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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#15 様々な給付や事業に充てられる国民健康保険料について憲法八十四条(租税法律主義)が直接適用されないと示しておりまして、支援金もそれと異なるところではない

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金は保険料、と政府は言う。
 ところが、保険料には「特別の給付に対する反対給付」の性質があるとする最高裁判例がある(その性質を欠くのが税)。
 支援金に「特別の給付に対する反対給付」の性質はあるのか。


日付:2024年3月26日
会議名:衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会
発言者:立憲民主党 藤岡隆雄
内閣府特命担当大臣 加藤鮎子
委員長 自由民主党 谷公一

藤岡 まず、この支援金制度、何度もこれまでも恐らく予算委員会等々議論をされてきたと思いますが、私も、九年ちょっとでございますが、金融行政で少し仕事をさせていただいたときに、保険という仕事にも、保険行政にも少し携わっておりましたが、どうしてもやはり、今回の支援金制度、保険料と位置づけているということ、もちろん、民間保険じゃなくて社会保険というところで、一部考え方の修正が入るというのも理解はするんですけれども、さすがにこれはちょっと、私は、この保険料と位置づけていることについて大きな違和感も感じております。
 日本経済新聞の、今日は資料を配付しておりませんけれども、二月十三日に、保険料は税の代役はできないとか、また、政府部内にも、実質的に税ではないかとの異論があったという声もあったというふうに報道されておりますが、私も、これは本当にもっともなことだと思っております。
 改めて、保険制度と位置づけているという、保険料として徴収するということでございますが、どう見ても、高齢者を含む全世代の被保険者から保険料を徴収する一方で、その受益というのは子育て世代にある意味偏る、もちろん子育て世代の対策はやっていただきたいんですよ、あくまで徴収の仕方の話なんですけれども、偏っているということで。
 要するに、全ての加入者が保険料を負担する一方で、保険事故と言っていいのかどうか分かりませんけれども、それもふさわしくないかもしれませんけれども、給付をされる、受ける方が限定的になるというふうな仕組みと言っても過言ではないということだと思うんですね。
 改めて、子ども・子育て支援金を保険料として位置づけているこの考え方の詳細につきまして、教えていただきたいと思います。
加藤 お答え申し上げます。
 社会保険制度は、社会連帯の理念を基盤として、共に支え合う仕組みでございます。支援金制度も、こうした連帯の理念を基盤に、子供や子育て世帯を少子化対策で受益、これは社会保険制度の持続可能性を高めていくということも含め、受益のある全世代、全経済主体で支える仕組みでございます。
 支援金を医療保険者に医療保険料と併せて徴収していただくこととしたのは、医療保険制度が他の社会保険制度に比べ賦課対象者が広いこと、それから、出産に関する給付など幅広い給付体系となっており、後期高齢者支援金など世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれていること、さらに、急速な少子化、人口減少に歯止めをかけることが、先ほども申し上げましたが、医療保険制度の持続可能性を高めること等の理由からでございます。

藤岡 なかなかすごくて、受益と負担の関係が極めて遠い関係のことを相当おっしゃっているとしか、私は今お聞きしていて言いようがないんですけれども、今日は資料をお配りしております。
 よく役所の方でも、恐らく質問主意書に対して、木鼻と、木で鼻をくくったような答弁ということで片づけるというようなことも、往々にそんな議論も行われているようにも私も聞こえてきますけれども、会派は違います先輩議員の緒方林太郎衆議院議員が、先日、この支援金制度について質問主意書を出されたわけですね。
 ここで、どういう質問主意書かといいますと、いわゆる国民健康保険料の賦課処分取消し請求事件において、平成十八年三月一日の最高裁の判決の判示を引き合いに出しまして、そこで示された一般的な考え方に照らして支援金制度が租税ではないのかというふうな質問をされている。
 ところが、この答弁、本当に申し訳ないんですが、ひど過ぎますね。何か、費用を徴収するために、いや、保険料を徴収するものですと。そして、その最後に、支援金のことじゃなくて、国民保険料については憲法八十四条の租税の規定が直接に適用されることはないというべきであると判示されていると。誰も国民健康保険料のことを聞いていないのに、支援金がどうだ、支援金制度がこの判例に従ってどうかということを聞いているのに、全く答えていないというのが、もう余りにもこの答弁はひど過ぎると思うんですね。
 大臣、これはどうしてこういう答弁になっちゃったんですか。
加藤 お答えを申し上げます。
 御指摘の質問主意書におきましては、平成十八年三月一日の最高裁判決を踏まえ支援金が租税ではないのかとのお尋ねに対し、法案における保険料としての支援金の位置づけについて説明をした上で、最高裁判決において、国民健康保険の保険料について憲法八十四条、租税法律主義の規定が直接適用されないとされたことを説明をしたものでございます。
 したがって、御指摘の最高裁判決の関係についてはお答えしているものと考えております。

