あのとき何を急いでいたんだろう
大学時代のアルバイト経験の半分以上をnanapi(現 Supership)で過ごしたわけだけれど、たった半年くらい飲食店で働いていたことがある。
そのお店は百貨店の上の方にあるようなカジュアル和食レストランで、丼とか定食を提供している。
今、飲食店とかで働いている大学生たちには申し訳ないのだけれど、体を使って疲れるし、拘束時間も長いしであまりいい思い出はない。(典型的な"バイトリーダー"もいたしね)
ただ、そのバイトのなかで、たった一つ。一つでいてこの世の真理みたいなことを教わったことだけは記憶している。
ぼくがガスコンロ担当いわゆる焼き場担当で働いていた日のこと。そこのコンロは4口あるのだけど、名物の親子丼が6つオーダーが入った。
飲食店バイト経験者ならわかると思うが、飲食店というのは基本的にオーダー受けたものは、同時に出す。
幼い頃、ファミレスで「またぼくのだけ来ないねー!」みたいな会話をしていた気がするが、それはいいとしよう。
あと、ふわとろ親子丼作ったことがある人ならわかると思うが、親子丼はタイミングが命だ。少しでも火にかけすぎるとたまごが固くなる。
さて、4つのコンロに対し、6つの親子丼が入ったぼくはどうしたか。今、こうして書いているとなんてバカバカしいことをしていたのだろうと思うが、6つ同時に出すにはどうしたらいいのか考えた。
考えた挙句、結果はあたふたして効率が落ちるという悲惨なものだった。
そんなぼくを見かねて料理長が、
できる数は決まってるんだから、まずは4つ出そう
とボソッと声をかけてくれた。
このなんてことない出来事が、社会人4年目になったぼくの頭に鮮明にフラッシュバックする。
社会に出てみれば、目には見えない親子丼を作りきれないほど抱えて、キャパオーバーになっている人たちがいる。
残業して、仕事をこなして、睡眠時間を削って命を削っている。でももう一回考えるといい。
それは、今日やらないといけない仕事か。今日終わらせる意味がある仕事か。
無理しないで立ち止まって、考えてみる。自分のコンロの数を数えてみる。隣の人のコンロは空いてるかもしれない。
たまごが、固くなるまえに。