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この結果を見てもまだ従来型のインフルエンサーマーケティングを続けますか?

先日リリースした調査結果について、僕なりの解説と提言をします。

企業のマーケティングゴールは、限られた予算内で、できる限りたくさん買ってもらうことです。

たくさん買ってもらうためには、たくさんの人の意識と態度変容をしなきゃなりません。

消費者の意識変容(認知獲得や興味喚起)や態度変容(好意度向上や購入意向の向上など)を行うために、私たちマーケターは昼夜知恵を絞るわけですが、多くの場所で言われているように、いままでのやり方だけではうまくいかなくなってきているのが現状です。

Paid(広告)の影響力は低下し、多くの人はEarned(番組や記事)とShared(クチコミ)によって商品を知ったり、興味を持ったり、好きになったり、買いたい気持ちになるようになりました。

これが、ソーシャルメディアやインフルエンサーが注目される背景です。

※詳しくはここに書いてあります

ということで、このあたりの実態を正確に整理することによって、企業の宣伝・PR・マーケティング担当者が今後の予算配分や施策を検討する一助になれたらいいなと思い、調査を実施しました。

※全データを収録した調査報告書は下記からどなたでも無料でダウンロードできます

このnoteでは、僕なりの所感と(少し暑苦しい提言)をしたいと思います。

プラットフォーム別の影響領域

research_3_プラットフォーム別の影響領域

このデータは「それぞれの場所で接触したときの影響度を表しているもの」であり、「影響を与えている人数」を指しているものではありません。InstagramよりもテレビCMの方が(年代にもよりますが)概ねリーチが広いので、影響度はインスタの方が大きくても、影響人数はテレビの方が多い(と推察される)と理解してください。

Instagram、Twitter、YouTube、友人・知人が、テレビCMとほぼ同等またはそれ以上の影響度を持っていることがわかります。

特にInstagramとTwitterは、認知獲得と興味喚起に続く理解促進や購入意向の向上、好意形成、リピート購入、推奨段階で大きな影響を与えています。

InstagramとTwitterは、フィードに流れるフロー型コンテンツによる認知向上・興味喚起力と、検索したときのリアリティ・リアルタイム性による理解促進・購入意向の向上の両方に強みを持つことが原因なのかなと。

[メディア別]商品カテゴリーとの相性

タッチポイントは、テレビCM、友人・知人からの推奨、Twitter、Instagram、YouTube、LINE、Facebookなど、たくさんあるわけですが、商品のカテゴリーごとに合う・合わないの相性があるはずなので、そこを調査しました。

縦横軸に「興味喚起」と「購入意向の向上」を置いたのは、行動変容(実購入)につながる重要なKGIだと思っているからです。

いつも言っていることですが、「認知はお金で買えるが、興味や購入意向はお金では買えない」のです。

ある程度の予算を持っている(または使ってきた)大企業の多くは、認知は足りているが、興味や購入意向が上がらない課題を持っています。

予算が少ない中小企業やベンチャーは認知に課題を持っていますが、ここではある程度認知されている商品やサービスの売上を向上させるためのKGI(興味喚起と購入意向の向上)に重点を置いて考察しました。

テレビCM

TwitterやInstagramの考察をしても、それが高いのか低いのか判断がしづらいと思うので、テレビCMをベンチマークにしましょう。

research_4-6_興味・購入意向に影響のある商品カテ_TVCM

20カテゴリーの中で、テレビCMと一番相性が良いのは、お菓子であることがわかります。

一方のビールは、ある程度関与度が高い嗜好品ではあるものの、テレビCMを流してもお菓子よりは興味喚起や購入意向の向上が進まない特徴を持ちます。

これはビールはテレビCMとの相性が悪いということではなく、コモディティ化した商材が持つ宿命のようなもので、メディア(タッチポイント)の選択だけではコミュニケーション上の課題を解決することはできないことを意味します。

Twitter

research_4-1_興味・購入意向に影響のある商品カテ_Tw

20カテゴリーの点がプロットされている場所が、テレビCMとほとんど大差ないことから、TwitterはテレビCMと同等の興味喚起力と購入意向の向上力を有していることがわかります(くどいですがリーチは異なります)。

中でもポイントメイクはTwitterと相性が良いですね。これはTwitterのユーザー層に若年層が多いことや、Twitter検索でのリアリティ・リアルタイム性が寄与していることが要因と考えられます。

