ムーンブルクの王女にみる想像力の大切さ

本日は「想像力の大切さ」というテーマを、ファミコンのゲームというちょっと変わった切り口で書こうかと思います。

皆さんはファミコンのドラゴンクエスト2をやったことはありますか?
僕はいわゆる世代的にずっぽしでして、小学校低学年ながら猿の様にやった思い出があります。
当時はセーブ機能なんてなくて復活の呪文というキーワードで冒険を進めるシステムでして、小学校低学年の僕は毎回毎回広告のチラシの裏に書いてたんですが、チラシを無くしたりパスワードが間違えていたりと、3日遊んで2日分やり直すという状態でした。
しかもファミコンを出来る時間が30分だけしか許されてなく、それも復活の呪文を入れてから、終わりの呪文のメモを取る時間を全て含めての時間だったので、今から思えばどう考えても無理ゲー状態でした。
まあそれでも楽しんでいたのを覚えています。

さて、そのドラゴンクエスト2はですね、主人公以外に仲間が二人います。
サマルトリアの王子(こいつが役にも糞にもたちゃしないやつでした)とムーンブルクの王女です。
で、このムーンブルクの王女ですが、ドラゴンクエストシリーズが数え切れないほど出た今となっても、人気ランキングでいつも1位や2位を取るほど好かれていまして、世代によっちゃいつもダントツ一位の嬢だったりします。

なぜこのムーンブルクの王女がこれだけの時が経っても人気なのか。
そこには「想像力」というキーワードが隠されています。

このブログを読んでくれている人の大半はおそらくロールプレイングゲームをやったことがあると思うのでお分かりだと思いますが、最近のゲームってみんな主人公に人格がありますよね。
主人公毎に性格があってセリフがある。
もちろん選択式のゲームはあれど、それでもゲームの中で少なくとも一言二言は話し、まあ恋に落ちたり、なんなりするわけです。
そこにはその主人公の人格が確実にあるわけですよ。
ではこのドラゴンクエスト2はどうかというと、当時1987年はまだRPGが確立されておらず、基本的にキャラクターに人格はありません。
街の人が話すことがあっても、主人公が話す事はなかったのです。
これは仲間もほぼ同様で、仲間の一人である役立たずのサマルトリアの王子は出会った最初にしかセリフはありませんし、肝心のムーンブルクの王女も最初と最後とあと1回の3セリフしかありません。
そんなセリフがない中で淡々とレベルを上げて、アイテムを集め、ボス戦に挑むわけです。

ではなぜセリフもまともにないムーンブルクの王女が人気なのか。
それは「セリフが無いからこそ、人それぞれ心のなかに自分だけの理想のムーンブルクの王女がいたから」です。
そう、ムーンブルクの王女はセリフは無いとはいえ大切な仲間。
というかサマルトリアの王子が常に死んでいる状態だったので、実質全国の子供達はその幼く貴重な期間の長い時間をムーンブルクの王女と二人で旅をしていたわけです。
そうするとですね、当然子どもたちとしてはこのムーンブルクの王女と脳内でストーリーを展開していくわけです。
倒れそうになった時にムーンブルクの王女だけが生き残ったとか、回復が間に合ったとか、そういう思い出がそれぞれにあり、その都度ムーンブルクの王女に感謝し、思いを馳せるわけです。
そしてセリフがなまじっかない為に、自分が思うムーンブルクの王女はそれぞれにあり、ムーンブルクの王女は誰かの中では関西弁を話し、誰かの中では勝ち気な性格であり、誰かの中では浪費癖の強い女の子だったり、誰かの中では真面目で一途な女の子だったりするわけです。
人それぞれ自分の理想に合う人格をムーンブルクの王女に想像して旅をしていったわけです。
青春時代に理想の女の子と二人で旅をし、苦楽をともにし、最後にボスを倒し、そしておそらく大半の人にとって二人はその後に結ばれるわけですよ(ゲーム内では明示されておらず)。
そういう経緯があるので、ムーンブルクの王女は今でも僕らの世代には「青春の子」であり、ゆえに絶大な人気がある、というわけです。

いや、このコラムは何も僕がドラゴンクエスト2が大好きだから披露したってわけではなく、「設定でガチガチに縛るのではなく想像力、創意工夫の余地を残しておくことでエンゲージメントが高まる」というのはビジネスにも展開できるところがあるんないかなと思うわけですよ。
人はやはり情がありますし、ビジネスで自社とのエンゲージが高ければ副次的効果は素晴らしいですからね。
「相手に理想的なものを提供する」という視点からみたら、確かにこれほど素晴らしいやり方はあまりないのではないでしょうか。
逆説的な発想にもなりますが、一つこの辺りを自分たちのビジネスに展開できないか考えていってみてください。

ま、なんというか、たまにはこういう気の緩んだ内容も良いんじゃないかなと思って綴ってみました。
楽しんでもらえたなら幸いです。

あ、ちなみに僕のムーンブルクの王女の名前は「アイリン」です。
彼女との逢瀬は子供ながらに楽しかったなあ(遠い目

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