見出し画像

結果を出している人に学ぶ「袋小路」を味方につける方法

結果を出す人は、みんなどこかで切羽詰まっている

 先日、敏腕ヘッドハンターの友人とランチしたとき「U理論」という考えを教えてもらった。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン校の経営学部上級講師、オットー・シャーマー博士によって提唱された、新たな現実を生み出すための理論だそうだ。(出所 https://bizhint.jp/keyword/99293)

 もともとU理論は個人のキャリアではなく組織開発から始まったものだそうだが、U理論は個人のキャリアにも多く当てはまるようだ。キャリア形成のプロセスでは「U」の文字のように、一度底を打って行き詰まり、今までいろいろ得てきた経験を一度ゼロリセットしてから能力を発揮する、ということから「U理論」と呼ぶらしい。

 「これから伸びる人の目利き」である彼女によると、転職先で成果を出せなかったとか、手がけたプロジェクト大失敗といったように、どこかで一度切羽詰まった経験がある人ほど、あとで結果を出したり、これから化けることが多いそうだ。今の自分じゃ到底ダメだという「底(U)」を見たからこそ分かることってたくさんあるのだなと感じた。

 その友人に「ちえのUはどこだった?」と聞かれた。失敗だらけで恥をかきっぱなしの人生なので「U」はたくさんあるけれど、ひとつめのU、それも底(というかほとんど闇?)が深いUは、大学に入学したときだったと思い出した。

暗黒の4年間が実は宝物だった 

 今まで答えを暗記して、すばやく答えるという勉強ばかりしていた私には、そもそも答えのないところから何かを作るという発想は全くなかった。そしてそれが「普通」だと思っていた。しかし入った大学は、まるで動物園のようにいろいろな学生がいて、私が考える「普通」からはほど遠い環境だった。学生時代から起業していたり、夢中になってものごとに取り組むあまりにひとつのことを極めていたり、自分が欲しいサークルがないから作ってしまえ!と、無から有を作り出したりといった、創造力の固まりみたいな人がたくさんいた。

 そんなみんなに比べ、私には何にもない、というコンプレックスにまみれた4年間だった。20年も(2浪だったから、大学1年でもう20歳だった)自分の頭で考えない人生を生きてきた自分ができることは何かをずっとずっと模索し、周囲のクリエイティビティ溢れる人に憧れ、比べ、落ち込み、嫉妬し、自己嫌悪にまみれ、人と比べることしかできず自分の良いところが何も見えずに過食症や拒食症になり、デニッシュ食パン1斤を一気に食べて吐いたりした。髪の毛もごっそり抜け、美容院で「何があったんですか?」と驚かれたりもした。

 表向きはリア充っぽく過ごしていたからか、同級生に後で話すと「そんなだったなんて全く気付かなかった」と言われるが、暗黒の4年間だった。しかし、「ただ暗記して人生を生きる、答えがある人生なんていやだ!自分の頭で考えて、自分がしたい人生を送るにはどうしたらいいのか?」を考える強烈なモチベーションになり、今の自分の礎を作ってくれたのが、この4年間だった。

 思えばそこから、私の人生は始まったといえるくらい強烈な出来事だった。私には何もない、という経験が、早起きで人生を変える決心となった。凡人が天才に憧れても、なれないものはなれない。私は凡人のまま、天才にはできない努力で人生変えてやる!と思ったのだった。

手痛い失敗からどう挽回するかがドラマだ

 先日ランチした尊敬する先輩の話でも、「あ、これはU理論だ」という話があった。彼は不動産投資でもう一生食べるに困らないほどの収入を得ている。「生きているうちにお金を使い切れないんじゃないか」と言っていた。(うらやましい!)もう、どこから見ても順風満帆の人生に見えるが、彼も最初の不動産投資で、自己破産一歩手前の大失敗をしたそうだ。そこで今までの自分のやり方を徹底的に見直し、自分なりの成功法則を見いだして、今の生活がある。不労所得があるから目先のお金にとらわれず、自分が好きだ、応援したい、というものに投資する生活をしている。

 一回手痛い失敗をし、「今の自分の延長じゃ無理!」と分かったとき、卓越したアイディアも生まれる。今までのやり方に固執せずにゼロベースで、必死でどうしたらいいか考えられるし、一度失敗したからこそ「こうすれば確実に失敗する」という知見が積み重なり、失敗を繰り返さずに済むのだ。

 やれない、とかお金があれば、とか時間があれば、と言って結局何もしない人は、実は底を見ていない。自分では今が底だと思って悩んでるかもしれないけど、まだまだそんなの底とは言えない。だって、本当に底を見れば、もう、行動するしか道がない。行動できないということは、そこまで深刻な事態ではないということだ。