Instagram

research_4-2_興味・購入意向に影響のある商品カテ_IG

20カテゴリーの点がごそっと右上に移動しました。やっぱりInstagramはすごいですね。

特筆すべきは、購入意向の向上力です。

今回考察したメディアやプラットフォームの中でダントツの結果です。

Instagramは、商材によりますが、総じて、興味喚起させるだけでなく、買いたいと思わせる力も強いことがデータにも表れました。

各社がInstagramに注目するのも、これで合点が行きますね。

ポイントメイクは、画像(最近は動画)との相性が良く、また、ハッシュタグによる雰囲気検索ができることも影響度が大きい要因と思われます。

ポイントメイクやお菓子くらい特徴が顕著な商材は、売上におけるTwitterおよびInstagramの影響(寄与度)のインパクトがかなり大きくなっているということです。

つまり、全体の売上に占めるSNSの影響度が大きい=インフルエンサーマーケティング、UGC創出プロモーション、公式アカウント運営などを頑張ると、ちゃんと(ある程度大きな)売上として返ってくるということです。

YouTube

research_4-3_興味・購入意向に影響のある商品カテ_YT

YouTuberへの熱視線が注がれているYouTubeは、テレビCMと同様の結果となりました。

メイク技術は動画の方が100倍わかりやすいですから、ポイントメイクはYouTubeでも高い結果となりました。

友人・知人

research_4-7_興味・購入意向に影響のある商品カテ_Friend

一般的に、友人や知人からの推奨は最強!と思われているかもしれませんが、実は興味喚起力でTwitterと同等、購入意向の向上ではInstagramの方が強いという結果になりました。

でも、考えてみるとそうじゃありませんか?

平均的なメイク技術を持つ近くの友だちよりも、インスタでフォローしている憧れの人や共感している人が推奨している商品の方が欲しくなる力が強いかもしれません。

日本にレビューサイトができてから20年。SNSが普及して15年が経ちました。

私たちは、リアルな友人や知人と同等、ときにそれ以上に、レビューサイトのクチコミ(の平均値)や、会ったことはないが、憧れや尊敬や共感をしているフォロイー(フォローしている人)に大きく影響を受けるようになったのです。

インフルエンサー最強説は誤り?

次に興味深いデータがこれ。

一定の仮説があったんですが、見事に当たっていました。

research_5_投稿者別の影響領域

大事なことを言います。

マーケティングのゴールは、限られた予算内で、できるかぎりたくさん買ってもらうこと。

マーケティングコミュニケーションのゴールは、商材が持つコミュニケーション上の課題を解決し、マーケティングゴールに近づくこと。

コミュニケーション上の課題は、意識変容(認知獲得・興味喚起)か、態度変容(好意度の向上・購入意向の向上)のどちらか、または両方です。

インフルエンサーマーケティングは、手段であって目的ではありません。

では、インフルエンサーマーケティングの目的とは何か

先に書いたとおり、意識変容・態度変容に代表されるコミュニケーション上の課題を解決することで、マーケティングゴールに近づくことです。

つまり、どんなにフォロワーが多くても、フォロワーの意識変容や態度変容を起こせていなければまったく意味がないのです。

ここでは、インフルエンサーのほかに、特定のカテゴリーや領域に詳しい投稿者(≒マイクロインフルエンサー/オピニオンリーダー)と、ライフスタイルや趣味が自分と似ている投稿者(≒共通の興味関心を持ったトライブに属する共感者)を設問に加えています。

そして、意識変容・態度変容・行動変容のすべてにおいて、インフルエンサーよりも大きな影響を与えていることがわかりました。

影響度であって影響人数の話ではありません。

ファンでもないインフルエンサーを起用することに(あまり)意味はないことはここでも書きました。

インフルエンサーは、巨大はフォロワー数を持つため、確かに「インプレッション効果」はあります。

そして、一部の「真のインフルエンサー」は、認知効果だけでなく、興味喚起の力も有することは事実です。

しかし、一番の問題は、金銭的な契約関係によって投稿されるUGCは、数が少なく、そして持続可能ではないのです。

消費者の意識・態度・行動変容は、ある一時だけ行えば良いものではなく、ずっと続けなければなりません。

そして、インフルエンサーに期待することは、広告では解決することのできない意識・態度変容上の課題を解決することのはずです。

つまり、認知ではなく、興味喚起、理解促進、好意度の向上、購入意向の向上、購入の促進、リピートの促進、ファン化の促進などであるべきです。

そこを担ってくれるのが、あなたの商品・サービスにとって意味のあるマイクロインフルエンサー/オピニオンリーダーや、あなたの商品・サービスが属するトライブにいる影響者なのです。