藤岡 いや、これは答えていないですよね。だって、国民健康保険料のことを最後におっしゃっているわけですよね。
 支援金制度について、要は、緒方議員は、この主意書の中で大事な点を出しているわけですよね。「特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法八十四条に規定する租税に当たるというべきである。」というふうに判示がされていると。
 この特別の給付に対する反対給付というのは、非常に、確かにぱっと頭に入ってこないですね、私も頭が回らないものですから。特別の給付といえば、今回でいえば児童手当だとかなんとか、いわゆる給付ですよね。反対給付というのは、その給付に対するいわゆる負担のところですよね。これが、今回でいいますと必ずしも一致しないところがあるわけですよね。
 その中で、例えば、今回、この特別の給付に対する反対給付という関係の中で申し上げますと、支援金制度と国民健康保険料の中で考え方が違いますのは、全世代から徴収しますけれども、御高齢の方は直接の給付を受ける可能性が極めて低い、ここの中で特別の給付に対する反対給付としての基本的性質を有しているとはなかなか言い難いというところが大きなポイントだと思うんですね。
 この中で、特別の給付と反対給付の関係に照らして、今回の支援金制度がどのように保険料に当たるというふうになったのかをお答えいただきたいと思います。
加藤 反対給付か否かとのお尋ねでございますが、現行の公的医療保険制度におきましても、病気やけがの治療に限らず、出産や死亡に関する給付や予防事業など幅広い給付事業が設けられており、さらに、後期高齢者支援金など世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれているなど、給付と負担の関係や反対給付の関係は様々であると承知をしております。
 支援金制度は、連帯の理念を基盤に、子供や子育て世帯を少子化対策で受益がある全世代、全経済主体で支える仕組みであることから、社会保険制度として位置づけ、支援金を保険料として拠出することとしております。
 御指摘の最高裁判決は、様々な給付や事業に充てられる国民健康保険の保険料について憲法八十四条が直接適用されないと示しておりまして、支援金もそれと異なるところではないと考えております。

藤岡 今の御答弁の中で、やはり大事なことは、いろいろなほかの制度もあると。いや、その制度自体をもう一回検証しないといけないと思いますよ、はっきり言って、ちゃんと負担と給付の関係がきちんとしているのか。それで、この大事なところは、特別の給付に対する反対給付としての性質をきちんと有しているかどうかというところがあくまで基本ですよ。そのところがかけ離れているものでやるんだったら、それは税でやるべきだとか、そういうふうな判断を当然していくということが当然だと思うんですよね。
 その中で、最高裁の判決、資料二ページ目、配付をしておりますけれども、国民健康保険についての中で、「保険給付を受ける被保険者をなるべく保険事故を生ずべき者の全部とし、」と書いてあって、保険事故に生ずる個人の経済的損害を加入者相互において分担する社会保険としての性質に由来するものであるということを述べた上で、今回は国民健康保険料のことを述べているんですけれども、あくまで、できるだけ全部、ちゃんと反対給付、この対象になる、その受益があるということが当然これは基本になってくるわけですよね。
 それが、今回のこのお話ですと非常に、特別の給付に対する反対給付の関係が、照らして、今回の支援金制度は、私は、逸脱しているんじゃないかということをすごく思います。それが逸脱をしていないというところが、原理原則にのっとって、いや、今までこういう制度がありますとかは、その制度をちゃんと検証してください、むしろ。その制度が正しいかどうかという議論があります。これだけ広範に支援金というのを求めるわけですから、本当に、特別の給付に対する反対給付、このところをきちっと詰めていかないといけないと思います。
 明らかに今回のは、私は、逸脱していると言われてもしようがないと思いますよ。大臣、どうですか。
加藤 繰り返しになりますけれども、現行制度におきましても、医療保険や介護保険において、保健事業や福祉事業それから地域支援事業など、保険給付以外に保険料を充てている例や、また、医療保険者が徴収する介護保険料は医療保険法上の保険給付に充てるものではないといった例もございます。
 こうしたを踏まえますと、支援金を充てる事業が保険給付ではないということについて、特段問題があるとは考えておりません。(発言する者あり)

