セカンドライフ20年から見る「メタバース」の未来への示唆
創設20年になるセカンドライフから「メタバース」の未来にどういう示唆を見出せるかについて、リンデンラボ創設者フィリップ・ローズデールのインタビュー。プラットフォーム経済のあり方にとって普遍的に面白い論点が二つ挙げられていたので抄訳メモです。
Second Life: What this 20-year-old virtual world can tell us about the future of the metaverse
●「他の様々なメタバースとセカンドライフの大きな違いは、セカンドライフの収益が、ホスティングや所有土地不動産料金、仮想商品料金などの料金で賄われていることだ。重要なのはセカンドライフは広告から利益を得ていないこと、つまりアテンションの獲得や行動修正、ターゲティングから利益を得ていないことだ。我々はシステムとしてユーザーが互いにマニピュレートする仕組みに関心がなく、提供もしておらず、これは大きな違いだ。広告に基づいてメタバースを構築することがあれば、我々はターゲティング広告以上の害悪を我々自身にもたらすことになる。」
→なるほど確かに、これからのメタバース(であれ何であれ没入的だったり生活空間に広く関わるプラットフォーム)がアテンションエコノミーあるいは監視資本主義のビジネスモデルを採るのかどうか、どういうビジネスモデルが最終的に生き残るのか、法や制度はどういうビジネスモデルを(もしするなら)促進する・抑制する形で形成されるべきなのかは、結構重要な論点だなと思ったのでした。
●「メタバースのガバナンスは、個人とコミュニティのバランスと、ローカルグループやローカルコミュニティへのフォーカスにより可能になる。例えば特定の地域に住む人々によるセルフガバナンスが可能なようにアーキテクチャを作るのは容易だ。 仮想世界では私的に公的に膨大な時間を過ごすようになる。もし、そのような世界が、私たちに対して何でもできる単一の企業によってほとんどコントロールされているとしたら、それがどれほどディストピア的で恐ろしい結果をもたらす可能性があるか、容易に想像することができる。我々は、ビデオゲームによく似た初期の実験から卒業し、オープンで安全な、ある種の汎用的なアーキテクチャに移行しなければならない。」
→私的・公的な活動が広くそこで行われるようになればこそ(なるとすれば)のセルフガバナンスの重要性。スマートシティデータが企業に管理されることへの警戒から地域主権型のデータトラストが論じられ始めたことに近いかもしれない。トップダウンとボトムアップのバランスは二者択一ではないので、最初のビジネスモデルの問題とも深く関連して、知識コモンズ論的なコミュニティガバナンスメカニズムの経験的アプローチがより重要になるのだと思います。