「できる」医療者の能力を学ぶために
「できる」医療者、たとえば「できる」看護師の看護実践能力を学ぶため、教えるため、あるいは学習や仕事の経験を通して「できる」看護師に育つ/育てるためにはどのような前作業が必要になるでしょうか?
医療インストラクショナル・デザイン(医療ID)という問題解決の考え方と方法(テクノロジー)を使うと次のように考えることができます。
「できる」看護師は仕事をどうやって遂行するのだろう?というところからスタートします。人財開発のテクノロジー寄りではコンピテンシーを分析することになります。ま、同じことだと考えていいでしょう。
「できる」看護師はどのような能力を使って看護実践を行なっているのかを分析し、看護実践に必要な能力を洗い出す、という作業が前作業として必要になります。
能力は様々に分類できますが、ここでは観察して評価できるかできないかという視点で能力を分類しましょう。看護師の観察できる能力は言動、振る舞いや看護技術を実行する能力になります。
どんな状況でどのような発言、声かけを行うのか、単語の選び方、口調の選び方が言動の言に相当します。
忙しい時にナースコールがなった時にどのように振る舞うのか、4人部屋で4人の患者のケアを行う際、一人の患者に仕事とは関係ないことを質問された時どのように振る舞うのかは言動の動、振る舞いに相当します。
体位変換する、吸引する、注射するなどの運動技能は観察できる能力の代表例でしょう。
観察できない能力=目で見えない能力は頭の中で考える能力をいいます。例:問題文を読んで答えを書く場合、問題文を読んでから答えを鉛筆で紙に書くまでの間の能力になります。ちなみに鉛筆で紙に書くのは運動能力になります。この例を一般化すると、周囲の状況を頭の中にインプットし、その情報を処理し、行動に移すプランを生成したり選択するプロセスで必要になるのが考える能力になります。
患者安全TeamSimゲームでは次の12個の能力を同定しました。認識する、予測する、生成する、リハーサルする、判断する、選択する、報告する、中断する、中止する、アセスメントする、臨床推論する、振り返るの12個になります(中断する、注視するは態度能力を含みます)。これらの脳力動詞が「できる」看護師のコアコンピテンシーになります。
与えられた状況に対し能力を用いてアウトプットできること、それが能力になります。
カリキュラムのシラバスにある理解する、説明するは仕事をする能力の前提にはなっても仕事の能力ではありません。理解する、説明できるようになると書いてあるシラバスの授業を受けても実践能力の獲得はできません、ということにどれくらいの教員が気付いているのでしょうか・・・?。