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電子書籍化までの道のり 4原稿を書く!

小説投稿サイトは、書くのも読むのもただですから、私の小説がどんなにつまらなくてもあまり問題はなかったのです。とても気楽でした。書きたいものを書きたいだけ書いて、アップロードするだけ。読んでもらえたら嬉しいし、面白いと思ってもらったり感想をもらったりしたら嬉しいですけど、それだけです。
面白くする責任はありませんし、書きたいように書くだけでよかったのです。
私はとても自由に書いていました。
つまり書きたいシーンは細かく詳しく好きなだけ書き、書きにくいシーンは説明だけでさっと終わらせたり、心理描写だけしてエピソードを入れなかったりしていたのです。

そもそも自分で考えた話なのに、書きやすい物語と書きにくい物語があります。
例えば『恋人を造る魔法使い』(BL)や『浮気者の恋人と別れてやろうと思ったけどちょっと記憶喪失になったから別れる前に仕返ししてやる』(BL)、『美貌の宰相様が全く乗り気でなかったので、好き勝手したら、何故か求婚されてしまった』(TL)は書きやすい物語です。
主人公たちがわかりやすい単純な性格をしていることと、ストーリーがややこしくないからだと思います。
単純で主張の激しい主人公たちは、勝手に動き回って、勝手にしゃべりまくって、勝手にいろいろなことを考えてくれるので、私はそれを書くだけです。

ですが、『貴方を愛することはない。と言われた妻の物語』は主人公も相手役の男性も二人とも複雑な性格をしています。二人ともややこしいことばかり考えているし、私の書く物語にしてはストーリーも込み入っています。

その辺をいかに伝わるように描写するのか、描写が少なすぎて登場人物の気持ちがわからなかったり、逆に説明しすぎてしつこくなりすぎたり。そのあたりがとても難しかったです。

それでもようやく書き上げて、投稿サイトに投稿したのですが、後半の一番ややこしいところは表現しきれる自信がなくて、説明文と心理描写だけでさっと飛んでしまったのです。そしてラストシーンを書いて終わりにしました。

読んでいただくとわかりますが、主人公のフランカは、自分を陥れて不幸な結婚をさせた原因であるロバートと結婚します。
そこから二人がハッピーエンドに向かうのですが、フランカの、自分の敵であるはずのロバートへの気持ちはどうやって変化していくのか、ロバートはフランカに対する贖罪の気持ちと、フランカに幸せになってほしいという気持ちを抱えながらも、それは愛と呼ぶような感情ではないと思っている、その状態からどうやってハッピーエンドを迎えるのか。

そんなややこしい二人の物語を、エピソートを入れながら詳しく描写していく文章力などない!

ということで、そこはさらっと流したのでした。

が、今回の加筆で、まさにそこを掘り下げて、エピソードを入れて、どんなことが起こり、どんな時にどんなことを考え、どう気持ちが変わっていったのかを、すべて表現することになったのです。

書くのが難しいだけで、つらいわけでもつまらないわけでもないのです。楽しいです。楽しいんですが、全神経を集中させて、頭のすべてをフル稼働させて書かなくてはいけないので、すごく疲れます。
仕事で疲れている時には書けないし、睡眠が不足していると何も思いつきません。
私はため込んでいた有給休暇を使い、時間を確保して、睡眠をとってから原稿を書き、疲れたら休憩して、頭がすっきりしたらまた続きを書きました。
とにかく頭のコンデションが最高潮でないと全く書き進められなかったです。

今まで小説を書いて投稿するときも、眠い中で書いた文章が、激つまらなくて、あとで丸ごと書き直したり、書きかけの小説の展開が難しくなりすぎて、下書きで放置したりしていることがよくありました。

が、なにせ700円の価値がある20000字を書かなくてはならないわけですから、面白くないといけないし、難しいからと言ってやめるわけにもいかないのです。

私は必死に20000字を書ききりました。

書ききって思ったのですが、自由に好きな物語の好きなところだけを書いているのはとても楽しかったのですが、こうやって苦労して、難しいからと言ってさらっと逃げいていた部分を書き直してみると、自分の文章力がすごく向上していくのを実感しました。
体調を整えて、文章を書く環境を整えて、真正面から難題に向き合うと、今まで書けるはずがないと思っていたことが書けるようになったのです。

なんでしょう。いつでも休んでいいしサボってもいいし歩いてもいい気楽なジョギングをしていた人が、マラソン大会の出場とかそういった目的に向かって本気で練習を始めた時みたいな感じでしょうか。

気楽なジョギングなら、前日に少しくらい夜更かししていても問題ないし、足に合っていないスニーカーでも問題ないし、登り坂は避ければいいし疲れたらやめればいい。
でも本気でやるのなら、きちんとコンディションを整えて、自分にできる最高の能力を出さなくてはならない。


電子書籍化はそんなに儲かるようなものではないらしいです。検索したらそんな感じでした。私は定職についていて、仕事の隙間に小説を書いている、世界の端っこ物書きですから、あまり儲ける必要はありません。
貴重な珍しい経験ができるかもしれない。
そう思って受けたお話なのですが、自分の文章の書き方の癖がわかったり、文章力が向上したりして、想像していた以上にいいことが起こりました。

やっぱり趣味でも小説を書くからには、上手に書きたい。もっと面白く書きたい。難しい話を真正面から書ききって、自分で満足のいく作品に仕上げたい。
そういった望みに近づけたと思います。


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