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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#13 社会保険上の保険給付という構成ではございません

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金は保険料、と政府は説明する。
 では、保険料に対応する保険給付は何なのか。


日付:2024年4月12日
会議名:衆議院 厚生労働委員会
発言者:日本維新の会 足立康史
こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室長 熊木正人
厚生労働省保険局長 伊原和人
厚生労働大臣 武見敬三

足立 要は、熊木さん、簡単な話で、今回、支援金を使って取り組む少子化対策は支出がありますね、給付等をするわけです。それはいわゆる社会保険給付ではない、社会保険給付としてではない。もちろん、受益だということを総理はおっしゃっているわけですけれども、国民の受益、関係者の受益なんだけれども、それは社会保険給付ではない。いいですね。結論だけでいいですよ。
熊木 結論的に申し上げますと、社会保険上の保険給付という構成ではございません。

足立 こういう端的な御答弁がいいんですよね。やはり国民の皆様も、長い答弁を聞いていると、一体どこが答弁なのかよく分からなくなってきて煙に巻かれちゃいますから、熊木室長は極めて聡明で、かつダイレクトに仕事をしていただいていますので、今の御答弁、感謝を申し上げます。
 そこで、厚生労働省、これは事務方で結構です。細かいことですので、大臣は聞いておいていただいたらいいと思いますが、いわゆるこれまでの医療保険や介護保険において、集めた社会保険料のうち、社会保険給付ではないものに支出をしているケースは多少あると思います。どれぐらいの割合ですか。
伊原 お答えいたします。
 医療保険制度におけるものについては、収入と支出がございます。それで、今、御質問については支出についてということだと思いますが、これは保険制度ごとによって違いますので、ちょっと幾つか代表例を申し上げたいと思います。
 まず、協会けんぽ、これは中小企業のサラリーマンの方が入る代表的な保険ですけれども、収入が、保険料収入が約十・九兆円、それから公費収入が一・二兆円であるのに対して、保険給付費という支出は六・七兆、それから後期高齢者支援金が二・二兆、前期高齢者納付金が一・六兆、介護納付金が一・〇兆となってございます。
 それから、地域保険の代表としまして、市町村国保がございます。市町村国保の場合は、保険料収入が二・五兆円、公費収入が五・一兆円、それから、前期高齢者の交付金という形で、これはもらう金額ですけれども、収入ですけれども、三・八兆円であるのに対して、支出は、保険給付費が八・八兆円、後期高齢者支援金が一・六兆円、介護納付金が〇・六兆円となってございます。
 それから、介護保険制度についてちょっと御説明しますと、介護保険制度の場合は、まず収入が、一号保険料収入が二・四兆円、二号保険料収入相当分が二・九兆円、公費収入が六・二兆円であるのに対して、支出は、保険給付費が十・四兆円、それから、地域支援事業費という形で、保険給付ではございませんが、サービスの費用として〇・五兆円となってございます。

足立 今、伊原局長から御答弁いただいた内容、例えば、後期高齢者支援金、前期高齢者納付金とおっしゃいました。例えば後期高齢者支援金は、今おっしゃった保険給付費とは別建てになっていますが、この後期高齢者支援金は、後期高齢者医療制度に入った上で、またそれは後期高齢者向けの医療サービスに使われているわけですね。それは保険給付費とは言わない。言わないという、そういう表は私も持っていますから分かるんですが、でも、それは保険給付ですよね、国民的にいえば。
 そうした意味で、保険給付費に使われているものの割合をイメージしたいというのが私の今日の質問なんですけれども、質問の趣旨は分かりますか。それは数字として出ないですか。
伊原 お答えいたします。
 多分、先生の御質問の趣旨は、医療保険制度全体と見たときに、医療の給付として出たものは全部給付と見て、それ以外のものに使われているものはどのぐらいかということだと思います。
 ちょっと手元に具体的な数字はございませんけれども、医療保険の場合は、保険給付以外には保健事業という形で予防活動とかそうした事業がございまして、それはそれなりの規模でございますけれども、中心は医療サービスとしての保険給付だ、そういうふうに考えます。

足立 今、伊原局長から、中心はとおっしゃっていただいた。当たり前ですよね、保険なんだから。受益と負担、給付と負担、それが軸にあるわけですから、中心は保険給付費だと、これはもう当たり前です。昨日も鹿沼さんに、昨日お答えをいただいて、連合審査会で鹿沼統括官に、ほとんどはとおっしゃっていただいた。
 大臣、だから、これはもう当たり前なんですよ。こんなことをわざわざこうやって詰めなあかんところに、なかなか政治、行政の難しいところがあるわけでありますが、中心は、ほとんどは、保険料は保険給付に使う、当たり前なんですよね。
 だから、大臣、もう一回、昨日は御答弁いただけなかった。私が大臣から聞きたいのは、社会保険料は社会保険給付に使うのが原則ではないかと。原則だ、ゲンソクダ、五文字で結構です。お願いします。
武見 保険局長からも統括審議官からも、ほとんどはとか、それから中心はとか、こういう表現をさせていただいておりますので、まさにそういう表現の中で実際に給付として使われているというところがあって、それを私が昨日でしたか、お話し申し上げたのは、特に人口構造の変化の中で、高齢者を対象としたそうした保険給付というものに加えて、改めて今度は少子化対策という観点からの給付の在り方というものも考えなければならない時代背景に入ったので、そうした対応を今回はさせていただいているんだ、こう申しておるわけであります。

