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無意識に抗体を宿す僕ら

はじめましての方もこんにちは。
池村といいます。
田中みな実さんと結婚したいと思っています。

世間が大きく動く中、まるで自分がその影響を全く受けていないような、静かな1日もありますが、よろしくお願いします。
それでは始めます。

よろしくお願いします。

ある小春日和、花粉症と腰痛を解決する医療ができるのを祈りながら、『医学全史』という本を読みました。

さまざまな分野の成り立ちを追いながら、医学の歴史を俯瞰する本でした。

せっかくなので、この俯瞰的気分のうちに、この本や、僕の本棚にある本と記憶を手がかりとして、感染症分野に関する印象に残った情報をまとめてみようと思います。

天然痘(感染症の例)

天然痘は、天然痘ウイルスによる感染症で、詳細については専門家に委ねますが、世界中で何度も流行を繰り返したそうです。
11世紀から13世紀にかけて、十字軍遠征やアンダルシア侵攻などにより、ヨーロッパ全土に広がったものと言われていることからも、人の移動と感染症は関係が深いのは昔からということがよくわかります。

というよりもむしろ、『銃・病原菌・鉄』にもあるように、感染症は人類の歴史の重要な構成要素なのでしょう。

天然痘ではありませんが、小説『ペスト』でも、人の移動を制限することが有効だとされており、そこに描かれたロックダウンの様子はあまりにも僕らの今に重なり印象的です。

《わが市民たちがこの突然の流刑になんとか対処しようと試みている間に、ペストのほうは市の出入口に衛兵を配置し、オランに向かって航行していた船舶に航路を停止させていた。(中略)しかし埠頭には、装置をはずされた大きな起重機、横っ倒しになったトロッコ、樽や袋のひっそりとした山などが、商業もまたペストで死んだことを表明していた。》

 カミュ『ペスト』宮崎嶺雄訳
 新潮文庫, 昭和44年(昭和56年22刷), 90頁

また別の感染症、いわゆる「スペイン風邪」に関する記録としては『史上最悪のインフルエンザ』もリアリティがありましたので、みなさんも今こそ読んでみるといいかもしれません。

流行病の原因に対する古代の考え

この世に、流行する病気があることは、古代から知られていたそうです。

古代ギリシャにおける当代最高の医師といえばヒポクラテスと、その有名な「四体液の理論」を後世に取り上げたガレノス

彼らは、その著作『ヒポクラテス集典』や『病気の原因について』で、流行病を体液の不均衡によるものとし、病気が伝染すること(つまり外来の病原の存在)は考えていなかったらしい。

✔︎ 特定の原因があること
✔︎ 伝染すること

このふたつは、それぞれ発見されなければわからなかった、新しい概念なんだなと驚きます。

流行する病気に特定の原因があり、その原因が伝染することを初めて想定したのは、イタリアのフラカストロという医師。

彼は、羊飼いのSyphilisという英雄を主人公とした『シフィリスあるいはフランス病』(1530)という詩を残したそう。

この「シフィリス」が、感染症の一種である「梅毒(Syphilis)」の呼び名の起源らしいです。

ウイルスと細菌

天然痘やインフルエンザはウイルスによって、梅毒やペストは細菌によって伝染します。

普段の生活において僕らは、病気のもとになりそうなものを、なんとなく「ばい菌」などと総称していますが、厳密には、感染症の原因となる病原体にはいろんなタイプがあるので気をつけないといけません。

例えば、抗生物質は細菌に効果がありますが、ウイルスには効きません。

・感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する。
抗微生物薬適正使用の手引き』より

風邪はウイルス性のものも多いので、風邪ひいたとき、なんでもかんでも抗生剤を飲めばいいというものではないというのは、ひとつの事実なのですね。

感染症分野と日本人

それにしても本を読むと、この分野では、日本人の活躍が目立ちます。

1894 病原菌の分野では、炭疽菌や結核菌、コレラ菌を発見したコッホの弟子であり、ベーリングとともにジフテリア菌(1883)や破傷風菌(1889)を発見した北里柴三郎がペスト菌を発見

1910 抗生剤の分野では、秦佐八郎がエールリヒとともに、最初に実用化された抗菌剤サルヴァルサンを開発

1976 免疫の分野では、利根川進が、多様な抗体を作るリンパ球のクローンが用意される仕組みとして、免疫グロブリンの遺伝子再構築のメカニズムを発見

・・・もしかして日本人の得意分野?

ジェンナーの種痘

天然痘は現在では世界から根絶されました。
これはすごいことですね。

その勝利の歴史の始まりは、菌やウイルスが発見されるよりも前、1796年にジェンナーが始めた「種痘」です。

牛痘というウシの流行病に感染した人は天然痘にかからない!