ぜひ、その人たちを見つけ出し、金銭的契約ではない本質的なリレーション活動を始めてください。

トライブ=共通の興味関心を持った集団のこと。クローズドのコミュニティに限らず、インスタのハッシュタグも広義のトライブと考えることができます。

僕は、従来型のインフルエンサーのフォロワー数(インプレッション力)をお金で買うやり方は、長続きしないと思っています。

それがこのデータにも表れています。

60~80%の人が #PR を知らない(理解していない)

research_12_性年代別:「#PR」投稿の認知度

「もしかして…」と思って調査をしてみたら、やっぱりそうでした。

広告業界では当たり前の「#PR」は、一般消費者の中では60~80%が「知らない」もしくは「知っていても、その意味を理解していない」という結果になりました。

広告が効きにくくなってきたから、インフルエンサーという隠れ蓑を着て広告メッセージを配信する。でも、それは消費者を騙すことになるから、「#PR」をつけてステマにならないようにする。

これが業界内につくられたルールだったわけですが、本来、広告であるメッセージを、「#AD」や「#Sponsored」ではなく「#PR」でOKとしたことに業界の下心が透けて見えます。

PRとはPublic Relationsの略で、ステークホルダー(利害関係者)との良好な関係を形成・維持するためのコミュニケーション活動を指します。

ステークホルダーには顧客だけでなく、すべての消費者、社員、取引先、投資家、地域社会などが含まれます。なにしろ、パブリック(公共)とのリレーションズ(信頼関係づくり)なのですから。

広告(Advertising)とPR(Public Relations)は同じコミュニケーション活動でも、まったく別のものです。広告のゴールは「売上」であり、PR(広報)のゴールは信頼関係づくりです。

インフルエンサーが企業と契約をして発信している情報は、99%が「売ることをゴールにした広告」です。

であるならば、「#PR」ではなく、「#AD」「#Sponsored」とつけなければなりません。

個人的には、「#AD」でも要件を満たしていないと感じます。

なぜなら、ほとんどの日本人(消費者)は、「AD=Advertising=広告」と認知しないからです。

インフルエンサーの投稿に「#PR」をつけることの目的は、消費者にオーガニックな投稿ではないと認識させることのはずです。

であるならば、素直に「#広告」とつけるべきなのです。

しかし、「#広告」とつけると、あからさまに効果が下がるでしょう。だからこそ、多くの案件では、「#PR」と付け、お茶を濁しているのです。

広告代理店も、企業の宣伝・マーケティング担当者も、ほとんどの消費者が「#PR」を知らない、もしくは理解していない事実にうすうす気づいているはずです。

気づいているけど、「#広告」ではなく「#PR」と付け、インフルエンサー投稿をお金で買い続ける。

コアパーパス経営、CSV(Creating Shared Value)やSDGsが叫ばれる現代においても、いまだ不誠実なコミュニケーションが横行し、短期的な売上の獲得のために消費者をあざむき続ける。

ソーシャルメディアはすべてを丸裸にする社会装置です。不誠実なやり方は、短期的にはよくても、そのツケはいつか必ず回ってきます。

何のために商売をしているのか。こんな時代だからこそ、私たちは改めて正直なマーケティングに回帰すべきなのではないでしょうか。

オリオンビールの早瀬社長、かっこいいです。

インフルエンサーを好きじゃなくなる理由

research_25_性年代別:「インフルエンサー」を好きではなくなった理由

好きだったインフルエンサーを好きじゃなくなる理由です。

「信頼できない内容の投稿を見たから」に次いで、「#PR投稿(タイアップ投稿)が増えたから」が第2位です。

企業の不誠実なインフルエンサーマーケティングによって、EarnedとSharedの中で信頼を得たインフルエンサーがPaid化され、人気を失っているのです。

私たちは、インフルエンサーという個人が、長い年月をかけて蓄積した信頼資本を宣伝費との換金によって切り崩させるべきではありません。それは明らかに誠意のないWin-Loseの取引です。

まとめ

途中から調査報告書の解説ではなく、僕の個人的な思いの発露になってしまいましたがご容赦ください。

全データを収録した調査報告書は、下記からどなたでも無料でダウンロードできますので、興味がある方はぜひ見てみてください。

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