【企画】私を作り上げた本を読んでください/私を壊してくれた本

初めまして、あいかわらずと申します。
素敵なお誘いに思わずnoteデビュー、企画参加してしまいました。日本語業界の町だなんて恐れ多いほど、まだまだ駆け出し(てもいないレベルの)私ですが、ありがたいお誘いのおかげでお邪魔しております。
チェーンナー先生ありがとうございます!



私を作り上げた本。
「自閉症の僕が跳びはねる理由」/東田 直樹
この本は、自閉症である東田さんに寄せられた質問とそれに対する答えや自作の短編小説や詩をまとめたものです。

自閉症と聞くと、どんな人を想像するでしょうか。

今までの生活の中で、自閉症の児童と接する機会がありました。私の思うような意思疎通は難しく、笑っていれば今嬉しいのだ、泣いていれば今していることは不快なのだと、その程度の認識しかできず、どこまで彼と関われているのかも分からぬままでした。今でも彼の瞳を思い出します。透き通っていて、話しかけながらも私のことは写ってはいないんだろうなとどこかで思っていました。

本書の中でたくさんの質問が投げかけられます。

長い文章を読んだり勉強したりするのは嫌いですか?
何が一番辛いですか?
合図がないと動かないのはなぜですか?
表情が乏しいのはどうしてですか?…
東田さんは一つ一つ丁寧に言葉を紡いでいきます。
若干13歳の少年とは思えないほどに理性的で整然とした言葉たち。

「僕たちだって成長したいのです。」
「みんなは気付いていません。
   僕たちが、どんなに辛い気持ちでいるのか。」
「何かしでかすたびに謝ることもできず、怒られたり笑われたりして、自分  がいやになって絶望することも何度もあります。」
「けれども、あきらめないで欲しいのです。僕たちと一緒に戦ってくださ
 い。一番困っているのは僕たち自身で、僕たちこそ、この鎖から解放され  たいと思っているのですから。」
「僕たちは、美しい物を見たり、楽しかったことを思い出したりした時、心  からの笑顔が出ます。それは、みんなの見ていない時です。」…

この本を読んだときの衝撃は今でも忘れられません。思い上がりや思い込み、決めつけがどれほど自分の視野を狭め、相手を軽んじ蔑ろにしているか。会話というツールに頼り、そうできないからとその人とのコミュニケーション、その人との関わりを諦め、絶とうとすることの弱さ、尊大さを感じました。そして、今までの私は、そうではなかったか。
この本は、自分の尺度でしか物事を捉えられなかった私の、これまでの凝り固まった意識を壊してくれた本です。

私は自閉症の人と多くの時間を過ごしてきたわけではありません。東田さんがこんな風に考えをまとめるに至った経緯やご家族の方の支援など想像も及ばないことばかりです。まだまだ理解不足のまま口先だけで語っているだけに違いありません。ただ、こんなにも自分に影響を与えてくれた本は、他にありません。この本から学んだことが、今の自分の一部となっていることを願ってやみません。しかし、それはどんなに私が望もうと、私と関わった人のみが知ることなのだろうと思います。

今私は、日本語を介して人と関わりたいと思っています。
しかし、会話だけではない関わりを。
見えることだけで判断しない思慮を。
人と人のもつあたたかい関わりを目指して。



企画参加させて頂きありがとうございました!
拙い文章ですが、もしこの文章が誰かとこの本を繋ぐことに貢献できれば、それ以上嬉しいことはありません。

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