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教えるプロは、受講生の満足の先をみる

 「教えるプロ」(講師、コンサルタント、専門家など、誰かに教えることを職業とする人の総称)を目指す、あるいはすでに活動を始めた人が自分自身の経験をパッケージ化・コンテンツ化して人前で話すとき、覚えておきたい言葉は「QCは次工程」というものだ。

 これは、私がかけだしの講師だったころ、メーカー出身のベテラン講師に教えてもらった言葉だ。

 QC(=quality control)とは、1990年代メーカーで大流行だった品質管理活動のこと。製品の品質を一定以上に保つために、次の工程までを視野に入れた行動を意識するという意味で「QCは次工程」という言葉を教わった。

 人前で話すとき、素人は目の前で話を聞いてくれている人の満足度だけを意識する。しかし「教えるプロ」となる以上、話を聞いている人だけでなく、話す場を提供してくれた依頼者の意図も正確に汲み、依頼者が満足する結果も用意する必要があるのだ。 

 仮に参加者のアンケートの満足度が100%だったとしても、参加を依頼してくれた人・会社の目的を達成できていないとしたら、あなたを呼んで良かった!とは思われない。ましてやリピート依頼は望めない。
 
 例えば雑誌社から依頼を受けての講演で話すとすると、直接伝える相手はその雑誌の読者だ。もちろん、雑誌の読者に「おもしろかった」「ためになった」という感想を言ってもらえることは第一のゴールなわけだが、その雑誌社には「講読率向上」や「定期購読契約の増加」「雑誌の認知度アップ」などなど、講師としてあなたを呼んだ「裏の意図」があるはずだ。だからその「裏の意図」についても、きちんと事前にヒアリングし、ゴールをすりあわせる必要がある。

 会社からの依頼ではなく、小さなコミュニティでの発表でも同様だ。呼んでくれた人は表向きは「あなたの知識を私のコミュニティのみんなに教えて欲しい」と言っていても、ホンネは「自分が言うと聞いてくれないから、代わりに私の想いを代弁してほしい」ということだってある。

 また、自分を講師として依頼した人が、社内で評価されるような講演をすることを心がける必要がある。「なんであんな人呼んじゃったの」と、依頼者の評価が下がるようなことは決してあってはならない。

 つまり、「講演終了」をゴールに設定してはいけないのだ。講演後どうなるか、本当に望む変化は何か、どういう結果が得られれば依頼者が満足するかを、事前にどれだけ情報収集できたかが勝負なのだ。

 「QCは次工程」という言葉を教えてもらってから、私自身も次のことを意識するようになった。その結果、聴衆の満足度が上がったのと同時に、リピートの講演依頼、取材依頼が格段に増えた。

●自分が講師として呼ばれた意味を正確に理解し
●自らの話で参加者が満足するのは当然のこと、その後の参加者の行動まで気を配り
●(関係構築できてきたら)数値目標を掲げ、依頼元の社員の皆さんと一緒にフィードバックミーティングを行い改善を続ける

 今回対象を「教えるプロ」に絞って書いたが、人前で話す仕事ではない人でも、何か依頼をされた時には「その依頼によって、相手はどういう未来を期待しているか?」いったんを立ち止まって考えてから仕事をすると、一歩先、二歩先の提案ができるようになるのでぜひ試してほしい。

 ゴールをどこに設定するかで、言葉も変わるし、意識も変わる。

 写真は、日本で2軒しか認定されていないビオホテル「おとぎの宿 米屋」さんの朝食。宿泊するその日だけでなく、宿泊する人の未来の健康まで考えているという意味で、一歩も二歩も先を行っていて感激した。

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池田千恵
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