし彼女にも限界があった!2016年のベトナムプログラムで見事にノックダウン。
2016年のベトナムプログラムは、避暑地として有名なランドン省ダラット高原で開催された。この年の参加学生はベトナム、日本双方ともに最強にエネルギッシュ。日本副リーダーの吉川夕葉は周囲のパワーに完全に押されて潰れてしまった。ある日のこと、皆で山頂の綺麗な景色を楽しんでいる最中に夕葉の口からとんでもない一言が。
「ここから飛び降りたら日本に帰れるかな・・・」目にはうっすらと涙・・・。
皆ドン引き。私はすかさず答えた。
「飛び降りたらホーチミンの病院に入院してずっと日本に帰れないよ」
それを聞い夕葉は「あっそうか。じゃあやめた」。
崖っぷちでの私と夕葉さんの不気味なやり取りを日本メンバーは唖然としながら見つめていた。
その夜、楽しそうに談笑する皆をよそに、私は彼女を呼び出し深夜に集中砲火。「リーダーなのに何故他の皆に心配をかけるのか!」「自分の発言が周囲に影響を与えることをよく考えないと」夕葉には言い返す力は残っていなかった。ノックダウン。「あー、これで夕葉も終わりかなー」と思っていた。しかし、彼女は再び立ち上がった。一ヵ月後にAAEEの本質を突く見事な報告書を提出。(「社会の動きと人間の関係性」)
(詳細は→http://aaeejapan.blogspot.com/2016/10/blog-post_11.html)
観察力、想像力、表現力、いずれもずば抜けていることを再確認した。ノックダウン状態でも彼女の心はしっかりと機能し必死に自分探しをしていたのだ。
「AAEEリーダーの特徴」②潜在能力がある
「リーダーとしての力を発揮するために最低限の能力や知識、精神力は備えている人達である。といっても、ここでいう能力、知識とは学校の通知表での尺度とはかなり異なるため、『え、まさかその人』と意外に思われるような人がリーダーとなることもある。もちろん奇を衒った選考をしているわけではなくあくまで本人の希望でリーダーは決まる。おそらく実力を備えていない人は希望してこない。もしくはリーダーとして続かない」(「リーダーの資質」2020,3,19)
このプログラムを通じて彼女の潜在能力の一端を垣間見た。
③異文化交流や国際協力に興味がある
ベトナムでノックダウンするすこし前、夕葉は僕に打ち明けていた。
「実は私一人でネパールの農村部に調査に行ってみたいんです」
突拍子のない一言だったのでその時はあまり相手にしなかった。そしてノックダウン後は全く音沙汰がなくなってしまった。帰国一ヶ月後くらいに久しぶりに電話して、ネパールの農村調査について確認したら泣き声で「私、ベトナムで相当やらかしたから、もう見捨てられたと思っていました・・・」とのこと。「そんなわけないでしょ!」そこからは急ピッチでネパールリサーチ準備開始!そして1ヶ月後にはネパールに一人で旅立ち、さらに二日間バスやジープを乗り継いで山岳地帯の貧困村での調査を実現してしまった。(あの奥地まで一人でたどり着いた大学生を私は他には知らない。)
AAEEリーダーの特徴③異文化交流や国際協力に興味がある
一人でネパールの農村部調査を決行した夕葉は、異文化交流活動への興味という点では十分すぎるほどに意欲的だった。
④自己と真剣に向き合える
この頃から脅威の夕葉パワーが次から次へと発揮されることになる。農村調査名目で訪れたネパールでは、翌年のネパール学生交流プログラムに向けた数々の重要会議を一人ですべてこなして私を驚かせた。彼女は実はしたたかで極めて高い交渉力を備えている希少人材であった。
ネパールから帰国後は、持ち前の生真面目さと内に秘めた最強のギャグセンス(本人は認識していない)を活かし、AAEEの足りない部分を細かな部分まで補強し、楽しい雰囲気づくりにも貢献してくれた。さらにメンバー内喧嘩の仲介、ホームページの内容修正、大学生の勧誘、100人規模のイベントでのスピーチなど、まさにオールラウンダーとして大活躍。堂々たるAAEE学生リーダーに成長した。まさに「大変身」である。
AAEEリーダーの特徴④自己と真剣に向き合える
「一度しかない大学生生活、貴重な時間を費やしてくれるのだからこの活動を通じて地球市民として大きく成長してほしいという思いがある。そのためにはただ言われたことを事務的にこなすスタンスの人だと、たとえその作業が完璧であろうとリーダーとしては通用しない。常に自身の生き方を模索し、この活動を自分の生き方とインタラクトさせることのできる人である」(「リーダーの資質」2020,3,19)
その言葉と照らし合わせると、吉川夕葉はリーダーという役割を果たしながら、地球市民として私の期待以上に成長してくれた。