企業内の「ありそうな展開」から「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」を考えてみた
そもそも経済とは、物々交換から始まりその歴史の中で物を交換する価値の担保や尺度としてお金が発明されました。 ヒトは便利さをお金で買ってると言っても過言ではありません。しかしこの直近5年くらいでネットやSNSの普及で、それがガラリと変わってしまったように感じます。
「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」の2つの経済圏。この2つの狭間で、もがき苦しんでいる若い世代を見ることが増えたように感じます。だから書いています。
前者の「お金で交換できる経済」(既存経済)で生きている代表格は、大企業で、目安として資本金3億円以上で社員が300名以上の会社。
後者の「お金だけで交換しない経済」(コミュニティ経済)を活用している代表格は、スタートアップ企業や中小企業で、目安として資本金が5千万円以下で社員が50名以下の会社。
大企業、中小企業、スタートアップの定義は業態によって変わりますが、ざっくりこんな感じだと思います。
では大企業とスタートアップ企業や中小企業はいったい何がどう違うのか?新しいことをしようとすると、なぜ失敗して、どうすれば上手くいくのかについて紐解きたい思います。
コレは対談で話せば簡単なのですが、一人語りで書くのは難しいけど頑張ってみました5500字超🔥超ニッチなハナシですがどうぞお付き合いください。
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1:そもそもユニークな商品ってなに?
前回「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」が互いに助け合う方法と技術について考えてみた。の文中にある→「従来にないユニークなアイデアで、サービスや商品を開発して、応援と共感を増やし新しい需要を創造する」って何なんだよ?というメッセージが来たので、イメージする商品を参考例としてあげて、それから「ありそうな展開」を考えてみたいと思います。
こんな商品をイメージしてください。
台湾発ゼロカーボン・シャンプー「オーライト」
原材料の調達から消費後のプロセスまで、カーボンニュートラルなグリーンコスメです。
オーライトのシャンプーは、コーヒー成分からできたシャンプーです。環境に優しいパッケージでリサイクル可能な素材・バイオプラスチックを使用。ワインボトルのような形のパッケージで、100%再生可能です。使用後に土に埋めるとボトル底に「コーヒーの木の種」が埋め込まれていて「コーヒーの木が育つ」ようになっています。
この商品自体がメッセージになってるし、もしプレゼントしたらコミュニケーションが発生しそうです。しかもこの商品の背景である企業行動に物語性があります。
オーライトは、自社製品の二酸化炭素排出量を計算して、それに相当する量の植林活動をしています。世界初のゼロカーボン認証を取得したヘアケアブランドになりました。本社屋上は風力発電の風車と太陽光パネルを設置。本社と工場で使用するエネルギーはすべて自家発電で、停電したときには周辺地域にその電力を供給してサポートしているそうです。オーライトでは環境保護とゼロカーボン社会を実現するために2025年までに100%再生可能エネルギーで全製品の製造を行う目標を掲げています。このように商品の背景が企業行動に表現されていて物語化しているように見えます。
オーライトは日本市場に参入していて、事業提携や直営店を展開しています。この商品を知ってる人は知ってるけど、知らない人には「へぇ」状態かもしれません。
「ボトル底の種からコーヒーの木が育つ」
では、新しい商品ってどうやって売る?をイメージをしてみてください(この商品に関して論ずる訳ではありません)ここから大企業やスタートアップの「ありそうな展開」にヒントがあると思うので、そこから紐解いてみようと思います。
2:大企業の「ありそうな展開」
もし大企業がオーライトのような「新しい商品」を売ることになったらどうなるか妄想してみましょう。
「前例がない」
前例を踏襲していたほうが安心安全で楽。新しい商品を生みだすとき「挑戦」するのが一般的ですが、失敗を恐れるあまり経路依存症が発症します。
そうすると、比較的マーケティングコストが低くリスク低めの展開になるでしょう。インフルエンサー#PRなのか、プレスリリースからWEB記事にしてもらうあたりから始まりそうです。サンプリングやクリーンコスメの専門店への流通対策も欠かせません。そうやって総花的になってマーケ戦略の核はなんだたんだっけ?状態へ薄まっていきます。
