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吹奏楽にとって行進曲とは      ~2024年吹奏楽コンクールのために~

 新年度も始まり、入学、進級があり、新しい生活も始まった人も多いだろう。

 吹奏楽部の学生にとっても、新入部員の呼び込みなどと忙しい時期になっていくだろう。
 しかし、夏には吹奏楽コンクールが迫っている。
 特に、三年生にとっては、最後のコンクールであり、集大成である。
 そんなコンクールに向けて、少し記事を書くことにした。
 浪人音大志望の人間の話すことであるため、根拠に欠ける点も多いだろうが、参考になるならば、今後も不定期ながら書いていこうと思っている。


1.課題曲の選択

 2024年度の課題曲は次のとおりである。

 Ⅰ 行進曲「勇気の旗を掲げて」 渡口 公康
 Ⅱ 風がきらめくとき      近藤 礼隆
 Ⅲ メルヘン (2024年度全日本吹奏楽連盟委嘱作品)  酒井  格
 Ⅳ フロンティア・スピリット  伊藤 宏武

 行進曲2曲、行進曲以外2曲である。
 すべての曲はB編成という、オーボエ、コントラバスなど一部楽器がなくても、演奏に支障のない曲である。
 これは、少子化の流れの中で今後も増えていくであろう。
 ましてや、来年度の課題曲はさらに小編成でも演奏が可能になる作品が生まれる可能性がある。
 2025年度の課題曲募集条件のなかに、各パート一人でも成立する曲が求められている。

全日本吹奏楽コンクール課題曲募集要項(第34回朝日作曲賞)
https://www.ajba.or.jp/00ajba/01_coucours/kadaikyoku/34_asahi.pdf

 そんな小編成のために作曲された作品を、うまく大編成で演奏しなければならない。
 これは、非常に気を付けなければならない。

 特に、顕著なのは1番であろう。
 スーザマーチに近い形式、音数も少なく、和声もシンプルな箇所が多い。
 中学生にとっては、ちょうどいい難易度かもしれない。
 しかし、高校生以上、ましてや大編成となると、それなりの完成度では評価されない可能性が高い。
 そのため、マーチを簡単だ、と安直に選択しないほうが良いだろう。

 2,3,4番はさらに別の点で気を付けなければならない。
 和声の複雑さだ。
 特に転調、和声の移り変わりに注意を払わなければならず、容易に演奏できる曲ではない。
 プレイヤー全体で、曲の展開や和声の展開を共有し、演奏しなければ、これも評価されにくいだろう。

 ここまで、課題曲の懸念点ばかり話してきたが、そこはあまり重要ではない。
 各楽団にあった、曲選択が不可欠である。
 先ほども述べたが、難易度やマーチだからなどと、安直に選択するのは危険である。
 ここ数年の課題曲は、ひとつひとつ特徴が異なるので、よく話し合って決めるべきである。


2.行進曲について

1.課題曲Ⅰ E (Trio)

 さて、ここからは主に行進曲である、1番、4番について少し話そうと思う。
 こんなに語っておきながら、いまだ課題曲のスコアも持っていないため、一丁前な解答ができないが、ここでは行進曲の本質(あくまでも持論)を述べる。

 せっかくなので、1番のトリオを参考にしよう。

 【WISH課題曲】指揮者と打楽器カメラ:全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ 行進曲「勇気の旗を掲げて」
 https://www.youtube.com/watch?v=JT_eZAP-NHI1:26

 上記の動画の1:26からが、トリオである。
 ここで、私は参考動画として打楽器視点の動画のURLを貼った。
 その理由は、行進曲の主役は打楽器であるからだ。
 その他管楽器、コントラバスは飾りに過ぎない。
 そもそも、行進曲はトルコの軍楽隊が発祥である。
 参考に下記のURLから動画を視聴してほしい。

Ceddin Deden - Topkapı Sarayı Mehteran Geliyor - Mehter in Topkapi Palace
https://www.youtube.com/watch?v=2eaxzv6obf8&t=38s

 もちろん管楽器はあったが、軍楽隊のほとんどは打楽器奏者だ。
 シンバルも太鼓も、何台も用いて演奏される。
 こういった、行進には、全体へ共通のビートを届けなければならない。
 その点、打楽器は行進曲に必要不可欠の存在である。
 それならば、行進曲の展開やリズムは間違いなく、打楽器が握っているといえるだろう。
 
 では、話を課題曲に戻す。
 トリオの前半(E)では、スネアドラムはトロンボーンと同じリズムを刻んでいる。
 さらに、バスドラムも含め、表打ち、裏打ちとは違うビートであると理解できる。
 そうなれば、この場面全体どちらかというとのっぺりとした、緩やかさの感じれる場面ではなかろうか。
 トリオ以前のような、正確なビート感とは大いに異なる。

 では、この場面をどう演奏すべきだろう。
 私は、メロディーがその主導権を握っていると考える。
 実際、この場面は非常に人数も少なく、また、弱音部であるため、気を付けなければ音が抜けたり、消えたりしかねない。
 そこで、メロディーがどう歌うか、が大切である。
 前半と違い、テンポに少しゆとりが生まれている。
 それは、先ほどの打楽器の話からお分かりいただけるだろう。

 そのため、自由に歌える場面でもある。
 しかし、ここでの自由は、バンドごとの解釈の自由である。
 どうメロディーの頂点、山をもってくるかは、各バンドごとで統一させなければ意味をなさない。

2.課題曲Ⅰ H

 ここからは、トリオの後半だ。
 先程同様、打楽器に注目してみよう。
 すれば、今度はスネアが裏打ち、バスドラムが表打ちである。
 これは大きな変化だ。
 そうなれば、この場面はEとは異なり、テンポがタイトになり、より正確なビート感が求められる。
 メロディーが自由に歌うのは控えるのが良いだろう。
 さらに、ここではピッコロソロも存在する。
 ピッコロの存在を出すためにも、しっかりその他のパートは一歩引いた演奏が求められるだろう。
 

3.まとめ

 ここまで、打楽器からメロディーの歌い方、引き出し方を考えてみた。
 他にもこの曲には、打楽器から推測できる演奏の仕方が多く存在する。
 どうしても、管楽器ばかり目に行きがちだが、打楽器の存在こそ行進曲の核心である。
 4番も同様に言えるので、参考にしていただきたい。
 もし、今後気が向けば詳細に打楽器と行進曲の絡みを書いていこうと思っている。

 それではまた、気が向いたときに。


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