 よく自己啓発本などで言われる「今のままのあなたでいいんだよ」は、半分正しく半分間違っている。存在は「今のままでいい」。けど、今のままで満足いかなかったり、納得できなかったり、状況が変わらないのであれば、行動は今のままじゃダメってことだ。

 切羽詰まって開き直って、よし!と腹をくくったとき、思い切って進んだ先に見える道がある。そこには成功があるかもしれないし、失敗があるかもしれない。でも、そのとき初めて、「今のままでいいんだよ」の本当の意味が分かると思う。チャレンジした人に世の中は優しいし、必ず分かってくれる人がいるということを。

「切羽詰まり」を意図的にマネジメントして成長していくには

 とはいえ、普通の人にいきなり「借金2000万してみろ」とか「誰もが絶対無理だと思う無謀なチャレンジをしてみろ」というのは、もちろん無理な話だ。先述のヘッドハンターの彼女によると、Uはひとつではなく、小さいUを積み重ねながらキャリアは構築されるそうだ。だから、まずはひとつめのUを経験することが大切だ。

 今の自分じゃちょっと無理かも?でもめいっぱい頑張ればいけるかも?というくらい背伸びしたチャレンジを繰り返してみよう。最初は失敗するかもしれないけれど、人生なんてすべてネタ。失敗したら「どうしたら失敗しないか」のデータを得ることができたということだ。そうして底から上がってきたら、もう少しレベルが高いところにチャレンジし、また底を感じる。その繰り返しが人生なのではないか。

 自分の「U」に気付くための有効な方法のひとつが、「自分商品化」(=「自分の価値がここにあるのではないかな?」と仮説を立て、パッケージ化し、値付けして販売しながら試行錯誤を繰り返すことで、どこででも通用するスキルを磨くこと)だ。自分商品化で小さく市場で価値を交換することを試していけば、明らかに自分に足りないところが見えてくるからだ。ダメだと思うこと、うまくいかないこと、自己嫌悪に陥ることだってたくさんある。でも、形にして発信して動き出さなければ、そもそもどこがダメかすらわからないのだ。

 会社員なら、今の職場にいたまま、社内公募などチャレンジできる環境に飛び込むのも良いと思うし、副業が認められているのなら、副業で自分ができることが何かについて学んでも良いだろう。せっかく、小さく初めて市場の反応を見ることができる環境があるのに、反応を見ずに自分の頭の中だけで完結させてしまうクセはやめたほうがいい。市場は怖いし凹むかもしれないけれど、その経験がのちに力になっていく。「自分商品化」を繰り返していくことが、「U」を繰り返し、成長していくためには必要な痛みだ。

 今後副業が解禁され、年金支給年齢がどんどん上がることが予想されている中、ずっと会社員のコスト感覚、市場感覚のまま定年まで過ごすと、自分に何ができて、どのくらいで売れるのか見当がつかない。そのまま定年後、ポイッと市場に放りだされたら悲惨だ。多くの会社員は会社の資産を自分自身の資産だと錯覚しているが、会社の看板を取ったときのまっさらな自分自身に何ができるか? というと、はっきり言えない人が大半だ。会社の看板を離れたとき「自分は何をしている人か」をしっかり語れるように、今、チャレンジできるうちに手痛い失敗をしていこう。

 写真は、品川女子学院の文化祭「白ばら祭」での朝活発表黒板。(朝活について情報提供しました)中学生のうちから、企業とコラボしたり取材したりしていてすごい。10代で市場の反応を見て経験を積んでいる彼女たちの将来が楽しみだな。

まとめ

●結果を出す人は、過去に「切羽詰まった経験」を必ずしている
●一回手痛い失敗をし、「今の自分の延長じゃ無理!」と分かったとき、卓越したアイディアが生まれる
●「切羽詰まり」は「自分商品化(=「自分の価値がここにあるのではないかな?」と仮説を立て、パッケージ化し、値付けして販売しながら試行錯誤を繰り返すことで、どこででも通用するスキルを磨くこと)」で意図的にマネジメントできる
●自分にはちょっと無理かも、とひるむようなことを少しずつ試し、チャレンジのハードルを少しずつ上げていこう
●一度市場にさらされ、凹む経験を繰り返していくことが今後の力になる


お知らせ

日経ウーマンオンラインで新連載始まりました。
"副業解禁時代の 「じぶん商品化戦略」”

 会社員で今後副業や独立を目指している人に向け、時間の切り売りではなく、価値を交換していく働き方について書いていきます。こちらもどうぞよろしくおねがいします。


いいなと思ったら応援しよう!

池田千恵
サポートありがとうございます!日々の創作活動に使わせていただきます。