新ブランドにいくらマーケティング費用を投下すれば、どのくらい売り上がるか?試算しても正解はありません。失敗するとキャリアに傷がつく事もあるでしょう。もしトップがサラリーマン社長であればなおさら「無難な策」に終始します。よくあるパターンです。前職の大手広告会社時代に何度も眺めてきた景色です。
「しがらみ」の問題
ここで本質的な問題点は「研究開発」→「商品開発」→「生産・調達」→「クリエイティブ」→「マーケティング」→「営業活動」→「お客さま対応」のバリューチェーンが大企業ほど出来上がっていて、その組織の機能にヒトが紐づいていることです。これが「新しいこと」がやりにくい理由です(出来ないとは言ってない)。何か「新しいこと」をやろうとすると「しがらみ」が出てきます。仕事をしているとなんらかの人間関係から縛りをうけるものです。これが「新しいこと」をやりにくくします。かってのカルロス・ゴーンの日産V字回復は「しがらみがない」ことが最大の成功の要因だと思います。
「コントロールできないものは苦手」
大企業は「TVコマーシャル」など、お金を払って買えるものが得意です。逆にコントロールできないものは苦手です。理屈でわかっていても「口コミ」や「UGC(ユーザーが発するコンテンツ)を上手に活用できている大企業はけっして多くありません。
それは「新しいこと」のリスクは?(オレは損したくない)「新しいこと」は既存のやり方とバッティングする(発注先が変わる等の既得権益の侵食)誰がオレを評価するの?(おまえ上司じゃねぇ)コスパにあわねぇ(めんどくせぇ)ってことになりがちです。もしあなたが大企業の社内でチカラがあったとしても、大なり小なりこういうことが起こります。
じゃあ「新しいこと」は誰がやるの?
大企業はそれ自体が生命体です。サラリーマン社長がいくら号令をかけても上手くいくとは限りません(オーナー社長だと動く)。やがて「新しいこと」をやるのは大企業は向いてないな。となるわけです。大企業の強みを活かすことができない。頑張って「新しいこと」をやっても長く続かない。最後はヒトの問題に終止します。
大企業は一人で回っていません。だから思ったように動かない。やっぱり最後はヒトの問題に終止します。大企業とは毛虫が集団で移動している状態のようなものだからです。
大企業は「毛虫ローリングの群れ」
毛虫ローリングの群れとは、動いている下段の毛虫の上を、上段の毛虫が動くことで、エスカレーターの上を歩くようにスピードを上げることができる状態のことです。大企業は、全員が「飛び抜けて優秀なヒト」じゃなくても、このような集団行動をとることで、2倍のスピードで動く事ができます。 この毛虫ローリングの群れの問題は、先頭が何処に向かっているのか理解してないことです。大企業もこれに似た状態がよく生じます。
では、スタートアップなら「新しいこと」は、やりやすいのでしょうか?「何を」解決すれば可能になるのでしょうか?
3:スタートアップ企業の「ありそうな展開」
もしスタートアップがオーライトのような「新しい商品」を売ることになったらどうなるか妄想してみましょう。
ヒトがいない。設備がない。カネがない。でも夢と希望がある。想いがある。アイデアがある。スタートアップあるあるです。
たとえば、コミュニティーやインフルエンサーなどに協力してもらって、口コミやSNSでの拡散を狙う。UGC(ユーザージェネレートコンテンツ)を発生してもらってコミュニティの協力で輪を広げていく。場合によっては、クラウドファンディングで前受金を獲得できるかもしれません。または、D2C(直販)モデルで、直接的な顧客関係を築いて、さまざまなフィードバックを受けて、商品改善したり売り方の工夫をするかもしれません。
ここで重要なのは、SNSで共感の届く距離は連鎖して広がるように思えますが、無限に広がるわけではありません。ある一定の範囲を超えるのは本当に難しい。実はこれがスタートアップ「死の谷」だと感じます。このような景色を何社も見てきました。
そして、新しいことに夢中になっていると「それ内輪受けですから」って状態になかなか気が付かない。夢中とは「夢の中」と書くからでしょうか。それとも「自分が知られている」と思い込むのがSNSの特性にあるのかもしれません。これをなんと申せばいいのでしょう。こういう事を伝えるのが一番難しい。このような体験を積み重ねてきました。
4:「新しいこと」はどうやればできるのか?