という、牧場で働く人たちの間で知られていた話を、ある搾乳婦から聞いたジェンナーは、牛痘を人体に接種する試験を行いました。
その内容を『牛痘の原因および作用に関する研究』(1798)として発表。

すると、すぐに反響を呼び、イギリスにジェンナー協会が設立され、各国に広まり、日本でも幕末(1849)に緒方洪庵が大阪に種痘館を設立しました。
なお、その後に他の医師らにより設立されたお玉ヶ池の種痘所は、今の東京大学医学部の由来だそうです。

ジェンナーの発想を応用して、病原体を弱毒化して接種する方法を開発したのがパストゥール
だから彼の命名した「ワクチン」(Vaccine)の意味は「雌牛」(ラテン語でVacca)なんですね。

ジェンナーの仕事への敬意を表して。

日本における天然痘

種痘館ができたという話からもわかるように、日本でも天然痘は流行しています。

実は、確実に天然痘と考えられる最古の記録は『続日本紀』の中に残されており、735年に流行したとされているらしいです。

現代医学のターゲットは感染症から生活習慣病へ移り変わったというのが通説でした。
なので僕は、感染症というものは既に人類が克服しつつある古い脅威だと誤解していたし、ふだんの生活の中で感染症のことを意識することは少なかった気がします。
わりと身近なインフルエンザも、なんとなく季節のものをいう感覚しか持っていませんでした。

そんな中、今思えば大事だったと思う、まだコロナ禍なんて想像もしてなかった頃の記憶を掘り起こしてみます。

民俗学の本で
山道を歩いていたら老人とすれ違って、それが天然痘の患者さんだったといった描写があったのを読んで、日本でも流行ってた病気なんだなと意外に思った記憶があります。
宮本常一さんの『忘れられた日本人』だったような気はするのですが、どの本だったか思い出せず、間違っていたらごめんなさい。

沖縄旅行で
たまたま屋我地島を車で通過したときに、その島の雰囲気と、そこにあった国立療養所が気になってあとで調べてみると、かつて国策による感染症患者の隔離政策があったことを知りました。
感染症への対応は、医学的な見地からだけではなく、もっと広い視野で、さまざまな観点から考えなければいけないものなんだなと感じました。

手塚治虫の漫画で
漢方医と蘭方医の対立が幕末の動乱に重ねて描かれていました。
緒方洪庵が「適塾」の裏の「除痘館」で子供たちに種痘をしている光景もあります。天然痘の患者が出るのですが、その患者からの感染が疑われる男を追いかけてみると、彼は過去に感染していたから免疫があったので大丈夫でした、という渋いオチのエピソード。
政治にせよ医療にせよ、まるで『陽だまりの樹』のような、中は空洞の古い権威に、新しい考え方が立ち向かうことで歴史が築かれてきたことがよくわかります。

19世紀はじめに西洋医学や種痘を日本にもたらしたのはシーボルト
シーボルト事件と呼ばれる一悶着起こして帰国後、ヨーロッパに日本を紹介し、日本に対する世界の注目を集めたそうです。

シーボルト・・・歴史の授業で習ったような気がしますね。
もっと興味を持って歴史の勉強をしてればよかったなと思います。

医学から医療へ

日本は、公による社会保障と、民中心の医療提供が両立している、世界でも変わった医療体系を持ちます。
なので、民での医療の成り立ちを追うことで、なぜ今このように医療が提供されているのかを紐解くヒントになるような気がします。
民での医療の成り立ちを辿っていくと、医学の発展の歴史と必ず交わる・・・だから医学の歴史を知ることもまた、今の医療のあり方を考えるきっかけになりそうな気がします。

これから超高齢化社会社会保障のあり方は深刻な課題を抱えているかもしれません。
だから医療政策の議論も他人事ではなく、もっと身近に捉えた方がよさそう。

当たり前のように集団予防接種を受けて
無意識のうちに体内に抗体を宿す僕ら

明治期の医療では伝染病の流行を抑えることが重要な課題で、コレラの大流行を契機に伝染病予防規則(1880)が布告され、コレラ、腸チフス、赤痢、ジフテリア、発疹チフス、天然痘が法定伝染病と定められたそう。
その後、法定伝染病は増えて伝染病予防法(1897)となり、これが性病予防法(1948)、エイズ予防法(後天性免疫不全症候群の予防に関する法律)(1989)と合体して、現在は感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)(1998)になっているようです。
一方、種痘法(1909)を前身とする予防接種法(1948)もあります。具体的な予防策として予防接種のあり方を定める法律と理解しています。

このように医学と医療をブリッジングする一端を担うのは行政でもあります。

ワクチンの種類や開発史から、日本の感染症対策行政の歴史、そして今の感染症対策の基本的考え方など、知りたいことはとめどなくありますが、ひとまずここまでとします。

つい長くなりました。

今日も田中みな実さんと結婚できませんでした。

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