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早撃ち0.3秒のプロフェッショナル

原作ではなくアニメ版こそが「ルパン三世」というシリーズの基本フォーマットを決定した面というのが少なからずあってーーそれはまず例えば銃器や車両などといったメカニックに関する設定なり描写なりに関してだったりする訳であります。アニメ「ルパン」が確立した所謂実証主義といったものは原作の時点では存在しなかった要素で、その後の「ルパン」シリーズの基本フォーマットを決定しただけに留まらず、アニメ作品全体に広く深く影響を及ぼした事は皆さんよく御存知のところでしょう。

あるいはレギュラーキャラクターの設定なり描写なりに関する部分においても、アニメ版によって整理され、付け加えられ、基本フォーマットが確立した点が色々とありますよね。レギュラーキャラクターが整理され、それぞれの関係性も明確化され、プロフィール的な部分でも様々なアイデアが追加されているのは、これまた皆さんよく御存知のところでしょう。

さて、それでは…次元大介の早撃ちに関してはどうでしょう。彼が早撃ち0.3秒のプロフェッショナルであるなんて事は…これはもう基本中の基本ですね。じゃあその基本中の基本である次元のキャラクター設定は一体どの時点で決定されたと思いますか。

多分どんなルパンファンに尋ねても「そんなもん原作に決まってんじゃん」と答えるんじゃないかと思うんですが…果たして本当にそうなんでしょうか。『0.3秒』という具体的な数字についてはともかくも…次元が射撃の名手であるという設定は果たして本当に原作の時点で既に用意されていたものなんでしょうか…??

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ちょっと此処で「ルパン三世」というシリーズの流れを整理してみましょう。

67年 原作(旧)連載開始
69年 PILOT FILM制作
71年 原作(新冒険)連載開始
71年 旧ルパン放映開始
77年 原作(新)連載開始
77年 新ルパン放映開始

この流れに沿って、順に遡ってみます。
新ルパン以降、次元が射撃の名手であるという設定が確立・徹底されているのは、これはもう皆さんよく御存知の通りです。わざわざ改めて今更言うまでも無いとこですね。そこから遡って、原作(新)や旧ルにおいては果たしてどうだったかと言えば、これも新ル以降と同様だってのは、これまた皆さんよく御存知の通りです。

それでは原作(新冒険)ではどうだったでしょうか…??
実は原作(新冒険)において「次元は射撃の名手である」という設定は特に明確だった訳ではなく、それを示す描写なり台詞なりは殆ど見当たりません。第18話「対20面相(その2)」において「超一流の殺し屋のウデをみせてやるルパン」という次元本人の台詞があったりもしますが、「超一流の殺し屋のウデ」と言ってはいても、「射撃の腕が一流」だとは特に言っていません。 

原作(新冒険)において「次元は射撃の名手である」という側面を多少なりとも窺えるのは、第23話「ラスプーチン(その3)」において、次元の射撃能力を評してルパンが言った「次元め みごとに急所ははずしてる」という台詞が唯一なんですね実は。

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更に遡って「PILOT FILM」ではどうだったかと言えば、これも皆さんよく御存知の通り、此処での次元は「早撃ち0.3秒。ルパンも一目置く正確さ」と紹介されています。

それじゃあ最初の最初、原作(旧)ではどうだったかと言えば…「次元は射撃の名手である」という事を示す描写なり台詞なりは全く見当たりません。勿論、次元が拳銃を撃つ場面は数多く存在するんですが、それは単にそれだけの事であって、具体的に「射撃の名手である」という事は何処にも描かれていません。

つまりどういった事かと言うとーー「次元は射撃の名手である」という基本中の基本の設定は「PILOT FILM」において追加されたもので、そしてそれがその後、原作にもフィードバックしたんだという事になる訳です。

「ルパン」がアニメ化された際に、今泉俊昭や大隅正秋や大塚康生や芝山努などといった面々によって、如何に重要な仕事が為されたかといったお話でした。

(※初出 / mixi / 2009年6月2日)