藤岡 まさに今声があったように、どんどん広がっていって、これはもう何でもありということになっちゃいますよ、これは本当に。保険料、何でもありだと。税じゃなくて保険料でもう何でもやっちゃえばいい、それこそ賃上げでも何でもそうですけれども、そういうことも全部そうだということになってしまいますよ。
 あくまで、国民健康保険だって、この最高裁の判示でもありますけれども、「保険事故を生ずべき者の全部とし、」と、被保険者はですね。できるだけそういうふうにしていかないといけないわけですよ、当たり前の話で。
 今回の話は、御高齢者の方にとってみれば非常に、自らが給付を受ける可能性というのは極めて低いという中にあって、その受益と負担の関係はすごく遠いわけなんですよ。だから、特別の給付に対する反対給付というのには、私は、すごい逸脱していると思います。この関係が遠いということを申し上げているんですが、それに対して直接お答えになられていないんです。お答えいただきたいと思います。
加藤 御質問も同じ質問を繰り返しいただいているものと承知しますが、答弁の方も繰り返しになってしまいますけれども、現行制度におきましても、医療保険制度や介護保険において、委員から見れば遠いと指摘をされる可能性のある、委員の視点から見れば遠いと御指摘のある可能性のある保健事業や福祉事業それから地域支援事業など、保険給付以外に保険料を充てているや、医療保険者が徴収する介護保険料は医療保険法上の保険給付に充てるものではないといったもございます。
 こうしたを踏まえますれば、支援金を充てる事業が保険給付ではないということについて、特段問題があるというふうには考えてございません。

藤岡 私がお聞きしたいのは、じゃ、どのような点で特別の給付に対する反対給付としての性質を持つというふうに御説明されるんですか。
 ちょっと止めてもらえませんか、これ。幾ら何でもこれは公平じゃないですよ。委員長、委員会運営、公平じゃないですよ、これ。
 じゃ、ちょっと時計を止めてください。
〔速記中止〕
 じゃ、時計を動かしてください。
 加藤国務大臣。
加藤 お答えを申し上げます。
 個々の事業、個々の給付に対して保険料が、済みません、ちょっと確認をさせてください。(藤岡委員「一回整理しても大丈夫ですよ。一回整理してください。ちょっと止めてください、それまで」と呼ぶ)
 じゃ、時計を止めてください。
〔速記中止〕
 時計を動かしてください。
 加藤国務大臣。
加藤 お答え申し上げます。
 個々の給付と保険料の関係は様々でありまして、支援金が児童手当に充てられましても、保険料全体の性格は変わらないと考えてございます。

藤岡 丁寧に申し上げますね。
 特別の給付に対する反対給付としての性質というところで、特別の給付は、当然、児童手当だとかいろいろなそういう給付ですよね。それの反対給付、これは保険の関係としての反対給付。何でもかんでも税で集めるとかじゃなくて、反対給付、当然、受益と負担の関係が一定程度なくちゃいけませんけれども、その反対給付として、集めるときの反対給付というのは今回でいえば支援金です。それが、特別の給付に対して、御高齢者の方は、当然、受益を受ける可能性は極めて低いわけですよ。だから、給付に対して反対給付というところの概念からすると逸脱しているんじゃないんですか、どういうふうに関係があるんですかと。その給付が受けられます、それに対して負担をします、でも、その関係性が遠いので、どういうふうに反対給付としての性質があるんですかということをさっきからお聞きしております。
 時計を止めてください。
〔速記中止〕
 はい、動かしてください。
 加藤国務大臣。
加藤 給付と負担の関係性ということでありますが、支援金制度のそもそもの趣旨になりますけれども、支援金制度は、児童手当の拡充等を始め、子育て世帯をしっかりと社会全体で支えていく制度でございます。
 子供、子育て世帯をしっかり支えて少子化の対策を図っていくことによって社会保険制度全体を持続可能なものにしていくということは、我が国の喫緊の大変重要な課題になってございます。
 これをしっかりと手当てをして子育て世帯を支えていくということが、ひいては高齢者の方々も含め社会全体の受益にかなう、このように関係性を整理してございます。

