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「海とプラスチックの学校」を終えて。 楽しむ、共有する、継続する。#プラスチックC が教えてくれたこと。
3連休最初の土曜日の夕刻、茅ヶ崎の海のシンボル的モニュメント「茅ヶ崎サザンC」周辺に歓声が沸き起こりました。
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いつものメタリックカラーから、突如カラフルな「プラスチックC」へと姿を変えたモニュメントに、道行く人はスマホを向け、子どもたちは大はしゃぎ。集合写真を見返すと…映っているだけでなんと50人。
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この場にいなくても、展示していた3日間、「#プラスチックC」で発信してくださった方は約90人。実に多くの人が、この企画に参加し、海洋プラスチック問題を自分ごととして発信してくれました。
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海洋プラスチック問題を、自分ごとに。
始まりは、Cの辺りのライブラリーオーナー・井手敏和さんから
『プラスチックの海』を上映しませんか?
とお声がけいただいたこと。『プラスチックの海』は、地球規模の海洋プラスチック問題の現実を伝えるイギリスの映画で、その日本語吹き替え版の上映権をクラウドファンディングで獲得されたという。その会場として、海が目の前の「Cの辺り」を選んでくださったのだ。
映画を試聴してみると、「ここまできているんだ…」と、ますます深刻化する海洋プラスチック問題を真正面から突きつけられる内容。これを観れば、現実を知ることができる。ただ、「じゃあどうすればいいか?」は深い闇のままで終わってしまうのかもしれない…。
そう思った私たちは、この映画上映のゴールを参加者一人ひとりの「行動」に置くことにした。しかも、「みんなで」「楽しみながら」。
楽しくなければ、続かない。みんなとならば、遠くまで行ける。
これは私たち夫婦がこれまで企画や情報発信に携わる中で、痛感してきたこと。そこで企画したのが、「海とプラスチックの学校」。
教室で決まった「答え」を教えてもらうのではなく、
海風に吹かれながら語り、触れて、遊んで、楽しみながら
自分だけの答えを探求し、行動する。
子どもも大人も、みんなに開かれた
「海とプラスチックの学校」
サザンビーチで開校します!
「映画」と「トーク」と「清掃」と「アート」。学校風に、4限目までを設定した。
完成したアートは、メッセージとして多くの人に見ていただきたい。茅ヶ崎市観光協会の後援をいただき、茅ヶ崎市の海のシンボル的モニュメント「茅ヶ崎サザンC」をマイクロプラスチックで彩ることにした。3連休中、そのまま展示する許可をいただけたことには、観光協会さんの懐の深さに、ただただ感謝でしかない。
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上映テストもモニュメントの型取りもOK。「マイクロプラスチック回収ボックス」を設置し、ビーチクリーンをして、プラスチックごみも集まった。
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さて、どこまでみんなの行動へとつなげていけるのか…?
当日参加者130人。アートをゴールにした4時間
こうして迎えたイベント当日。天候にも恵まれ、すでに申し込みで満席だった映画とトークには、子供と大人、合計40名が駆けつけてくれた。
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1限目「映画の時間」。映画「プラスチックの海」を上映し、今起きていることを、子どもも大人もみんなで目撃した。子どもたちも飽きることなく、最後まで静かに鑑賞できた。
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2限目「トークの時間」。茅ヶ崎市の活動家とともに、現在と未来について語り合った。4月からはじまるゴミ有料化の意味についても茅ヶ崎市の職員さんに共有いただき、立場を超えた、等身大の「それぞれができること」についての対話が交わされた。
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3限目「清掃の時間」。Cの辺りの目の前に広がるサザンビーチに繰り出し、ビーチクリーンを実施。1組1平方メートルの範囲を徹底的に取り切る方法で、海洋プラスチックごみを採取した。この後アートになると思うと、プラスチックごみが宝物のように見えてくる。
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4限目「アートの時間」。茅ヶ崎で拾ったプラスチックごみで、茅ヶ崎のシンボルをアート。子どもから大人まで、イベントフル参加の人も通りがかりの人も、総勢100人の力で、カラフルに彩られたアート作品が完成した。
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「伝わっている」という実感
「海とプラスチックの学校」は、イベント当日のみでは終わらなかった。
施したアートがは、市民がジョギングやお散歩に利用する人通りの多いサイクリングロード沿いにある。3連休期間中展示が行われたため、多くの人が目にし、撮影し、SNSを通してハッシュタグ「#プラスチックC」で発信してくれた。
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一方でイベント参加者は、自分のアートしたアルファベットを誇るように紹介してくれた。
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投稿に添えられたコメントには、
