四季を観に
昨日の昼前、私たち、つまり私と同僚は劇団四季を観るべく長良川国際会議場に向かった。
『ジーザス・クライスト=スーパースター』というタイトルの公演である。キリストが十字架にかけらるまでの7日間を演じる作品だ。
以下、作品自体の内容にはふれない。ネタバレを気にするひとは安心してほしい。内容が知りたい方は読む必要はない。(けど読んでほしい)
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「あれ。どこもあいてねえなあ」
運転する同僚が溢す。
会場である長良川国際会議場は目前。
いや、何度も何度も通り過ぎている。
いまは開場した時分。開演は1時間前。
駐車場は少なくないのだが、どの駐車場にも『満』の赤い字。『満』『満』『満』
長良川国際会議場の周りは人で賑わっていた。
なにかがおかしい。四季が人気だとしても、こんなことになるだろうか。岐阜だぞ。むしろあれか、岐阜だからか。(岐阜の方、すみません)
更にグルグルまわっていると、謎の立て看板を発見。
『メモリアル 1日 00円』
どうやら駐車場の案内らしい。
ぼくは助手席でスマホで使い付近の情報を集める。
メモリアルというのは、今、私たちが向かっている長良川国際会議場のすぐ側の施設で、岐阜メモリアルセンター(総合スポーツ施設)のことらしい。
いま起こっている混雑は、そこの一部の長良川球場で、高校野球が行われていることが原因であると知った。
「背に腹は代えられねえ。ここにするか」と同僚。
地元の土地持ちの敷地。砂利が敷き詰められただけの、臨時の駐車場。麦わら帽子にサングラスをかけたおじいが近づいてくる。
パワーウインドウを下げる同僚。おじいが口を開く
「1日1,500円」
同僚が蚊を追い払うようなジェスチャーをする。開演30分前である。
1,500円なら、俺が払うよ。それより、観れなかったら最悪じゃん。チケット代もパーだよ。「背に腹、代えんなよ」心の中でつぶやいたが、バックミラーに映るおじいはどんどん小さくなっていった。
「こうなったら灯台下暗し。岐阜メモリアルセンターへ向かおう」と同僚。
ええええ、むしろ逆じゃない?遠ざかって、すこし遠くのパーキングに停めて、15分歩くとか、そっちの方が現実的では?とおもっているうちにメモリアルに到着。
駐車場の表示は、『空』が青く光っている。
おおおおおおおおおおおおおい。高校野球を観にきた君たち?あいているよ、駐車場。ちゃんと会場に停めようねえ?
顔はニッコリ、青筋を立てた顔で、誰かを責めるところを想像して溜飲を下げた。
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なんとか遅れることなく会場に到着。開演5分前までは、ステージの写真が撮れる。楽しみ。けど、四季劇場とは勝手が違うのか、今回は飾り付けが簡素。いや演目上なんだろうけど、それにしても簡素。キャッツ等の公演のときは入場した瞬間に「まあ素敵」心が躍るのだけど。
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というわけで観劇。内容には触れない。
けど、やっぱり四季。
はじまってみるととても引き込まれる。感動。
今回は、S席10,000円、A席8,000円、B席5,000円。
そのうちの一番安いB席を買ったんだけど、遠くても満足。割と、遠いなら遠いで逆に楽しめたりする気がする。
近い席だと臨場感があって、迫力が凄かったり、あと、推しの役者さんがいる場合なんかはいいんだろうけど。
遠い方が全体的に眺めることができて、演劇を観ているぞって気持ちになりやすい。近い席だと個人的にはドラマを観ているような視点になる気がするので……
なんて、SやA席は、あまり買えない貧乏性だからひねくれて書いているだけなのかもしれない(笑)
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キリストが磔になったところで終演。
照明が消える。拍手喝采。照明が灯る。演者が綺麗に並ぶ。お辞儀をする。手を振る。
照明が消える。拍手喝采。照明が灯る。演者が綺麗に並ぶ。お辞儀をする。手を振る。
それを何度も繰り返す。
カーテンコール。
この時間が至福。最高なんよ!
拍手をおくる人、拍手をおくられる演者、拍手をおくる俺。それらの一体感。アイドルの推し活はやったことないけど、これぞ推し活の醍醐味なのでは、って思う。今回も手のひらが痛くなった。
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帰り道。ラーメン屋に入った。
ぼくは麺をすすりながら「凄いなあ。四季。俳優さんは歌もうまいし、動けるし。凄いなあ」ぼくなんて年々、体は重くなるし、もう駄目だな~、なんて溢していたら
「もう40歳でしょ。初老じゃん。老いも感じる時期だよ」ラーメンにニンニクペーストを混ぜる同僚。
そうなんですよね、と。
歯ぎしりが酷く、歯を破折させて、はやくも入れ歯をつけている自分。本当に老いを感じる。あるいは他のひとよりもはやいだろう。
「あ。でもさ、さっきの公演の主役の俳優。40歳だってよ。一緒の歳じゃん」
炒飯を頬張っているときに、スマホ片手の同僚が言った。
若さが欲し~(とりわけ気持ちの面で)
イケメンになりた~い(そのままの意味で)
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