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シゴラクAIはなぜMicrosoftの参入を歓迎するのか?|名著7POWERSとMoatの比較から考察


生成AIスタートアップのAlgomaticで、シゴラクAIという法人向けLLM活用支援事業の代表をしている池田です。

この事業ドメインは、Microsoftやソフトバンク、Y Combinatorが出資するスタートアップなどが参入し始めており、競争環境が激しいです。

その事業ドメインで事業開発を続けて5か月、この質問を毎日といってもいいくらい聞いています。


「マイクロソフトが同じ事業やってきたら、どうするの???」


多いときですと一日3回くらい聞かれてますね。笑


この質問について、競争優位性とかMoat(堀)の観点から考えていることを書いてみます。


1. このnote記事のテーマは何?


■想定している読者
・生成AIドメインやスタートアップの事業立ち上げに興味ある人向け
・事業立ち上げ中の方にも、事業立ち上げにこれから関わる方にも向けて。

■note記事のテーマ
・競争優位性やMoatといった競合に「どう勝つの?」というテーマ
・結論として、大手が採用できない「カウンター・ポジショニング」が一番大事。カウンター・ポジショニングは記事中で解説します。




2. 「マイクロソフトが同じ事業やってきたら、どうするの」という問いを考える


うーん、正直、悩ましい質問なんですよねこれ。笑

あまりにも日々聞かれすぎて、生成AI領域で事業作っている人なら、「あ~またか~。はいはい。」となっている人も多そう。

例えば、1年の間ずっとマーケットのペインやソリューションを支えるコア技術が変わらないような比較的静的なドメインなら、成功パターンの踏襲タイムマシン経営をするなど、勝てる仮説を持ちやすいかもしれません。


しかし、生成AIドメインは、「新しいドメインすぎて勝てる仮説を持つことが難しい」という前提があります。


どうなるか見通せないことばかりです。半年前にGPTがどう進化していくか見通せている人はほとんどいなかったし、向こう半年も予測できている人は少ないでしょう。


上記前提がありつつも、「だから仮説持つのが難しいよね」で立ち止まらず、「じゃあどうするの?」に対する思考を進めたいので、次のような問いを立てました。

「マイクロソフトのようなテックジャイアントが参入してスタートアップの事業を軒並み潰せるなら、BtoBソフトウェア領域のベンチャービジネスって成り立たないはずだけど、そうなっていないのってなんでだろう。」


こんな問を持って、事業開発で仮説検証したり、本を読み漁ったりしてました。

3. 戦略本「7POWERS」を読み、「Moatについての原さんnote」を思い出した


最近、ふと「7POWERS」という経営戦略に関する本を手に取る機会がありました。
そこで、次のようなフレームを学び、目からウロコな概念がありました!!!!
それは「カウンター・ポジショニング」です。

■本の要旨
POWERという概念は、「継続的に競合との差分を創出する条件の組み合わせ」

具体的には下記の7つ
・規模の経済:事業規模の拡大を活かす戦略
・ネットワーク経済:利用者増大による便益増大
・カウンター・ポジショニング:競合が模倣できないポジショニング
・乗換コスト:他社へ乗り換えられないための防御策
・ブランディング:長期にわたる顧客からの信頼
・競合なきリソース:特許や人材などの独自の試算
・プロセス・パワー:組織内で着実に構築されてきた見えないプロセス

POWERは2つの観点から捉えることができ、新規参入する挑戦者に対しては「バリア」となる。パワーを持つ既存企業に対しては「ベネフィット(利益)」となる。

例えば、POWERの一つであるブランドは、挑戦者に対して、「挑戦することができないバリア」となります。パワーを持つ既存企業に対しては、「価値を乗せ価格を上昇させられるというベネフィット」となります。ブランドのバッグは高くて、他企業が挑戦することができないという状態ですね。

縦軸の列がバリアについて、横軸の行がベネフィットについて



ここまで7POWERSを読んで、これ「あのnoteに似てるぞ?」と想起されたのが、原さんのnoteでした。

Moatは、「ユーザが選び続ける理由」「社会から強く求められ、取って代わるものがなく、規制がない製品やサービスを提供する企業」

原さんのnoteを再度読んでみて、POWERSとはMoatと同じような概念で、企業が競争優位性を構築するためのフレームワークなんだなと理解しました。

対応関係としては、次の表のように理解しました。(厳密には違うかも)


4. スタートアップにとって重要な戦略は?