ここで今一度振り返ってみましょう。
「新しいこと」とは・・・
「従来にないユニークなアイデアで、サービスや商品を開発して、応援と共感を増やし新しい需要を創造する」ということです。
それは下記のAとBの構成要素で出来ています。
大企業は、B:定着させていくのが得意
既存の顧客に対して従来よりも高品質や高付加価値のサービスや商品を提供することができます。豊富な資金や人材、ネットワークなどのリソースを活用できます。企業体力があるので消費者の生活に浸透させることができます。
スタートアップはA:ヒット作を生む「需要を生む」のが得意
今までになかった革新的なビジネスモデルや技術で、社会に新しい価値を提供します。短期的な成長を目指して事業売却や株式上場などの出口戦略を考えることが多いです(5年くらいしたら変わるかも)なのでストック・オプションなど金融手法も用いて優秀な人材を集めます。
AとBの両方が大事
Aヒット作を生む「需要を生む」だけだとやがて終わります。B「定着していく」だけだと、良いけど広まりにくい。「新しいこと」は、AとBの両方があって、はじめて持続可能なカタチになります。
5:上手くいくコツはどこにあるか?
「新しいこと」だけでは上手く行かない
新しいことは生み出した後のフォローアップも大事ですが、それ以外にもう一つ大事なことがあります。それは環境整備です。地ならしとでも言いましょうか。経営にも地ならし・ロジスティック機能は必要だと思います。
【空気を醸成する】
前回にも書きましたが、この「驚く」に至る「環境整備」が重要です。「空気を醸成する」必要があります。逆に言うと「空気の醸成」こそ最後の残された可能性のある領域と言えます。
これは大企業に有効です。つまり「空気に敏感な(空気に弱いとも言える)大企業の意思決定者」に効果を及ぼす「空気を醸し出す」活動をする。
それは、営業活動でなくマーケティングでもなく広報でもない「新しいロビー活動」と言えるでしょう。
これは前回にも書きましたが、新しいロビー活動は、渉外活動を行う営業もマーケも広報もできる人が必要です。しかしそんなヒトは少ないし一朝一夕では育ちません。これを現実的にするためには、ステージにあわせて各部署が協力してカバーすることが重要になります。(この連携方法は、企業のコミュニティ活動をその部署がやるのか問題と性質が似たところがあります)
6:「新しいこと」は「空気」で変えていく
★なぜ「2つの経済」について書くのか?
それは、2つの経済の狭間に多くの若者が感じる「悩ましい問題」の根っこがあるように感じる事が増えたからです。だから書いています。
それから、これは「大企業と付き合えばいい」って意味ではありません。前回、前々回を通じて書きましたが、経済とは人々が「幸せ」を生み出すための方法であり、皆んなで力を合わせて経済を上手く回していくことで良い方向へ向かうと信じています。だから書いています。
そして、体験的な確信で言うと「新しいこと」を平和的に進めるには「空気」で状況を変えていくのが最も効果的です。そして現代にあっていると思います。もう5,000字を超えていますのでココまでにしますが「空気の醸成」は様々なシチュエーションで効果を発揮すると予想します。(もし奇特な方で具体的な手法が知りたい場合はメッセージでお声がけください)
おわりに
私は社会人として育った環境のためか摩擦を恐れず楽しむ方ですが、それは現代の若い世代には向きません。そのことをよく知っています。なんだかんだ戦争も過酷な競争も少ない平和な時代が続いたからです。それはとても幸せなこと。しかし「新しいこと」を可能にするには、知恵と技術が必要になります。あとオモロいこと。それをシェアしたかった。
そして、もしあなたが何かに悩んでいるなら、それは既存経済とコミュニティ経済という2つの経済の狭間にある「何が問題だかよくわからない」状態にあるかもしれません。このコラムがヒントになれば嬉しいです。だから3回にわかって書きました。
私は楽観主義者でいたいと思います。だからこれからもよい知恵を出して具体的に貢献できればいいなと。やがて色んな方たちとディスカッションする機会ができれば嬉しいです。
貴重なお時間を割いてココまで読んで頂き感謝です。またリアルでnoteでお会いしましょう。ではまた。
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