松坂世代の無名の捕手が、なぜ巨人軍で18年間も生き残れたのか/加藤健(元読売ジャイアンツ捕手)
毎年、毎年が戦力外を噂される「崖っぷち」の戦いを繰り返し、2016年オフに退団するまで何とかチームの一員でいることができた。それはこの世界で生きていくために、考え方の変化があったからだ。「使いやすい商品になろう」と決めた日が転機だった。自分が経営者で人を使う立場にいたら、新しく入ってきた人材をまずは使ってみようと思うだろう。でも、その新しい人が使えない商品だったとしたら、少し古くても使える商品に戻すはずだ。阿部さんだけではなく、巨人に新しい捕手がドラフトやFA、トレードで何人も入ってくるたびに、自分の地位が揺らいだ。腐りそうになった時期もあったが、ある一定の時期を過ぎると、それもなくなった。レギュラー捕手だけに固執する事もなくなった。それよりもチームの勝利に貢献できることは何か、他の捕手よりも、自分が秀でているのは何かを考えるようになった。そして出た答えが、技術的な事はもちろん向上させつつ、コミュニケーションスキルも上げていけば、チームから必要とされる商品になれるというものだ。僕は、誰よりも人の気持ちがわかる捕手になろうと思った。「心」の成長に限界はないからだ。
使いやすい商品になる
第三者から見て使いやすい商品になることがとにかく大事。阿部さんが怪我をしたらどんな選手が必要になるのか。商品に徹する以上、新商品の存在には敏感になる。新商品が使われ、既存の商品はなかなか使われないのは何故か。もしも自分が企業やメーカーの社長だったらどうするか。発売されたばかりの新商品が入荷したら見てみたい、使ってみたい、食べてみたい。それは消費者も同じ。世に出て随分経った商品は、形も機能性も味も知っているし、すぐに大きく化ける事は可能性として低い。新商品が駄目だった時や、使い物にならなかったときに、元々あった商品である僕のような選手の出番があるのだ。その一瞬のチャンスで結果を残せば、加藤健という今までの商品の価値が上がる
グラウンドにはお金が落ちているではなく、グラウンド内にもグラウンド外にも自分を成長させるきっかけが沢山落ちていると思っていた、阿部さんを抜いてレギュラーになろうという考えは頭の隅に置いて、求められたときに力を発揮できる選手になれば、一軍のチャンスが広がる
鶴岡さんはレギュラーの相川さんとは違うリードをしていた。その事を伝えると「だって、同じリードしていてもだめじゃね?」人間は一人ひとり考え方が違うし、すべて同じタイプの捕手だったら、使う側だって困るだろう。個性はあったほうがいい。
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