医療教授システム学のゴール
医療教授システム学はインストラクショナルデザイン(教授システム学)を基盤とする領域横断的なサイエンスであり、以下のゴールを達成することで良質で安全な医療・ヘルスケアの人財的かつ組織的な成長を支援します。
1.医療実践能力を獲得することで自己実現を最大化できる。
2.患者安全を担保する医療実践の手続きを習慣化している。
3.医療実践の手続きと知識セットを構造化し成長をし続ける。
4.効果的に考え効果的に行動し効果的に協調し成果をだせる。
5.人財発達の文化と仕組みの設計・実施・評価のサイクルを回せる。
5つのゴールの説明
医療実践能力とは、良質で安全な医療を実践する、効果的(期待される結果を出す)・効率的(時間通りに終わる)・魅力的(一緒に働いて楽しい)に仕事ができる能力のことで、これらの能力(コンピテンシー)を発揮することで賢い働き方(残業が必要ない、自分の時間を確保できる、ストレスがない)が可能となり、結果的に自己実現を最大化できると考えられます。
患者安全は医療実践能力に組み込まれているべきで、そのように学ぶ/教える必要があると考えます。換言すると、患者安全は医療実践の習慣として獲得する能力であり、医療実践とは別の教育・トレーニングを要する能力ではないと考えられます。
変化し続ける医療実践、増え続ける医療情報に対応しつつ、多様な医療の状況に応じて医療実践能力を発揮する前提は、柔軟性と拡張性が高い知識構造(医療実践に際して用いる長期記憶の構造)になります。「できる」医療職はこのような知識構造を有していますが、その知識構造を学ぶ/教えるために形式知化した教授設計モデルがゴールド・メソッドになります。ゴールド・メソッドを用いることで「できる」医療職の能力を医療実践の手続き(スクリプト)と知識セット(スキーマ)として教材化することが可能になります。
効果的に考え効果的に行動し効果的に協調し成果をあげる能力は21世紀に生きる力として同定されています。これらの4つの能力は医療職にも必要になります。
個人は自分自身のリーダーであるだけでなく、組織や職場のリーダーとしても能力を発揮します。リーダーの能力には人財発達の文化と仕組みの設計・実施・評価のサイクルを回し続ける能力があります。
医療教授システム学として5つのゴールを同定しました。日本医療教授システム学会の活動はどれをとってもこれら5つのゴール達成に深く関わっています。日本医療教授システム学会が開発・普及する教材セットやセミナーについても同じことが言えます。
次にここでまとめた5つのゴールを達成するために医療教授システムが採用する第一原理について説明します。