足立 大臣の御答弁を私も大変重要だと思っていて、まさに大きな社会経済状況の中で、端的に言うと少子高齢化が進展する中で、そういう御判断を自公政権としてされているということです。だから、これは私は、苦し紛れの足下の例外的な取組かなとずっと思っていたんですよ。岸田総理があほなこと言うから……(発言する者あり)いや、あほなことですよ。あ、ごめんなさい、委員長、大丈夫です。国民の皆様にあほかと言われるようなことを総理が言っているからだと思っていたんですよ。
 そうしたら、どうもこれは確信犯だなと。何か総理から言われているからやっているんじゃなくて、これは、これがやはり道なんだと。だから大臣も、もうこれでいこうと。だから、何か足下でどうじゃなくて、この流れ、すなわち社会保険料を少子化対策に使っていく流れは、消費税を使う流れは三党合意、それから八%に上げるときにできた、今回は保険料を少子化対策に使う流れをこの法律でつくる。これは何か苦し紛れではなくて、そういう時代に入ったんだと、もう胸を張ってやるんだということですね。
武見 先ほどから申し上げているとおり、高齢化対策というのも引き続き重要であることはもう明らかでありますから、それに加えて、こうした少子化対策という観点で、この社会保険の方式の枠組みの中で新たに対応するという考え方で整理されていると思います。

足立 立憲民主党の皆様も、頭はもう井坂さん以外はみんな紅こうじ一色ですから、この話はもうほぼ終戦です。だから、熊木さん、もう完敗ですよ、今回は。野党は完敗、だってもう決まっているんだから、日程は。そのときに、決まっていないかもしれないけれども、私の私見としては決まっていると思うわけですが、実は、昨年はもうちょっと空気が違ったんです。
 昨年の四月には、あ、五月、四月。昨年の四月には、柚木委員の質問に対して加藤厚労大臣がこうおっしゃっています。現在の社会保険制度は、年金、医療、介護、それぞれ制度が設立をされ、そして、そこに必要なサービスに均衡するように保険料の徴収をさせていただいているわけでありますから、そうした枠組みの中で、他に流用する余地はそもそもないということを私は言っているんだと。
 翌月、五月にも、大西健介委員の質問に対して、先日のテレビ番組で申し上げた趣旨は、テレビでもいろいろおっしゃっていて、今の社会保険制度、年金は年金、医療は医療、介護は介護といったそれぞれの制度の中で保険料を徴収し、そして必要なそれぞれのサービスを提供しているわけであります。その保険料の水準は、まさに給付と負担が均衡する形で決められているという中で、現行の保険料を他に流用する余地はないし、またそういうものでもない。
 はっきりとそこは抵抗をされていたわけでありますが、もう武見大臣は、これは内閣の方針ですから、もう答弁を求めませんが、私は、この質疑を通して国民の皆様にやはり伝えておく必要がある。今回の法案は大きな路線転換なんです。昨年、加藤大臣がおっしゃっていたことと、今、武見大臣がおっしゃっていることは明らかに路線転換であると私は思うので、これはやはり国民の皆様に、それぐらい大事な法案が通ろうとしているんだということは、是非これは国民が知っておくべきだと。別にいいですね、答弁は。答弁したい、いいですね。知っておいていただきたいと思います。
 ただ、なぜ、じゃ、我々が抵抗しているのか。これはやはり、本気で少子化対策をやろう、あるいは本気で日本の経済社会の在り方を議論すると、単に何に使うかという歳出面だけじゃなくて、歳入面、いわゆる税や保険料という歳入面での構造も、だって、負担構造だって経済社会に影響を与える、だから皆さんは消費税を入れたんでしょう。だから、負担構造というのはむちゃくちゃ大事なんですよ。だから、歳出構造だけじゃなくて、負担構造、歳入構造についても、少子高齢化時代にマッチした形に我々は大改革をしていく必要があるということで結党したわけです。そうした私たちの立場からいうと、今回の法案の取扱いは敗北であるということを認めざるを得ないわけであります。
 大臣に通告させていただいている、四、五という形で通告させていただいている、四に通告させていただいているのは、まさに今の転換だということをもうちょっとファクトベースで言うと、今までは、加藤前大臣がおっしゃっていたように、給付と負担、受益と負担を守るために、この保険の原理というものを守るために、医療なら医療、介護なら介護、医療の中に税金を入れてきたんですよ。税金を入れる形で、保険料の給付と負担を守ってきたわけです。
 でも、今回は逆でしょう。社会保険料を社会保険給付以外に使うんです。全く逆のベクトルを今回は日本というシステムの中に取り込もうとしているんですね。そこは、大臣、お認めになりますね。
武見 一つの大きな転換ということであれば、私は、負担の在り方について、かなり大胆に応能負担という考え方を今回組み込んできたことは極めて重要なポイントだと思います。この点、先ほどから、大きな転換期だ、こうおっしゃったけれども、その点、私は、この応能負担という負担の在り方をより大きく取り入れたことによって、議論はこれから更に広がってくることになるだろうと思っております。


参考資料等

こども未来戦略<加速化プラン>に基づく給付等の拡充

◎は支援納付金充当事業
・児童手当の抜本的拡充(◎)
・妊婦のための支援給付の創設(◎)
・乳児等のための支援給付(こども誰でも通園制度)の創設(◎)
・出生後休業支援給付(◎)
・育児時短就業給付(◎)
・育児期間中の国民年金保険料免除措置の創設(◎)

子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要 より

国民健康保険の給付のしくみ

国民健康保険では、被保険者の疾病、負傷等に際して、必要な保険給付を行っております。
国民健康保険の被保険者が受けられる給付の例は以下をご覧ください。

医療保険制度の財政状況(2020(令和2)年度決算)

令和5年版厚生労働白書 資料編 I 制度の概要及び基礎統計 2 保健医療 36頁より

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井川夕慈
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