藤岡 支えるとか、それはもう、まず分かるんですよ。ただ、今回、この最高裁の判決に照らして逸脱しているんじゃないんですかということに対する回答としては、私は不十分だと思います。
 今の御答弁をある意味しんしゃくして読み取ると、いや、健康保険制度の持続可能性のためだとか、少子化対策が何とか解決されて人口減少が解決されてとかということをおっしゃっているんだと思いますけれども、余りに遠いですよ、その関係は。普通は直接の給付でしょう。直接の給付との関係ですよ。それが、今回の話ですと、すごくその関係性が遠いんですよ。
 そんなことを言ったら、じゃ、賃金を上げるために何かいろいろなことを出したら、全て回り回って全部これは何かプラスなんだと言って、それを受益なんだと言ったら、もう何でもありになっちゃいますよ。それは幾らでもありになっちゃうから、当然慎重に考えなくちゃいけませんし、この判例との関係を、大臣もこれ以上はあれでしょうから、一回整理してもらえませんか、これはきちんと。この特別の給付と反対給付の関係を、大臣、これは一回整理してください、法案審議の前にきちんと。お願いします。
加藤 御指摘の点につきまして、整理をしてまいります。
藤岡 では、整理をして、きちっとこの委員会に御報告をお願いしたいと思います。
 改めて今のお話を聞いていますと、やっぱり今回の支援金制度は、申し訳ないですが、保険料に偽装して国民負担を課すものだというふうに私は言わざるを得ないなということを感じます。きちっとした、これは本当に保険料なのか税なのか、改めてしっかりした整理を求めたいと思います。


参考資料等

子ども・子育て支援金と租税の関係に関する質問主意書(令和六年三月八日提出 質問第五八号 提出者:緒方林太郎)

 国民健康保険料賦課処分取消等請求事件における、平成十八年三月一日最高裁判決では、以下のとおり判示されている。
 「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法八十四条に規定する租税に当たるというべきである。」
 これを踏まえ、今国会に提出されている「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」において創設が検討されている「子ども・子育て支援金」は租税ではないのか。最高裁判決との関係を明確にした上で答弁ありたい。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a213058.htm

衆議院議員緒方林太郎君提出子ども・子育て支援金と租税の関係に関する質問に対する答弁書(令和六年三月十九日受領 答弁第五八号 内閣衆質二一三第五八号 令和六年三月十九日 内閣総理大臣 岸田文雄)

 お尋ねの「子ども・子育て支援金」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(第二百十三回国会閣法第二十二号)第一条の規定による改正後の子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第七十一条の三第一項に規定する子ども・子育て支援納付金は、同法第七十一条の二第五項に規定する健康保険者等から、同法第七十一条の三第一項各号に掲げる費用に充てるため徴収するものであり、当該健康保険者等は、同法案第二条の規定による改正後の健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百五十五条第一項等の規定により、当該子ども・子育て支援納付金の納付に要する費用を含む健康保険の事業に要する費用に充てるため、保険料を徴収するものである。平成十八年三月一日最高裁判所大法廷判決においては、国民健康保険の保険料について、「憲法八十四条の規定が直接に適用されることはないというべきである」と判示されている。

平成十八年三月一日最高裁判所大法廷判決

 国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たるというべきである。
 市町村が行う国民健康保険の保険料は、これと異なり、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものである。前記のとおり、被上告人市における国民健康保険事業に要する経費の約3分の2は公的資金によって賄われているが、これによって、保険料と保険給付を受け得る地位とのけん連性が断ち切られるものではない。また、国民健康保険が強制加入とされ、保険料が強制徴収されるのは、保険給付を受ける被保険者をなるべく保険事故を生ずべき者の全部とし、保険事故により生ずる個人の経済的損害を加入者相互において分担すべきであるとする社会保険としての国民健康保険の目的及び性質に由来するものというべきである。
 したがって、上記保険料に憲法84条の規定が直接に適用されることはないというべきである(…)。

日本国憲法

第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

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井川夕慈
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