「7POWERS」によると、初期フェーズは、「競合なきリソース」と「カウンター・ポジショニング」こそが重要なようです。

それぞれ、こんな概念です。

「競合なきリソース」とは

・特許や人脈などの独自の資産
・例えば、ピクサーが成功した一因は、独自の資産である人材

「カウンター・ポジショニング」とは

・既存企業が模倣できないポジショニングのこと
・既存企業は、①そもそも既存事業のNPV(正味現在価値)が高く新規投資できない、②新規投資が正しくても過去成功した方法より不透明な新規投資に臆する、③新規投資が正しくても経営層の報酬制度が短期スパン故リスクテイクできない、といった状態になる

つまり、「なんでBtoBソフトウェアのベンチャービジネスって成り立つの」の問いに対する解は、ベンチャービジネスが「カウンター・ポジショニング」をとって、「競合なきリソースを投下」をするからです。

要は、「改善を重ねる優良企業であっても、新しい革新的な技術を軽視してしまい、その地位を失う危険がある」というイノベーションのジレンマを別角度から捉えたものですね。


5. 生成AIスタートアップAlgoamticが考える戦略

Algomaticの代表の大野が、イベントに登壇したときに詳しく話をしています。また、そのメモはnoteに公開されています。

サマリ部分のみ転載

A) テックジャイアント(グローバル)の戦略
■ サマリ
・グローバルジャイアントは、どでかい資本・アセットがないと挑戦権がない、汎用&winner takes allなところを取りに行く
・具体的には、ファンデーションモデル、グローバル向け汎用系アプリケーション系(+番外編:超夢見る系アプリケーション)
・OpenAI, ANTHROPIC(クロード), Meta, Nvidia, stability.ai
ChatGPT, MS Chat, Jasper, copy.ai, glean

B) テックジャイアント(日本)の戦略
■ サマリ
・既存ビジネスを更に生成AIでブーストする系が最優先
・新規系だと、グローバルで市場が見えているサービスの、日本ローカライズ版(かつ国の違いで障壁が築けるところ)あたりに、硬く資金・アセット突っ込む動きになりそう
 ・vs グローバルジャイアントとの比較:資金やアセットのレベルはだいぶ下がる。ので、その分セグメントなり、市場なりを限定して戦っていくはず
 ・vs 日本スタートアップとの比較:とはいえ、日本のジャイアントは、資金やアセットで、レバレッジが効く領域を固く取りに行くべき。
・市場が存在するか不確実性高い領域は、スタートアップの動きみて、M&Aなり後追いで参入しそう

C) スタートアップ(日本)の戦略
■ サマリ
・イノベーションのジレンマや、資金・アセットでブーストがかけづらかったり、市場の不確実性が高く小回りが必要なところを攻めるべきか
・大企業と連携していくのも硬め路線としてはあるが、成長速度に課題ありそう

ただ、上記のnoteの最後にあるように、Algomaticは通常のスタートアップとは別の戦略を取ろうとしています。

Algomaticは、上記のいわゆるスタートアップ的な戦略は取りません。では、Algomaticはどうしていくか?に興味がある方は、ぜひ下記カジュアル面談から、お話しましょう。


組織体としても、スタートアップでは珍しい(ほとんど聞いたことがない)カンパニー制で、複数事業作っています。

これまで、あれこれ優位性とかMoatとかPOWERとか書いてきましたが、「実際に顧客にサービス提供して得られる一次情報」こそが事業価値の源泉です。

頭で考えすぎず、まず顧客と会うこと。これが大事です。

PMFすなわち「強力な価値仮説」を構築するまでは、技術のアップデートというHowや競争に囚われず、WhyやWhatの価値仮説の検証をし続けることが大事なんじゃないかな~と考えています。


冒頭の問いに戻ると、「マイクロソフトきたらどうする問題」については、

①そもそも、大手は簡単に同じ事業に参入はできない

②参入したとしても既存の大きな収益の柱(クラウドやMicrosoft365等)に繋げる製品となりど真ん中の事業として価値を作っていく可能性が高くない

③参入したとしても日本市場の全顧客セグメントを取ることは無い(どのソフトウェアでも必ずそう。競争になって美味しくないから)

④なんなら参入してもらって、一緒に顧客課題に向き合って、この市場を想像して価値を創って行きましょう。


って感じですかね。笑

以上、スタートアップが勝つためのMoatや優位性についてでした。


ゼロから一緒に事業作る仲間探してます!


この生成AI領域、めちゃくちゃ面白いです。シーズが爆誕し、ニーズが発火し、予算が取られているけれど、それを繋ぐ事業やサービスがまだないです。


AlgomaticとシゴラクAI事業は、そこに挑戦しています。そして仲間を探しています。

スタートアップの事業開発、生成AI領域での事業開発、興味ある方ぜひお話ししましょ~!


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https://twitter.com/ikeda_haruki_

@ikeda_haruki_



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