海が好きだ好きだと言っているだけでなくちゃんと行動も伴うようにします。
海の近くに住む者の一人として、海洋ごみ問題、環境破壊にも関心を持たなければならないなと思いました。
普段の生活でできるだけプラスチックのゴミを出さないように工夫することも大切ですね
といった嬉しい言葉が続々と届いた。
「伝わっているんだな」というあたたかな実感と共に過ごした3連休だった。
プロセスを共有する、関わり代を作る
当日参加者130人、SNS投稿90件。
今回、ここまでたくさんの人がこの企画に参加してくださった背景には、近年の海洋プラスチック問題への関心の高さもさることながら、つくるプロセスを共有し続け、関り代を大事にしたイベント設計が功を奏したのだとも思う。
私たちはCの辺りの運営において、大切にしたい5つのbeを定めている。
「つくる」「つながる」「もちよる」「たすけられる」「おもしろがる」
運営者と消費者、オーナーとメンバーという壁を少しずつ取り払い、みんながオーナーシップを持って参加する場づくり。そこで育まれる関係資本が最大化することを、あらゆる場面で大切にしている。(夫はこのことを「関係資本主義」と呼んでいますが、これについてはまた別途書こうと思います。)
今回のイベントづくりにおいても、Cの辺りに関心のある方々が参加するFacebookグループにて、企画段階から当日までのプロセスを全てオープンに発信し、開催前には「当日お手伝いさん」も募集。約10名の方が手を挙げ、当日はつくる側の立場で力を発揮してくれた。
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イベント設計においても、映画とトークだけではなく、ビーチクリーンとアートという「行動」と「体感」を組み込んだのは、参加者が海洋プラスチック問題について当事者意識を持てるようになることを大切なゴールの一つとして捉えたから。
ビーチクリーンによって、自分がいつも散歩している砂浜にもマイクロプラスチックが点在していることを体感する。拾ったマイクロプラスチックを一つ一つ手に取り、「これはボールペンのペン先だったものだね」「緑は人工芝だ」「洗濯バサミの先かな?」「なんでこんなものが落ちているんだろう?」と考えながらアートを楽しみ、自分の作品が、みんなが目にするアートの一部になるという喜びを感じる。
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そんなふうに、楽しみながら行動することによって、このイベントのテーマが自分ごと化していくのだろうと考えた。
実際にイベント後、お手伝いさんも参加者のみなさんも、自分ごととして行動や発信をしてくれた。イベントの翌朝、「みんな足を止めて見ていましたよ」とお手伝いさんから報告をいただいたり、参加した子どもが、家族みんなを連れて再びモニュメントを訪れ、自慢げに話していたり。SNSでも、「みなさん、#プラスチックC で発信してください!」と、主催者目線のメッセージを届けてくれた。
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きっと彼らの中には、ただ見て聞いただけでは得られなかった当事者意識が芽生えたのではないかと思う。
打ち上げ花火に終わらせないために
今回のような社会問題をテーマとしたイベント設計においてさらに大事なのは、「継続」だと思う。関わってくれたみなさんが、気づきを暮らしの中に落とし込み、継続的に行動していけるか。
海を見たとき、Cのモニュメントの前を通ったとき、この気づきを思い出すことはできると思う。ただそこで、「プラスチックごみを減らそう」とか「ビーチクリーンしてみよう」と再び行動へと移していけるかどうか。
その方法に関しては、私たちもまだ模索中。まずは主催者から継続していこうと、「Cの辺り」では、取り外したモニュメントと装飾されたアルファベットを、室内に展示することに。
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さらに、ビーチクリーンをした人がいつでもCの辺りに持ち込めるように、マイクロプラスチック回収ボックスを常設することにした。
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回収したマイクロプラスチックを用いて、地元アーティストとのコラボレーションもできたら、小さな経済圏をつくれたら、なんて構想も動き始めている。
どんな場面においても、一番難しいのは「継続」。特にイベントは、”打ち上げ花火”で終わってしまいがちだ。そこをいかにデザインしていけるか。これからも私たちの模索と実験は続いていく。
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「みんなで」「楽しむ」ということの力を信じて
SDGsの認知も向上し、社会的取り組みが当たり前になりつつある今。最近は、SDGs「っぽい」ことも見られるようになった。
ビーチクリーン参加者にペットボトルを配る、とか。
「環境に優しい」とうたっている商品の先に児童労働があった、とか。
『グリーン・ライ〜エコの嘘〜』という映画まで登場している。
マイクロプラスチックを使ったアートもよく見られるようになり、「そんなことして何になるの?」と疑問視する声も耳にする。
でも私たちは、「みんなで」「楽しむ」ということの可能性を信じたい。ひとりで頭で考えるのではなく、みんなで行動する。身体性を伴った体験を誰かと共有することで、心が動く。そんな体感はきっと、その後もその人の中に、根付いていく。
そう信じて、私たちはまた行動と発信を続けていこうと思う。私たちだけじゃできないから、いつどんなときも、想いを共有しているみなさんとともに、楽しみながら。
よろしければ、ご一緒に。
「Cの辺り」の扉はいつも、開いています。
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